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Dr.STONE 夢小説
ある午後。研究小屋の一角。椎名は小さな木箱に向かい、指先に集中していた。
木製の机に並ぶのは、飛行機のミニチュアパーツ。
カセキの作った特製道具を使いながら、椎名はご機嫌な顔で作業を進めていた。
「よしっ……ここで留めて、補強して――っと。……羽京!!見てくれ、これ!!」
くるりと振り返った拍子に、椎名の肩が何かにぶつかった。
思ったよりも近かった距離。ぶつかった相手――それは羽京だった。
「わ、ごめ……っ!? あれ?」
その距離、わずか15cm。
羽京は、完全にゼロ距離。
目の前で、夢中な瞳のままパーツを持ち上げる椎名に、声も出ない。
「この尾翼の部分、ちょっと構造が複雑でさ。だけど、ちまちま削って組み立てたら、ちゃんと動くようになって――」
(近い近い近い。っていうか、近すぎる……!)
椎名の顔がすぐそこ。
その無防備な笑顔も、手についた木くずも、全部この距離で。
……しかも――
「……羽京、聞いてる?」
「……! あ、うん。もちろん。聞いてるよ」
(さっきから……ずっと、“羽京”って……呼び捨て……?)
今までは「羽京さん」だった。
その呼び方がいつの間にか自然に変わっていて――それがまた、心臓に効いた。
(“羽京”って、呼ばれるの……いいな)
椎名はそんな羽京の動揺にはまったく気づかず、ミニチュア機体を振りながら笑っていた。
「なあ、この後さ、この主翼の調整も手伝ってくれよ!あんたの目、すげぇから頼りになる」
「う、うん……」
羽京は頷くのがやっとだった。
(まいったな……こっちの方が撃ち落とされてるみたいだ)
無自覚すぎる椎名と、気づかれないまま照れて撃沈していく羽京。
小屋の片隅で、小さな恋が、静かに離陸準備を進めていた――。