「……やれやれ、ずいぶんと、無駄に血が流れたね」
ウィスの前に現れたミルゼは、いつもの制服姿だった。
破れも汚れもない、まるで一度も現場に足を踏み入れたことがないみたいに。
「計画は単純だったよ。まず、“地下”に感情を沈めた住民を見つける。絶望を抱える人間は、いい種になる。
夜咲には『魔物の種子』を、流鏡には『観察と沈黙』を。そして、君には『掃除』という名の『隔離』を──」
ミルゼは淡々と喋る。まるで小説を朗読しているように、けれどその内容は、社会を地の底から破壊するための教科書だった。
「“黙秘の契約”は便利だったよ。みんな、何かに気づいても言えなかった。夜咲は“目的がない”なんて言ってたけど、それは本当じゃない。彼は“目的を言えない”ようにされてた。僕の手でね」
ウィスが拳を震わせる。怒りじゃない。理不尽さへの拒否反応。
「流鏡? 彼もそう。最後の最後に、真実に触れられるように仕向けた。だってその方が……面白いじゃないか」
一拍置いて、彼は言った。
「宗教国家計画も、ウイルスの散布も、全部、“井戸”というこの都市をひっくり返すための布石。本当の魔物ってね、人間の“認識”だと思うんだ」
「君たち、ずっと“誰かを信じてた”よね?でもその誰かが嘘をついたらどうする? 口を閉じたら?それでも信じ続ける? なら、それが君たちの罪さ」
ミルゼは笑わなかった。
喋っているのに、彼の心には何もない。まるで音だけの亡霊だった。
「──僕はずっと、君たち全員の“沈黙”に守られていた」
最後、彼は言った。
「ゲームはまだ終わってないよ、ウィス。これは“始まりのはじまり”。井戸の底は、まだ見えてないんだ」
コメント
1件
今回も神ってましたぁぁぁぁぁあ!!!!! ミルゼスワァン...喋り方イケメンすぎるって(((関係無さすぎる ウィスたぁん...そりゃそうなるよね...耐えるんだぁぁ!(?) 今回ちょい短くてすまそ(( 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいいいいいいいぃ!!!!!!