コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
久しぶりに書きます!カイ潔です!
⚠️死ネタです…
──────────────────
仲が死ぬほど悪かった俺たちがようやく付き合って、あと三年になる頃だった。
「…世一?え、おい…世一!」
世一が血を吐いた。
幸いと言っていいのか、試合中ではなく家で起きた。急いで病院へ車を向かわせた。
当の本人は、意外にもケロッとしていて、
「え、嘘!血じゃん!」
吐血なんて初めてだわ、こんな感じなんだ。
などと呑気なことを言っている。
「バカっ、早く行くぞ」
──────────────────
検査のためしばらく入院が必要らしく、入院中世一は、サッカーができないなんて…としょぼくれていた。
あの世一がしょぼくれるなんて珍しい。なんとなくだが、頭の双葉が萎れてるきがした。
しばらくして担当する医師から話があった。
「…残念ですが」
世一の寿命はあと半年らしい。
「…は?」
どういうことだ?世一があと半年しか生きられない?
「そんな冗談だろ…?!何かの間違いだ!」
「カイザー落ち着け、一回座って」
「っ、」
世一は淡々と医師の話を聞いていた。俺は正直、話など聞けていなかった。
どうしてお前はそんなに冷静なんだ。死ぬのが怖くないのか、あと半年しかないのに。
──────────────────
「おい、カイザー遅刻だぞ」
「はぁ、お前運動はおすすめしないって医師にあれほど…」
「俺がサッカーしないであと半年も生きてられると思う?」
世一はいつも通りピッチの上でサッカーをしている。まぁ世一だしな、と納得してしまう自分がいた。
良かった、と安心するがこの光景がいつか見られなくなることに寒気がした。
──────────────────
世一の病状が悪化し始めた。発覚から2ヶ月経った頃だ。
世一のサッカーができる時間が少しずつ減っていくのがわかった。
お前がいないと退屈なのに。
2ヶ月も経つと、いつもの調子はあまり出なくなった。それでも医師からは、この体の状態で運動できるのはすごい、と言われていた。
だが、世一はそんな自分に悔しそうにしていた。
「あと、4ヶ月しかないのに 」
世一のこのボソリと呟いた独り言が、俺の心の奥底に重く留まった気がした。
──────────────────
発覚から4ヶ月
こうなってくると寝込んでいる時間の方が多くなってきていた。そんな世一につられて俺も一緒に寝ることも増えた。
「あー、サッカーしたいな」
寝ていた俺に抱きつき呟いた。
「今からするか」
「ははっ、無理だよ」
世一は力無く笑った。
──────────────────
発覚から半年が経った。
もう季節は冬で、吐く息が白くなるほど寒い日だ。
世界は今日クリスマスらしい。そして、俺の生まれた日。
そんな日に世一が隣にいない。
「Guten Morgen、世一?」
外からボールを蹴る音が聞こえる。
ハッとして、寒さも忘れて玄関を飛び出した。
「カイザー、サッカーしよ!」
「…なにしてるんだ」
「はぁ?サッカーだけど…」
世一はさも当たり前かのような顔をしてこちらを見つめてくる。
「そんなことを聞いてるんじゃない、こんなクソ寒い日になんで外にいるんだよ!」
「え〜?まぁまぁいいから!」
久しぶりに元気な世一を見た気がして、つい流されてしまった。
久しぶりにした世一とのサッカーは楽しかった。
この時間がずっと続けばいいのに、と思う反面、今日で終わりなんだな、ということになんとなく気づいてしまった。
──────────────────
サッカーしたあとは、2人で風呂に入って、ケーキを食べて、ベットの中でいろんな話をした。
「げ、もうこんな時間じゃん、そろそろ寝よーぜ」
嫌だ
そう言いかけた言葉が寸前で止まった。嫌だ、なんて俺のわがまま。
「…そうだな」
「もー、カイザー泣くなよ!寝れねぇじゃん!」
「…泣いてない」
「はいはい、カイザーおやすみ愛してる」
「おやすみ、世一愛してる」
そう言うと世一は満足気に目を閉じた。本当に眠っているだけみたいだった。
体が冷たくなっていくこと以外。
丁度半年の26日に時計が進んだ時のことだった。