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「ん…、んんッ。ふ……」
手を椅子の脚に縛り付けられているためか、身体が跳ねるのと同時に椅子がガタガタと派手な音を立てる。
場所は音楽室や理科室などが並ぶ、北側校舎の、第二準備室。
放課後どころか普段から誰も来ない教室をチョイスしたのは、この縛られている男だった。
「……なんで縛んの」
10分ほど前、不満そうに自分を睨んだその顔を思い出す。
「なんでって。会長すぐ手が出るでしょ。あまりに殴られ続けたんじゃ、俺の身体がもたないんで」
蜂谷の提案に口を尖らせながら、彼は黙って自分の紺色のネクタイを差し出した。
「ま、こんなネクタイくらい、本気出せば解けるからいいけど」
「キングコングじゃないんだから…」
ブツブツ言いながらもこちらが指示した通りに椅子に座ると、手を投げ出すようにだらんと垂らした。
そして今。
彼は手首を椅子の脚に2本のネクタイで縛り付けられながら、後ろから抱き着くように手を伸ばしている蜂谷の行為にただ身体を震わせている。
「会長――。ここ、感じるようになってきたんじゃないの?」
カリカリと胸の突起に爪を立てる。
「―――馬鹿言うな。くすぐったくて、辛いんだよ……!」
右京がこちらを睨む。
「えー、だって」
硬くなった突起の形を確かめるように指でつまむ。
「ワイシャツの上から刺激しただけなのに、もうこんなになってますけど…?」
「………ッ」
言い返せないことがよほど悔しいのか、右京はふいと視線をずらすと、閉めたカーテンから漏れる光の方を睨んだ。
敢えて動かさず、摘まんだソレに、少しずつ力を咥えていく。
「……うう……ッ」
まるでプレス機械のように、一定の速度で淀みなく加えられていく力に、恐怖心を覚えたらしい右京が小さくうめく。
「―――痛い…?」
聞いたが答えない。
痛いと言ったら止めるつもりなのに。
どこまで耐えられるか興味が湧いて、指に力を加えていく。
逃げようとする身体が、椅子を揺らし、扉は閉めていても、人気のない北校舎にその音が響いている気がする。
「……ああ…!」
「―――」
なかなかしぶとい。
このまま力を加えたら、やがて親指と人差し指がくっついてしまいそうだ。
玩具が壊れてしまうのは勿体ないので手を離すと、解放された彼は首を項垂れながら大きく呼吸を繰り返した。
刺激と痛みに息を止めていたのか、いつもは真っ白な肌が、首元まで赤く染まっている。
(―――すげえ、エロいな……)
ゲイでもなければサディストでもないが、こういう姿を見ると興奮しないわけでもない。
さらには、相手が相手だ。
宮丘学園の顔である生徒会長。
しかも先日の決起式以降、女子からの人気が跳ね上がり、今やサッカー部のエースである永月と肩を並べるまでにもなった目立つ生徒。
さらに―――。
地元で知らない人間はいないほど、暴れまくっていた筋金入りの元ヤンキー。
その並ぶ堂々たる肩書に思わず笑ってしまう。
そんな男が今―――。
自分の手で悶えている。
努力した人間が積み重ねてきたものを、崩してやるのが好きだ。
そう。それはまるで、幼いころ、祖母が教えてくれた積木くずしのように。
一つ一つ積み上げて、高くなった塔から、荷重がかかっていない積木を引き抜いてまた上に乗せる。
そうやって積木の塔は、高く、そして脆くなっていく。
高ければ高いほど危ういその塔の、重心がかかっている積木を選んで無理やり引き抜くのが好きだ。
音を立てて崩れ落ちる頂から、陥落していく人間の表情を見るのが好きだ。
右京賢吾。
この男の塔は高い。
しかし永月に寄せる恋心や、隠していた過去には、思いのほか荷重がかかっていなかった。
抜いて上に積み上げても尚、彼はその頂で楽しそうに笑っている。
じゃあ、なんだ?
どの積木を引き抜くと彼は陥落し、崩れ落ちる?
陥落したときの彼の顔を見てみたい。
詰まるところは、それだけだ。
別に右京とセックスをすることが目的ではないし、なんなら右京に自分を好きになってもらいたいなど微塵も思っていない。
―――ただ俺は、この男を……。
「…………」
右京がこちらを振り返る。
「……続き……しねぇの?」
口の端から涎が伝い、大きな目が潤んでいる。
「――――はは」
頭に浮かびそうになった感情を振り払うように笑うと、蜂谷は再び、右京の胸元に手を伸ばした。
◆◆◆◆◆
『あ、もしもし……』
電話口のその声は、どこか外でかけているのか、車の音で聞き取り難かった。
『今月分、準備できたんで……』
男の声は震えていた。
「あー、そう」
言いながら蜂谷は、ソレを握った右手に力を入れた。
『どこで渡せばいいですか?』
「うーん。俺も忙しいからなー」
言いながら上下に擦る動きを早くする。
『……タイミング悪く、ごめんなさい…!』
もしかしたら声が漏れたのだろうか。
電話口の彼は、こちらの気配を察したらしく、戸惑った声を出した。
「いいや。面倒だから振り込んどいて。手数料こっちでいいから」
『あ……わかりました……!』
「じゃ、来月もよろしく」
通話を切り、胸ポケットに携帯電話を押し込む。
いよいよ右手に集中しながら、蜂谷はソレを上下に扱いた。
手の中で大きくなったモノが硬くなってくる。
限界が近い。
先から透明な液体があふれ出てくる。
「は…あ……」
息が漏れる。
左手でワイシャツの上から胸の突起を弄る。
その刺激は瞬時に股間へと伝達される。
「んん…、くッ……!」
握ったモノから白濁液が飛び出す。
避けるように足を大きく開くと、蜂谷は項垂れた。
「………会長め。今日は最低でもここまでやってやろうと思ったのに……」
学年主任の校内放送に呼ばれ、慌てて準備室を出ていった右京を思う。
射精をした時のあいつのイッた顔を見てみたい。
挿入するときのあいつの痛がる顔を見てみたい。
でもおそらく最後までは許さないだろう彼が抵抗した時の対策を考えるのが先だ。
「―――これくらいじゃダメか」
宣言通り右京が力づくで解いたネクタイを拾い上げ見つめる。
さすがにブチ切れてはないが、きつめに締めた結び目が、無理やり広げたことで、きつく球のようになっている。
蜂谷のネクタイはこんなふうにしながらも、自分のネクタイは丁寧に解いて持っていった彼を恨めしく思う。
「……これ、もう使えねえな…」
それを準備室のごみ箱に投げ入れると、蜂谷は目を細めた。
……拘束するならもっと硬い物じゃないとダメだ。
例えば手錠とか……?
手錠でベッドに括り付けた右京を想像する。
『止めろよ……!最後までやんないって言っただろうが…!』
暴れる細い体の中心に自分のソレを宛がって、彼の顔を見ながらゆっくり、しかし確実に、挿入していく。
痛がっても、暴れても、絶対にやめてやらない。
『あぁっ!!あ、や……あああッ!!!』
おそらくは誰も到達したことのない彼の奥の奥まで。
―――俺が、犯してやる……。
ピロン。
携帯電話が鳴った。
取り出してみると、ネット銀行アプリのアイコンが光っていた。
黙って開く。
『アイザワヒデキさんからの入金を確認しました』
それを見ると、蜂谷はふっと鼻で笑った。