10.おはよう、大好きな君へ
ずっと長い夢を見ていた。
意識はうっすらある時もあったかな。
でも視界は白くぼやけて体中が金縛りにあったみたいに動かない。
そんな変な感覚だった。
その中で俺の手を握りしめてうめく声は何度も聞こえてきてた。
「凪、俺が守れなかったから。俺が弱いから、お前は目覚めてくれないんだよな。 」
玲王だ。分かってるのに、否定したいのに思い通りにいかない。
いつもならどうでもよくなる。
こんな時は身に任せて諦めちゃうのにさ。
おかしいよ、玲王。玲王のことになると頭が言う事を聞いてくれない。
眠さをこらしめたくなるんだ。
玲王のせいじゃないよ、俺が弱いせいだ。
(玲王、泣いちゃうくらい喜ぶだろーな。)
記念日に俺は玲王に言われたレストランに向かっていた。
手には花束を抱えて、小走りで。
久しぶりに会えることに舞い上がっていた。
だからだろうか。目の前から向かってくる黒いパーカーの男が向ける刃物に気づかなかったのは。
「…え、?」
すぐに近くの交番からお巡りさんが出てきて男は確保されてた。
俺を囲む人混みの中から飛び出してきた潔が呼んでくれた救急車で運ばれていく。
その頃には意識は飛んでたと思う。
昔の俺の夢、両親の愛、初めての恋、玲王と出会ってからの日々、サッカー。
長い事眠っていた。
たまにこのまま消えてしまうような感覚に陥る時もあったけどその度に玲王が出てくるんだ。
「俺を置いていくな」
って。
「玲王、ごめん。1人にさせて。」
「ごめん、ごめんな、凪。」
「泣かないでよ、玲王ってば。俺もう大丈夫だからさ。ね?」
玲王の頬を次から次に涙が伝っている。
俺のことでいつも変わらない玲王が苦しんで泣いちゃって不安になった。
あれから4年後。
凪の体は元通りになった。
これから体づくりを一から初めて体力もつけないといけない。
やることは沢山ありすぎる。
世界では凪の復活を押してとある人物の結婚報道で溢れかえっていた。
「な、凪。いつか俺からも言わせろよ。」
「いいよ、その時俺は病気なんだ。」
「は??何不吉なこと言ってんだよ。ちなみにどんな?」
「へへ、はいとYESしか言えない病気。」
口に出してから熱くなる顔を見て玲王が笑ってくれた。
病室のテレビには凛と潔のフランスでの式の様子が生放送されていた。
「おはよう、凪。」
「…おはよう、お待たせ。玲王。」
まだ弱い俺たちは互いに支え合って生きていく。
それが俺たちの、俺たちなりの愛し方。
おはよう、大好きな玲王。
コメント
6件
うわぁー!?ほんっと良かった😭 この10話良すぎて号泣です😭最高でした‼️ありがとうございました! やっぱ、凪玲央しか勝たん❤
涙が溢れ出してくる~😭 こんな神作品をありがとうございます!!!!!!!
うぁぁ、泣きました 最終回までお疲れ様です