Side mtk
夜の東京は、凍えるような冷たい風が吹いていた。
撮影用の照明を浴び続けたせいか、頬に残る熱が、外気とぶつかって一気に冷やされていく。
時計を見ると、23時を少し回ったところだった。
吐いた息が白く曇る。
スタジオを出ると、スタッフの挨拶を適当にかわしながら、移動車に乗り込んだ。
「……疲れた。」
静まり返った車内で、軽く目を閉じる。
雑誌の撮影、インタビュー、細かい確認作業。
朝からずっと走り続けて、ようやく自分の時間を手に入れた。
自宅に戻り、玄関で靴を脱ぎ、適当にジャケットをソファに放り投げる。
暖房のスイッチを入れ、スマホの充電器を探していた、そのとき。
画面が光り、小さくバイブ音が響いた。
メッセージアプリの通知。
少し面倒だなと思いながらも、その名前を見て、
メッセージをタップして開く。
「今日、元貴の家で逢える?」
短い一言。
俺は、そのままディスプレイを見つめた。
メッセージは若井からのものだ。
なんだかんだ時刻は既に0時前。
こんな時間にこんなメッセージ。
送る前に、相当悩んだのだろうか。
今日の俺のスケジュールをどこからか入手して、
帰宅時間を考えたのだろうか。
そんなことを考える。
……どっちにしても可愛い。
「どうしたの?」
数分考えた後、短くそう、返信して、スマホをテーブルに置く。
既読がついたのを確認しながら、お風呂でも入ろうかと考えていた矢先
すぐに返信が返ってきた。
「何もないんだけど、元貴に逢いたい。」
………。
また、若井は。
なんで、こんなに素直に『逢いたい』などと言えるのだろう。
「この時間から?明日のスケジュールもあるし、何もできないよ?」
「うん。分かってる。」
ふーん、そう。
返信を打つのをやめて、わざと間を空けた。
正直、疲れもあったし、どうするか暫く悩む。
数十分間、わざと既読のまま放置した。
溜まっていた洗濯機を回して。
ベットルームの掃除も軽くする。
……まだ返信していないのに、
若井を迎え入れる準備をしていて
自分でも笑える。
この時間、若井がどうしてるのか想像すると、心が躍った。
多分スマホを握りしめて、俺の返信を待ってるんだろう。
既読がついたままの画面を見て、不安になってる。
……きっとこの文章を打つのに
何回も考え、思い悩んで、送ってくれたんだろうな。
…ふと鏡に映る自分は、自分でも驚くほど、笑顔だった。
今何時だ?
ふと我に返って、時計を見る。
時計の針は0時20分を差していた。
「返信遅れた」
「今からでもよければ、どうぞ。」
それだけ送る。
でも、本心は。
『俺も、若井に逢いたい。』
そう思いながら、俺の口元は、緩んでいた。
…..
コメント
16件
最高です泣
うわ...大好きです( ´ཫ` ) 🫧さんの小説はほんとに色んなところに色んな意味が込められてるので全部にドキドキします...(⑉• •⑉)❤︎
初めてのコメント失礼致します 🫧さんの作品陰ながら見ておりました、🫧さんの文才力がすごすぎて毎回驚いています...。 意地悪で素直になれない大森さんが凄く可愛いくてニコニコしてます、素直に言える若井も可愛らしくてなんだか似ている二人がとても愛おしいと感じました。 会いたいではなく、「逢いたい」なのも、なにか意味があるのかなと考えられます..... 🫧さんの作品は意味がよく込められていて読むのが楽しいです✨️ 長々と長文失礼致しました🙇🏻