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胡霸「じゃあとっとと終わらせよう」
胡霸「俺から見る」
芽々「少し待ってください」
カードをめくろうとした胡霸さんを制す。
のち、怪訝な目を向けられる。
私は全員を見渡しながら言った。
芽々「始める前に一つだけ、決まり事を決めてもよろしいでしょうか」
胡霸「はぁ?」
善「わかりました、聞きます」
善さんは飲み込みが早くて助かる。
芽々「民主主義に乗っ取って、多数決で決めません?」
芽々「私が後からいちゃもんをつけられても困るので」
麗扠「ふーん…ま、いいんじゃない」
麗扠「そっちの方が早いでしょ」
椎名「芽々さんの提案なら何でも!」
その声を聞き、言葉を続ける。
芽々「もし2-2に別れた場合は私が判断を下しますが」
芽々「基本的にはあなたたち四人で話し合ってください」
芽々「そちら側が三人、生きるべきとなった場合」
芽々「きちんとこちらでも生きるべきと証言させて頂きますので」
一通り話し終わったあと、フッと胡霸さんが笑う。
胡霸「頭が回るな、詐欺師でもやってんの?」
芽々「あは、褒めて頂き光栄です」
胡霸「チッ…」
この人はころころと表情が変わって面白い。
胡霸さんはじゃあ読むぞ、と言ったあと、カードをめくった。
その人間はただひたすらに 暗い人生を歩んでいた
大人も周りの人間も 自分でさえも誰もかも
この人間のことを救ってはくれなかった
その人間には唯一の友人がいた
その友人と共にいることだけが生きる意味だった とも言える程に
自分を救うためにこの人間は 友人と ある計画を企てる
友人と一緒に 周りの人間を巻き込んで
人生の最期くらい寂しくないように と
一緒に死ぬことを企てた
さて この人間は生きるべき人間だろうか
死ぬべき人間だろうか
胡霸「まあ、じゃあ一人ずつ言っていくか」
胡霸「俺以外の意見が聞きたい」
善「‥僕は」
善「…」
善「死ぬべき人間、だと思います」
善「自分一人で死ぬだけならまだしも、周りを巻き込むなんて」
善さんが述べる。続いて、それに反抗するような声が響く。
麗扠「うーん、生きるべき人間じゃない?」
麗扠「この人が生きてるってことは、みんな生きてるってことだしね」
胡霸「俺も生きるべき人間だと思う」
芽々「…割れていますね」
こうなれば少し難しい。
とりあえず、まだ意見を出していない椎名さんに問いかける。
芽々「椎名さんは?」
椎名さんは少し眉を顰めながら言った。
椎名「こういう言い方しか許されてないんで言いますけど…」
椎名「死ぬべき人間だと思います」
椎名「周り巻き込んで死ぬとか、迷惑にも程がありません?」
芽々「なるほど」
芽々「皆さんの意見が今出揃った訳ですが…」
全員を見渡す。
芽々「意見を変える人はいませんか?」
椎名「…芽々さんは?」
芽々「私ですか」
芽々「生きるべき人間、では?」
椎名「どういう理由で?」
芽々「まあ、そうですね‥」
一拍を置いてから答える。
芽々「感情移入したとか、周りを巻き込むからとか」
芽々「そういうのは全く考えていません」
芽々「単純に、人が人の生き死にを決めるのは傲慢な気がしていて」
芽々「そうなれば“どちらでもいい”が正しいのでしょうか」
芽々「私は神様でも何でもありません」
芽々「人の生き死にを決めるのは、私ではありません」
芽々「なので、生きるべき人間、ということにしておきたい。というのが私の意見です」
椎名「なるほど、そういう考えもあるんですね」
そう言ってふむ、と頷く椎名さん。
椎名「良い考えだと思います!」
芽々「‥ありがとうございます」
芽々「さて、今は3-2となった訳ですが…」
麗扠「従うよ、最初に決めたことだし」
芽々「…では」
私はスマイリーに向けて言う。
芽々「この人間は、生きるべき人間です」
スマ『はい、回答を承りました』
スマ『続きをどうぞ』
麗扠「じゃ、読むよ」
麗扠さんはその後、読み上げる。
その人間には夢があった
夢を真っ直ぐ追いかけるその人間は
ある出来事をきっかけに自信を喪失していった
しかし 夢を諦めたくなかったその人間は
様々な人に相談を持ちかけた
だが相談をしたある人物に 人生全てを否定された瞬間
その人間は自殺してしまった
さて この人間は生きるべき人間だろうか
死ぬべき人間だろうか
胡霸「生きるべき人間だろ」
胡霸「自殺なんてくだらないことしねえで」
麗扠「私は、死んで良かった人間、だと思う」
麗扠「経緯はどうであれ、自分で死を選んだ訳だし」
善「椎名さんはどう思いますか?」
俺すか?と言ったあと、椎名さんは続ける。
椎名「自殺した人のことなんで難しいっすけど…」
椎名「死を選んだのは自分だし、死ぬべき人間だったんじゃないですかね」
みんなが話している中、一応意見だけは伝えておく。
と言っても、殆ど変わっていないが。
芽々「私は生きるべき人間だと思いますよ」
芽々「まあ、それでその人が幸せだったかは分かりませんがね」
善「僕は生きるべき人間…というか、生きていてほしかった人間、ですかね」
善さんは少し悲しそうな顔をした。
善「その出来事があって、夢を諦めたわけですよね?」
善「だからってそこで諦めるっていうのは…」
善「僕が言える立場ではないんですけど、もっと生きて、足掻いても良かったんじゃないかなって」
ここにいる人たちは本当に、意見が綺麗に別れるようだ。
芽々「…それが、その人にとって苦痛だったとしても、ですか?」
善「え?」
芽々「夢を否定され、人生を否定され」
芽々「生きているのが辛いのに、生きろ。と」
芽々「あなたはそう言うのですか?」
善「…それは、……」
黙り込む善さん。少し意地悪な質問をしすぎたかもしれない。
芽々「この人がどんな気持ちで死を選んだのか、私たちにはわかりませんからね」
想像することしか。
芽々「では、意見をまとめます」
芽々「結果的にまた私が決めることになりますが…」
芽々「私の意見は変わりません」
芽々「スマイリー。この人は、生きるべき人間です」
スマ『はい、回答を承りました』
スマ『続きをどうぞ』
コメント
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めめさんかっけぇ… 生きるべきか死ぬべきかの考え方それぞれちがくて面白いっすね 個人的にはうぱさんの考え方が自分と近くて好きです めめさんかっけぇ…(2度目) めっちゃ続き気になるわ、楽しみ