束縛系
みほり視点
「……またやっちゃった」
どうしていつもこうなるんだ。
今日が休日で本当に良かった。
恋人のベッドの目覚めたうえ、腰がものすごく痛かったらもうお察しの通り。
相当抱かれたな…。
しかし、僕を抱いた当の本人はもう起きていたらしく、ベッドにはいなかった。
まさかヤリ捨てか?そんなわけないよね
ピコンっ
「あ、スマホ」
『おはようみほりくん!
起こしてあげられなくてごめんね💦
今日は俺部活があるから先に起きちゃった。
ベッドの横に着替え置いておいたから着てね。
それから、部屋は自由に使っていいよー
終わったらすぐ帰るからまっててね』
「着替え…」
傍に置いてあった質の良い衣服に袖を通す。
少し服が大きい。彼のものなのだろう。
コンコンコン。
扉をノックする音が聞こえた。
「ごめんなさいねえ、起こしちゃった?」
「あ、いえ、大丈夫です」
「そう、なら良かった」
「えっと…あかねさん?」
「覚えててくれて嬉しいわ」
藤原あかねさん。うとくんのお姉様。うとくんのお姉様だからか、やはりとても顔立ちが整っていて美しい。つやつやの長い黒髪。大きな瞳。
思わず見惚れてしまう。この場にうとくんがいたら大変なことになっていただろう。
「あのねえ、少しあなたとお話したくて……今お時間いいかしら?」
「あ、はい、僕は全然」
「ありがとう」
そこから僕と、お姉様の対話が始まった。
「うとはねぇ、小さい頃から友達がなかなか作れない子だったのよ」
「うとくんがですか?」
「今でこそあの子の周りには人が集まるけれど、昔はね、あんまり人と馴染めなくて友達が少なかったの」
「なるほど…」
人気者にもそんな過去があったのか。
「前の学校ではね、恋人も作って何人かうちに連れてきたのよ。けれど、すぐに別れていたから」
「あなたと恋人になってからのうとは本当に毎日楽しそうにしてるわ」
「本当ですか…?」
「ええ!お家では顔にはあまり出ないけれど、あなたと連絡をとっている時の顔は本当に幸せそうだわ」
「よかったです…!」
「それでねぇ、もしかしたら、今後あの子と付き合っていくことですれ違いが起きるかもしれないから」
「そしたらあなたのできる限りでいいから、寄り添ってあげて欲しいの」
「寄り添う…」
「ごめんなさいねぇ、万が一あの子があなたを傷つけるようなことをしたら藤原家の制裁が下るから安心してね」
「制裁…」
「あの子、まだ人との付き合い方が下手なところもあるから…」
「そうなんですかね…」
「学校での様子全然教えてくれないのよぉ。お父さんとお母さんは忙しくてなかなか家で会えないから私がいろいろ聞いてあげたいなって思ってるんだけど…」
「えっと、うとくんは……いつも明るくて、クラスの中心みたいな人なので、下手って言う程じゃないとは思います…」
「そうなの。聞けて良かったわ」
「あ、あとねぇ」
「あなたはあの子になにかされたのかしら?」
「え”」
心当たりしかない。
嫉妬とはいえ勢いで2回抱かれている。しかもちょー激しい。僕の体力関係なしにひたすらやられるので次の日は腰がやばい。
「うふふ。やることすべて済ましたみたいな顔するのね?」
「うぐっ」
「あの子、家ではあなたの話聞いたらたまにしてくれるけれど、毎度毎度聞いてると重すぎて大丈夫かしらと思って」
「あ、僕は全然大丈夫です!それに…僕なんかがうとくんと付き合えてるのがほんとに今世紀最大の謎というか…」
「あらあら、そんなことないわよみほりくん。あの子本当に幸せそうよ、あなたと出会ってから。だから自信もってあの子の彼女やって欲しいわ」
「あ、ありがとうございます」
「朝から邪魔してごめんなさいね、朝ごはん用意したから良かったら食べて?」
「え、頂けるんですか?!」
「もちろん、1階で待ってるわね」
「ありがとうございます!!」
なんてあたたかい人だろう。
「いただきます」
「はあい」
綺麗で高級そうなテーブルの上に置かれたのは、目玉焼きとカリカリのベーコン、それから少しのお野菜と白米。
「?!!すっごく美味しいです!お姉様!」
