コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誘われるように目が覚めればぼんやりと宙に浮く蝋燭が見える。
暫くの間そのゆらゆらと揺らめく炎を見つめていた。
蝶番が少し音を立てそちらに急いで目をやれば、
扉から自分の寝かされたベットへと歩いてくる男がいた。
人の目を惹きつける黒髪はこの辺りでは見ない色だ。
見入ってしまいそうな紅瞳も世界では珍しいと聞く。
口を埋めた赤いマフラーは腰あたりまでの所で振り子のように動き
身につけられた深緑によく映える、とここまで脳が情報を理解したところでようやっと、
彼の身にまとうものがソヴィエトの軍服であると気づいた。
咄嗟に体を起こそうとするものの、
背中やら肩やらがズキズキと痛みまたすぐにベットへと戻されてしまった。
仕方なしに紅瞳を見つめれば彼の方もしっかりと目線を捉えてくる、
緊迫感のある部屋の中ですう、と息を吸う音が聞こえた。
彼から吐き出される”音“は日常的に耳にする”声“を構成する一部分であるが
どうしてもそれを言葉として理解することが出来なかった。
驚く自分を視野に入れつつも彼自身はこうなる事が分かっていたようで、
そのまま足速に部屋からさってしまった。
なすすべもなく彼の消えた扉を眺めてみれば、
90度傾いた視界から部屋の様子を伺うことができた。
六畳ほどの部屋に本棚と小さなテーブル、そして自身の寝転がるベットのみが設置された
何とも質素な部屋で、やや小さめな窓からは大雪が降り注ぐのが見えた。
数十秒たって今度部屋に入ってきたのは
栗色の髪を横でまとめた糸目の男、その後ろに真っ白な服に対照的な黒の髪、バッテンマスクの男。
そのさらに後ろには先ほどの彼がおり、少々気まずそうに部屋の中にいるのが見てとれた。
os「はじめまして、オスマンです〜。世界中を巡って翻訳家してます。」
ht「ひとらんらん。長いからひとらんでいいよ。オスマンの護衛してます。」
os「で、こっちがトントンね。会話は出来ないだろうから俺かひとらん通したら話せるで。」
gr「…グルッペンだ。此処は、どこだ?」
ht「ドイツ南部のシュヴァルツヴァルトの山奥。」
gr「何故トントンの言葉がお前らには分かるんだ?」
os「翻訳家だから。」
ht「その護衛だから。」
os「何があったんかは知らんけど、ドイツの軍人さんやろ?
此処にはそう人は来うへんし、ゆっくり休んだら?
俺らは雪止んだらまた旅始めるからトントンと2人で。」
無責任ではあるが事実そうしなければいけない体ではあった。
言語の通じない彼、基トントンとどう過ごせというのか
漠然とした不安は降り続ける雪に埋もれ続ける。
ー
おまけ
gr「何でソヴィエトの軍服を着てるんだ?そこの人間じゃないだろ?」
os「たまたま持ってたから。」
gr「本当に翻訳家か…?」
os「人には秘密の一つや二つはあるで。」