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五条は、教室へ向かうのが憂鬱だった。ただでさえ憂鬱なのに、空までも濁った灰色で、空気もジメジメとしている。自室から一歩も出たく無いと、五条は思った。五条が憂鬱なのには、幾つか理由がある。
一つは、昨日、傑と夕食を食べに行き、帰り際に、傑に怒鳴ってしまったから。
二つ、副担任を外して貰えず、傑以外の、違う人にして貰う事も出来なかったから。
三つ、上の連中(腐ったみかん)に、特級呪術師と、特級呪術師の候補の様な人達は、呼び出しを喰らっているからだ。五条も傑も特級だから、五条は、傑と顔を合わせる事になってしまうのだ。
自分の口角を指でクイッと上げて、五条は、何時も通りの笑顔を浮かべる。そして、五条は教室へと入った。
「皆〜!おっは〜!」
(悠二)「お、先生ー!おはよー!」
(恵)「おはようございます。」
(野薔薇)「おはよ。」
「…彼れ?すぐ………夏油傑サンは?」
(悠二)「そう言えば、来てねーな。」
(恵)「知りませんよ。教員の五条先生が把握していないのに、俺達が知ってる訳が無いでしょう。」
「だって皆さぁ…。僕より色々知ってる時あるじゃん。」
(野薔薇)「何でもかんでも知ってる訳じゃ無いわよ。」
「ま、それもそっか。」
傑と顔を合わせずに済んで、五条は率直に安心している。なのに、教室に入る前より、憂鬱な気分が増していた。
昨日、僕が酷い事言ったからだよな……。
昨日、感情的になって、五条は、傑に対して怒鳴ってしまった。だから、傑は授業に来ていないのだろう。
そうとしか思えない。
もう本当に、傑と関わる事は無いのかも知れない。
そう思うと、ギュッと、胸の奥の方が、強く締め付けられる様な感覚がした。
確かに、僕は自分勝手なのかも。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いても、傑が教室に来る事はなかった。だからと言って、教室でグダグダしていられる訳もなく、五条は、上から指定されている任務に向かわなければならない。今は、任務なんて行きたい気分じゃないが、やらなければいけない事だ。サボって上の連中から文句が来るのを、五条は何度も経験済みだ。
任務は、適当に術式で呪霊を捻り潰しまくって、全て終わらせた。上からの呼び出しにも、一応、応じた。上の連中からのお話の内容は、呪術師の死亡者数が、年々増えている事についてだった。
呪術師を消耗品の様に使ってんのは、アンタ達だろ。
そう思い、呆れた連中の話を聞きながら、五条は溜め息をついた。
傑は任務で忙しいらしく、上からの呼び出しにも来なかった。
上からの、長い長いお話がやっと終わり、何となく、五条は教室へと足を運んだ。夕日の光が窓から差し込んで、教室は、茜色に染まっていた。五条は、窓辺に近づき、窓から身を乗り上げて、空を仰いだ。其処には、朝の濁った灰色の空が嘘の様な。赤とオレンジが混ざっている様な、鮮やかな暖色の空があった。
「もうこんな時間か…。」
陽が落ちて来るこの時間帯は、不思議な安堵感を感じる。
確か、逢魔が時とか、黄昏時って言うんだっけ。
そんな事を考えながら、五条は窓辺から、眩しい夕日に照らされた景色を、呆然と眺めていた。
(傑)「……悟?」
「……ッ?!」
「す、傑……?!」
いきなり背後から声を掛けられ、反射的に振り向くと、教室の扉の前に、傑が立っていた。五条は驚いて、思わず目を見開いた。
「……ッな、何…?」
「何でいるの?」
(傑)「…悟の事を探してたんだよ。」
全く想像もしていなかった回答に驚き、又もや、五条は目を見開いた。
「…探してたって…何で……。」