「喜んでくれて嬉しいわぁ!うちの兄弟どもはいつも文句ばかりだから…文句あんなら自分で作りなさいよ」
「仕方ねえだろ、俺は忙しいんだよ」
「嘘おっしゃい、あんたは一輝みたいに受験生じゃないから勉強漬けじゃないでしょ」
「俺だって勉強してるわ」
「そうだけど…まあ、いいか。ごめんなさいねみほりくん、朝からうるさくしちゃって」
「いえいえ、僕は全然」
弟さん受験生なんだ。大変だな。
「ご馳走様でした!」
「はーい」
「なあ、みほりくんよ」
「天太さん…?」
「あ、覚えてたんだ笑うれしー」
「コクコク」
「そうそう、唐突なんだけどさ君はうとのこと好きなん?」
「僕も聞きたい」
「一輝さん…」
「一輝くんって呼んで欲しいです」
「あ、はいっ」
「それで、好きなん?」
「あ、えっと…まあ、あの、ハイ、好き….です」
「「おお〜!」」
ハズカシイ。
「どんなところが好きなんですか?」
「ど、どんな」
意識、したこと無かったな。
「さ、最初は全然意識してなかったんですけど、告白されて、ずっと好きだよって言ってくれるところとか、僕のこと凄く大事にしてくれてるところとか…その…」
たくさんあった。好きなところ、やってもらって嬉しかったこと。でもその前に恥ずかしさで顔から火が出そう。
「ふんふん。なるほどね。つまり君はあいつにゾッコンLoveというわけだ。幸せそうで何よりだよ」
「お恥ずかしい…」
「いやあ、よかったです。みほりさんが兄に脅されて付き合ってるとかじゃなくて」
「そんなことあるの…?」
「まあ、あいつお前のこと話す度、愛が重すぎてやばいからな。お前のこと好きすぎて無理やり…とかあると思ってたし。そんなことなくて良かったけど」
「お姉様も言ってました…」
この人達とうとくんの家での状況をさもこの世の常識かのように言っていたが、そんなに凄いことになっているのか。
そういえば、ハジメテは無理やりやられたな。無理やりである。
まあ、僕も悪いことはした…かも。
僕もうとくんが女の子と楽しそうにくっついてたらヤキモチ妬くし…いや、彼の場合はそんなこと日常茶飯事だけど。
「よぉーし!俺はお前の惚気が聞けて満足だ、部屋に戻るわ」
「じゃあ僕も栄養補給が完了したので勉強してきます」
そう言って2人はさっさと戻って行ってしまった。
数時間後。
部屋の時計は正午をまわり昼食の時間となった。そろそろ彼も部活が終わり帰ってくる頃だろうか。彼を待ち、部屋でそわそわしていると下の階から人が帰ってきた音がした。
あ、そうだ迎えに行こう。
そう思っていたのも束の間。
凄い速さで階段を駆け上がり、この部屋へ足音が向かっているのが聞こえた。ちょっと怖い。
コンコン
「ただいま!みほりくん♡今日は部活午前中までだったから急いで帰ってきたよ!もう少しだけ待っててくれる?僕はシャワー浴びてくるから!ちょうど姉さんがお昼用意してるからみほりも食べて?」
「ア、ハイッ」
彼の勢いに圧倒されたがその前にお昼まで用意して頂いてるなんて申し訳なさすぎる。今度お土産持ってこよう。それだけ足りるか分からないけど。
午後13時頃。
美味しい昼食を頂き、お礼の言葉を述べ、うと君に案内されるまま部屋へ戻ってきてしまった。
「ねえ、うと君」
「なあに?」
「僕、なんか居候してるみたいでちょっと申し訳ないって言うか…」
「ふふっ、みほりくん気にしすぎだよ。姉さん達も、みほりくんが良い子だからあんな感じなんだよ」
「そ、それは…ありがとう」
しかし、ずっと家に居させてもらうのも申し訳ない。そろそろ家に帰ろうと提案することにした。すると、
「もう帰るの?もう少しいて欲しかったんだけど……できれば一生……」
「さすがにずっと居座らせていただく訳には行かないというか……」
「じゃあ、僕がみほりくんの家行っても良い?」
「え、あ、うん!僕は全然大丈夫、ちょっと母さんに連絡するね」
「はあい♡」
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