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うわー、最近開いてないから気づかなかった😭ありがとうございます🙇♀️🙏 エアフラ何か思いついたら書きます!
これ、いちばん大好きです。
言いたいけど、めんどくさくて言ってなかった程度の、だけどずーっと心に溜めておいた想いが、ふと溢れた。
「ねぇ、心中しない?」
深夜12時。多分深夜テンション。
「唐突だね」
キッチンでスマホをいじっていたリノヒョンが言った。
違うよ、いやそうだけど、俺は今思いついたんじゃなくてずっと思ってたの。
ソファから飛び降りて、リノヒョンの大きな瞳と目が合う。それはキョロキョロと動いて、本当なのか冗談なのかを見極めたいようだった。「なんで?」リノヒョンは不思議そうな真顔で尋ねる。
「…..したいから」
言った瞬間に、リノヒョンは鼻で笑う。これらリノヒョンがよくする癖だから、馬鹿にされてはない。
でも、馬鹿にされてるのかも、なんて心が躍ることも無い。ここ最近、本当に何もない。絵を描くために入った美大は思ったよりも融通が効かないし、友達が少ないから面白い話も降ってこない。告白してOKを貰った時はあんなに嬉しかったのに、今俺は、恋人のリノヒョンにも冷めかけちゃってるんだと思う。散々俺の我儘を聞かせて、散々傷を舐めてくれたリノヒョンに。
でも俺は、リノヒョンを手放せない。それは冷めかけてない思いがあるからじゃなくて、リノヒョンを失ったら本当に何も無くなっちゃうから。
人生が暇どころか、苦しくて生きていけなくなる。だけど付き合い続ける未来も見たくないから、終わりにするだけ。したいからなんて嘘だよ。冷めかけたあなたに、もうこんなどうしようもないような話をする気力は無いけど。
「………….」
話題を振ってから、一分くらい。いつものように暖かい瞳で気まずそうにするリノヒョンを見る。わからないけど、多分リノヒョンの会話文ストックは0だと思ったから、俺は机にあった財布を引っ掴んで叫んだ。
「お、お腹すいたから、スーパー連れてって!」
然し、流石にこの時間にもなれば開店しているスーパーというのも限られていて、徒歩で行ける距離の店は全て閉まっていた。車を運転できるのはリノヒョンだから、俺は家から3番目に近いスーパーへと連れてきてもらうだけ。
駐車場も店内も人が少なくて、店員までもが昼夜逆転しているような見た目の人ばっかり。適当なジャージで来た俺が言えたことではないけど。
買い物カゴを持って、惣菜コーナーへと流れる。半額シールの貼られた寿司。油過多そうな中華料理。少ししぼんだけど大きいパイ。
明らかに美味しそうとは言えない料理を、手当たり次第にカゴへ放り込む。でも気にしない。食材を買うときに必ず混入物一覧を見る賢いリノヒョンと違って、俺は美味しくて体に良い料理が食べたいんじゃない。ある程度美味しくないものでも、食べて食べて食べる。そうやって、少し、大分苦しいくらいまで臓器に食べ物を詰め込んで、あー、安心するって思えればいいから。
でも料理をする身としてはわかっているはずなのに、離れたコーナーから戻ってきたリノヒョンは俺のカゴを見て言う。
「ここの惣菜って、うまいっけ…」「………..わすれた」
別に対して使いもしないのに家にあるテレビをつけて、リノヒョンが見たいと言ったアニメが流れる。
俺は机に広げた惣菜を食べるのに必死で、全然目もくれなかったけど。
リノヒョンが酒のつまみ程度にしか食べないから、お目の胃にはどんどん食べ物が溜まっていく。固形物だけで水分はいれないから膨張もせず結構入るけど、本来少食に分類される俺はすぐに限界が来る。でも、そこからが始まりみたいなところでもあった。これ以上食べられないを越えて不快感に苛まれている時、俺はなんだか無性に安心する。だからそれを作るために、手当たり次第にものを口に入れまくるのをやめない。
しかし今回は、本当にやり過ぎてしまったようだ。
俺はふとそこにあったスマホを取ろうと立ち上がった瞬間、物凄い眩暈に襲われて、床に座り込んだ後思い切り吐いた。びちゃびちゃと、水分を含んだ固形物が落下する音が響き渡る。リノヒョンはびっくりしたようにテレビ画面から目をそらして、俺へと駆け寄った。俺は嗚咽を漏らすでもなく、ただまた胃が、腹が空になっていく感覚に襲われていた。今まで麻痺していた不安が、また溢れてくる。
「……ヒョンジな、大丈夫?」
リノヒョンが片膝をついて、俺の頭を撫でる。束の間の安心を失った俺にはその手がひどく優しくて、思わず顔をあげる。また大きな瞳と、目があった。
心底俺に疲れて、呆れて、縛られてる。ことで生きてる目。結局俺もリノヒョンもいっしょ。お腹いっぱいって訳じゃないけど、死ぬ程お腹が空いてもいない。
俺は何を思ったのか、ゲロ塗れの口のまま、リノヒョンにキスする。リノヒョンは避けなかった。
やっぱり俺は、リノヒョンを捨てられない。