古びた洋館の窓から薄紅色の夕焼けが差し込んでいた。窓枠には、蜘蛛の巣が幾重にも絡み合い、まるで巨大な網のようだ。館の周囲は、鬱蒼とした森に囲まれ、暗雲が低く垂れ下がっていた。風が森を駆け抜け、館の古びた壁を叩き、不気味な音を立てていた。
この館は、かつて裕福な貴族が所有していたと言われる。しかし、その貴族は、ある悲劇的な出来事を引き起こし、館を呪われた場所へと変えてしまったという噂が囁かれていた。人々は、夜になると、館の窓から怪しげな光が漏れるのを目撃し、館の内部から不気味な声が聞こえるという。
ある雨上がりの夜、私はこの館を訪れることにした。好奇心と、謎を解き明かしたいという強い気持ちに駆られていた。私は古い地図を頼りに、館へと近づいた。
地図には、館の地下に、秘密の部屋があることが記されていた。それは、貴族が隠した財宝の場所であると伝えられていた。しかし同時にその部屋には、恐るべき存在が潜んでいるとも囁かれていた。
館の扉は、重厚で、冷たくて、まるで死者の手のように感じられた。私は、深呼吸をして、扉を開けた。
すると暗い廊下が私の前に広がった。壁には、剥げ落ちた漆喰が、まるで死者の顔のように見えた。足音だけが、静寂の中で反響し、不気味な音に聞こえた。
幾つかの部屋を通り過ぎ私は地下へと降りていった。階段は古びていて踏みしめるたびに、軋む音が響いた。階段の踊り場には奇妙な絵が描かれていた。それは、惨劇に満ちた絵で、人間の姿が、歪み、変形していた。
地下に降りた先に広がった部屋はまるで牢獄のように薄暗い空間だった。窓はなく、唯一の光源は、部屋の奥に置かれたロウソクだった。ロウソクの炎はゆらゆらとゆらぎ、そして部屋の隅々まで、不気味な影を落としていた。
部屋の中央には、大きなテーブルが置かれていた。テーブルの上には、幾つかの古い文書が散らばっていた。私は、それらを拾い上げ、読み始めた。
文書には、貴族が、ある儀式を行い、恐るべき存在と契約を結んだことが記されていた。その契約によって貴族は莫大な富を得たが、同時にその魂を永遠に失ったという。
文書を読み終えた時、部屋の奥からかすかな音が聞こえた。それはまるで誰かがゆっくりと近づいてくる音だった。
心臓が、胸の中で、ドクドクと鼓動を打っていた。私は、ゆっくりと、部屋の奥へと視線を向けた。
そこにいたのは、巨大な影だった。それは、人間の姿ではない何かで、闇に溶け込んでいた。その影は、ゆっくりと私に近づいてきた。
私は、その影の正体を理解した。それは、貴族の魂だった。契約によって永遠にこの館に閉じ込められ、この地下に、永遠に閉じ込められた存在だった。
影は、私に近づいてきてそして、私の前に現れた。その姿は、醜く、歪んでいて、恐怖で体が震えた。
それは、貴族の死んだ顔だった。その目は、空虚で、無機質で、まるで、死者の目のように見えた。
その瞬間、私は、全てを理解した。この館は、呪われていたのではなく、貴族の魂が閉じ込められた場所だった。そして、私は、その魂と、永遠にこの地下に閉じ込められる運命を共有することになった。
その夜、私は、永遠の闇の中に消えていった。
そして、古びた洋館の窓から薄紅色の夕焼けが差し込んでいた。窓枠には蜘蛛の巣が幾重にも絡み合い、まるで巨大な網のようだ。館の周囲は、鬱蒼とした森に囲まれ、暗雲が低く垂れ下がっていた。風が森を駆け抜け館の古びた壁を叩き不気味な音を立てていた。
誰も、この館を訪れることはなかった。それはもはや誰にも決して訪れることのできない、呪われた場所だった。
〜主のあとがき〜
こんばんは!主こと桜艾です!
超短編小説を読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします🤲
ではまた!
コメント
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♡(文章上手すぎて意識飛んだ)