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「ん…。ふぁあ…って眩しっ」
目が覚めると布団の中。日光が目に入って眩しい。
僕…。いや、俺、歌想乱 璃夢は今日、上流階級ばかりの宴に参加することになっていた。
上流階級ばかり…とはいっても俺よりは下。
俺は当主、千夜の義理の息子なのだ。
俺の従兄弟、鬼龍院玲夜の花嫁が見つかったということを証明しに行くらしい。
当然、俺も出席しなければならないわけだが、まだ俺には花嫁が見つからない。
はぁ、俺ももうちょっと容姿が良ければな…、
そう溜息をついて鏡を見る。
腰までの長くつやのある白い髪に、ぱっちりとした大きな目。
とても男性とは言えない容姿だった。
女性ならば誰もが羨むほど美しい。だが、、ここはあやかしの世界。
妖ならば、容姿が整っているのは当たり前だ。
そんな事を考え、憂鬱な気分になっていた。
すると、
「璃夢さん!朝ですよ~!」
威勢のいい女性の声。
腰まで伸びた黒髪に赤い目。
彼女が鬼龍院玲夜の花嫁、柚子だ。
「お~、おはよ。てかお前俺のとこ来て大丈夫なのか?薮から蛇が出てくるぞ。」
「え~?そんなことな…。あっ!!」
突然何かを思い出した様に走り出した。
向かったのは柚子の夫、玲夜の部屋だ。
嫉妬深い玲夜のことだ。自分よりも先に他人を起こしに行ったと知ったらきっと雷が落ちるだろう。
そんなことを考えていると寒気がしてきた。
絶対に秘密にしておこう。
「お綺麗ですよ、璃夢様。」
「へへ、ありがと」
着付けも終わり、やっとのんびりとした時間を送れる。
黒い生地に、水色の睡蓮や彼岸花の柄が目立つ着物。
この着物は璃夢が産まれる前に祖父から貰ったもので、酷く気に入っていた。
「おはよ~、璃夢ちゃん〜!今日も可愛いねぇ♡」
廊下の方から鬼龍院家の当主、千夜が歩いてきた。
「ありがとうございます、父さん。…あの、『璃夢ちゃん』て……僕のこと馬鹿にしてます?」
「いやいや~。可愛いって意味だよ~。」
相変わらずヘラヘラと喋る千夜。これで妖の当主。未だに信じ難い。
「父さん。あまりからかっちゃ璃夢が怒りますよ。」
向こうから柚子を抱いた玲夜が苦笑して歩いて来る。
「だってぇ、璃夢ちゃん外に出たら怖いんだもん。今のうちに可愛い璃夢ちゃん堪能しとかなきゃ。」
千夜は上目遣いで玲夜を見る。すると、玲夜は笑ってこちらを見てきた。
「許せ」と言っているようなものだろう。
許せるはずもなく、璃夢はこの場を仕切った。
「とりあえず行きましょう。撫子様がお待ちですよ。」
乱暴にいい払って車へ向かった。