これは、私が物心つく前の一番古い記憶。
桜舞公園という市内の大きな公園に、母と遊びに行った時のことだ。
私は夢中になって、シロツメグサを集めて遊んでいるうちに、母と逸れてしまった。
幼い私は、泣くことしかできなくて。
今、思うと私はあの頃から泣き虫だ。
そんな時、迷子の私に声をかけて助けてくれた女性がいた。
モデルのようにすらっとした足で背が高く、色白で、ぼんやりとだが容姿も私の記憶では芸能人かと思うほど可愛かった。
その女性は、持っていたギターを弾いて、私に歌を歌ってくれたのだが、それがなんの曲だったのかは、さすがに覚えていない。
その人の、優しい笑顔や声をぼんやりと覚えている。
確か、その人は言っていた。
保育園の先生になると。
だから、私の将来の夢は、幼い頃から保育園の先生なのだ。
あの人のように、温かい心で誰かの役に立って感謝されるような人になりたい。
あの人は、可愛くて、優しくて、私の理想であり完璧な人だ。
しかし、理想と現実は残酷なほど遠い。
まだ明け方だというのに、今日も私は目が覚めた。
最近、ストレスで不眠になっている。眠れた気がしない。
それなのに、そんな私のことはお構いなしに図々しく、朝日が窓から差し込む。
カーテンを閉め忘れた昨日の私に失望する。
あぁ、ベッドから起き上がらなければならないじゃないか。
仕方なく、ベッドから起き上がりカーテンを閉めようとすると、窓から外の景色が見えた。
薄暗い街が、徐々に明るくなってく。
東の空は、下側の雲が桃色に、上側の空は藍白になって広がっている。
しばらく見ていると、雲も空も街も桃色に染めて、全てを照らすように朝日が昇った。
私は、マンションの五階から毎日この景色を見ている。
この朝日を見るたびに思うことがある。
なぜ、親は私に朝陽などという名前をつけたのだろう。
皮肉にしか思えない。何をやってもダメな私なんかが何を照らせるというのだ。
だから、私は朝陽という自分の名前が大嫌いだ。
そして、窓から見える、この朝日を綺麗だと思ったことは、今まで一度もない。
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