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「ユウ?」
ムツキは張り切っているユウを見て嫌な予感がしている。
「はいはい! 私、ユースアウィスが審判やります!」
ユウが審判に立候補すべく手を挙げた。
「小娘よ。そなたに審判など務まるのか?」
ナジュミネがユウに向かってそう言うと、ユウは自信ありそうに言った。
「もちろん、審判も神判も得意だよ!」
「2つの違いが発音くらいしか分からぬが、そなたのその意気込みは買おう」
ナジュミネは、ユウの神様ジョークに訳が分からないといった表情をするが、ユウが審判を務めることに了承した。ユウはニヤリと笑う。
「いや、やると決めて……」
「ムツキ、やりなさい? いい?」
「……はい」
「よろしい」
ユウが先ほどニヤリと笑ったのは、ナジュミネさえ了承すれば、ムツキの方はどうとでもできると考えていたからだ。彼は乗り気ではないものの、ユウが自分にとってマイナスになることを提案しないという理解があるため、女神のワガママに付き合うことをよしとした。
「こんな年端もいかぬ少女に言い返せぬ男が本当に強いのか心配になってきたな……」
ナジュミネは少し落胆する表情を見せているが、彼女とて引っ込みがつかない所まで来ているのと、勝負自体は望むところのため、その気になっている。
「ユースアウィス、はて、どこかで聞いたような」
プロミネンスは聞き覚えのある単語に、昔の記憶も呼び起こそうとする。しかし、歳のせいか、中々思い出せないようである。
「改めて、審判は私、ユースアウィスが務めます! そして、決闘の勝敗には対価がつきもの。お互いに差し出すものを指定しなさい!」
「む……。雰囲気が変わった?」
ユウの瞳が淡く光る。その異様な姿にナジュミネは気圧されつつも、先に宣言を始めた。
「……よかろう。妾、ナジュミネは負ければ、この身を全て差し出そう。愛でるもよし、慰み者にするもよし、この身を好きにするがいい」
「ナジュミネ、お主は伴侶を探しに来たんじゃないのか?」
「負けなければよいだけだ。それに、負けた上で自分の望むものを願うのはおかしいだろう」
「いいね! かっこいい!」
ナジュミネが全てを差し出すと言った手前、ムツキもまた全てを差し出さざるを得なかった。
「分かった。俺、ムツキは負ければ、この身を全て差し出そう。小間使いにでも、奴隷にでも何にでも使ってくれ」
「ニャ、ニャッ?!」
ケットが一瞬慌てるが、ムツキが最強であることを思い出し、静かに見守ることにした。
「両者の差し出すものが同等と、私、ユースアウィスが判断した。よって、この決闘を受理し、正式な神前試合とする! 互いの約束は破られないことを私が保証する!」
ユウは決め顔で高らかに宣言した。
周りで猫や犬がポフポフと拍手でユウを讃えている。まるで学芸会のセリフを噛まずに言えた子どもに送る拍手のようだ。
「あ、あぁ、ユースアウィス。思い出したぞ! 亡くなった創世神の名ではないか!」
「そうそう、創世の……って、えええええええええええええええええええええぇっ! 私、死んだことになってるの?!」
プロミネンスの言葉に、決め顔だったユウの顔が驚きの表情に変わった。急に自分の死を告げられては仕方のないことだろう。
「……話がそっちに逸れそうだな」
ムツキは、長くなりそうな話だなと思いながら、そう呟いた。
「うぐぐ……。それは後で聞くからね!」
ユウは苦渋の決断とばかりにプロミネンスにそう言い放った。
「逸れなかったな」
ナジュミネはそう呟いた。