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アリシアが血を吐き、限界に近づいていたその瞬間、戦場が揺れ動く。眼前で、空気が変質し、間近で迫るのを感じた。
そのとき、伏黒がアリシアを抱えながらも目を見開いた。
「…っ!」
その直後、アリシアの周囲に不思議なエネルギーが渦巻き、まるで何かが彼女を守るかのように、強烈な気配が漂い始めた。
次の瞬間、空間に亀裂が走り、巨大な結界が展開される。それはまさに、婆の領域だった。
婆の姿がその領域内に現れる。彼女の存在は、まるで古き時代から来たかのような神秘的な雰囲気を漂わせ、目にした者はその強大な気配に圧倒されるだろう。
「さあ、やっと来たか…。」
婆はまるで長年の眠りから目覚めたかのように、静かに、しかし確固たる力強さで言った。その背後には無数の呪具が揺れ、周囲の気温が急激に下がっていく。
「私はこの戦場の“秩序”を乱す者を許さない。」
婆が言葉を放つと、その場にいないはずの影が次々と現れる。彼女の術式が発動された瞬間、全体がその影響を受け、ひとたびその影に触れると、時間や空間の流れが歪むような錯覚を与える。
婆の術式、「grへファイSDフェ」が発動する。この術式は、時空を操り、領域においてはその影響を極限まで増幅させる。
空間内に流れる時の理論を無視するような強力な力が渦巻き、敵を封じ込め、あるいは予測できない方向へと導く。
「私の術式の影響を受ける者は、確実にその運命を変えられる…」
婆の手から放たれた力が、アリシアを包み込み、まるで時間の流れが逆行するかのように、アリシアの体に作用し始めた。
血を吐き、命の危機にあったアリシアは、突然その命の危険から解放されるような感覚を覚える。
しかし、術式は決して無敵ではない。展開した領域は、アリシアだけでなく、周囲の状況にも影響を及ぼしていた。
「grへファイSDフェ」の効果は、アリシアの命を一時的に繋ぐだけでなく、周囲の空間にも深刻な歪みをもたらした。
婆の領域は、時間を超越し、空間をねじ曲げ、戦場の状況を完全に一変させる力を持つ。
しかし、それは完全な支配力ではない。「力の濃度」によって、影響を受ける範囲や強度が変わり、バランスが崩れつつあった。
「動け、今だ!」
伏黒恵はアリシアを抱きかかえ、領域から離れようとするが、領域内で急激に空間が歪んでいるため、足元がふらつく。
「無駄だ、少年…私の領域内では、時間がいくらでも歪む…」
婆は冷徹に言った。だがその言葉には、彼女自身がまだ完全にコントロールしきれていない不安定な部分も含まれていた。
「アリシア…!」
伏黒は必死にアリシアを抱え、婆の領域を突破しようとする。だが、アリシアの体はまだ完全に回復していない。
血を吐きながらも、彼女はその意識をわずかに取り戻していた。
「伏黒…行って…!」
アリシアは力なく言ったが、彼女の目にはまだ希望の光が見えた。その一瞬、伏黒はアリシアに向かって強く頷く。
「必ず助ける。」
その言葉が、婆の領域内でどれだけ響いたかは分からない。しかし、その瞬間、戦場の空気が変わった。
宿儺がその場に姿を現し、オガミ婆の領域に足を踏み入れた瞬間、戦局は更なる混乱を迎える。