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伊波ライ、メカニックヒーロー。俺は主に機械を作る、メンテナンスをする、みんなからの意見を聞いて改良する、など。俺の所属するヒーローチームディティカは西の国で戦っていて、だいぶ昔の風習が残っている国だった。元々東の国で育った身だったから、村や神社、生贄等の教科書か漫画でしか聞かない単語を耳にしてよく怯えていた。まぁ、ディティカに入って最初は全てが最悪だった。特に、カゲツと。


「今日からディティカに所属します!伊波ライです!!主に機械を使ってみんなのサポートをしていきたいと思います!よろしくお願いしますっ!!」

初めての国、初めてましての人達、これから末永くやっていく彼らとどんな思い出を作れるのかとワクワクしていた。が、現実はそう甘くない。

「……ん、よろ」

「いいですね〜機械、こっちの国には無いんですよ精密機器って」

「はっ、機械やって??そんなもん使わないとやっていけないとか雑魚すぎやろ!」

小柳はやっぱりという程冷たくあしらった。まるでこっちを気にせずにやっていくような、人を絶対に寄せ付けないような、高潔なオーラが出ていて少し怖かった記憶がある。

星導はディティカの中じゃ全然愛想のいい方だったが、笑ったときの瞳の奥底で何を考えて何を思っているのか、とにかく怪しいやつだなとしか思うことが出来なかった。

最後のカゲツは多分、今までで1番最悪な出会い。今だとカゲツがなんであんな風に言ったかわかる。でも当時の俺は彼のことを考える理性を持ち合わせていなかった。何せ自分が人生をかけて熱中し、それで人助けができるというのに雑魚だと言われたこと。これがすごく頭に来た。

「お前…っ、なんでそんなこと言えんだよ!!こっちの苦労も知らないで、よく雑魚とか言えんな!!!」

「だって、機械でお前はヒーローに合格したんやろ?そしたら必要なのはお前やなくて機械や。せやろ?」

「こんっっ…の……!!!!」

「おい、お前らうるせぇ喧嘩すんな」

「まぁまぁ、これからやっていく味方なんですから仲良くしましょうよ」

星導と小柳に止められ、やっと熱に膜が貼られた。俺大人だから仲直りの言葉でも交わしてやろうか、なんて思いながらふと彼を見ると、なんとも綺麗なオッドアイだった。イラついてちゃんと顔を見れてなかったから、その衝撃は今でも覚えている。本当に宝石のような、綺麗な目だった。

「……何ジロジロ見とんねん、喧嘩売っとんのか?勝てないくせに??」

でもその言葉で全て吹っ飛んだ。ちゃんと喧嘩した。


次に覚えている記憶が…、いつだっけな、どっか強い敵が現れた時に俺とカゲツで対処しろと指示された記憶。あれも中々に最悪だった。

「は!?俺とカゲツ!?なんでだよ!!」

「上からの指示は絶対や。せいぜい足引っ張らんことをきばり」

「くっっっそ…」

重量パワー系の俺とスピード暗殺系のカゲツ。ピースが上手くハマれば最高なんだろうが、このときはまだ打ち解けることができずにピースの位置がぐちゃぐちゃのまま戦いに挑んでいた。俺とカゲツの歯車はとんでもなく複雑なようで、お互いにプライドも高く、相手に合わせる気すら無かった。でも、結構いいところまでいっていた。カゲツが軽く傷をつけ、その傷の修復をしている敵が鈍くなるから俺がその間にハンマーで叩く。それでだんだんと敵を押していった。多分、カゲツも思ったんだろうけど「相性いいかもな」なんて1ミリだけ考えながら戦った。

でも、最後。ほんの最後だけで、俺とカゲツの仲は繋げることが極めて難しい崖となった。

(よし、このままならいけるぞ…っ!!)

トドメを刺すなら大胆に、これはヒーローになる前からずっと憧れていた。かっこよく敵を倒して、味方と喜んで、市民からも拍手喝采。どんどん電気を貯めて、ここだというときに振り下ろす。はずだった。俺がハンマーをあげすぎて、後ろへと体重がかかってしまったのだ。その結果、最悪なことにカゲツの思い入れがあった場所へとハンマーを振りかざすことになったのだ。


「ねぇ、カゲツ待って!俺はわざとしたわけじゃ…っ」

「煩い!!」

ボロボロに焼けた地を見て、カゲツが声を荒らげた。

「だから…、俺は機械なんて嫌なんや……っ」

涙ぐんで走り去るカゲツを俺は追いかけることができず、ただ焼けた地を見て立ちすくむことしかできなかった。

後に聞いた話じゃ、カゲツの家は凄く厳しかったよう。忍者の家系は本当に苦しいらしい。兄弟の中で殺し合いをして本当に才能のある者だけが残る、機械なんてものは無い、ただの生身で走って動いて飛んで殺して。そんな中でも、ここの小さい蔵でお菓子を食べたり、蹴鞠をして遊んだり、木を登ったり…。忍者の家にいるとできない、年相応のことをして遊んでいたという。俺はそれを聞いて涙が止まらなかった。

実は分かっていた。まだ俺はこの技を使えるほど強くないと。失敗する確率のほうが高いと。少しでも間違えたら電力はそこらじゅうの家に高速で流れ、それに耐えきれず爆発するかもしれないということも。でも主人公気取ってできないことを本番でぶっつけた。練習でできないことは本番でもできるわけが無い。なんなら、味方の思い入れの地を壊してしまった。謝って済むわけがない、これは修復できない。そう思った。

でもその前に、言おうと思った言葉があった。



「カゲツ!!」

「……なんや今更、謝りにでも来たんか…」

「おれ、カゲツの目が好き!!」

「……は、?」

「謝っても許されないなんて分かってる、もう一生恨まれても俺は構わないよ、でも」

「おれ、カゲツを初めて見た時から、目が綺麗で、美しいなって思ってた、」

「…こんなこと言ってごめん、謝れないからこんなこと……」

「あっはは!!なんやそれ!!」

「おもろいなぁお前、謝っても許されないから褒めに来たんか、!?逆効果やろ!!」

しゃんしゃんと、キラキラ輝く笑顔を見せてくれた。初めて。なんで、どこにツボを見出したのかもわからない、わからないけど。

すごく可愛くて仕方なかった。




「それから俺ら、めっちゃ色んなことしたよね」

「せやなぁ」

「ヒーロー活動もだんだん合うようになってきて、話もできるようになって、外に遊びに行くようにもなってさ」

「そやそや、色んなとこ行ったよな」

「ふたりで旅行とか、新婚かよとか話して、」

「うん」

「初めてキスしても、カゲツ嫌がらなかったよね、」

「そやなぁ、ライとするん嫌やなかったわ」

「じゃあ、どうして……っ」

「…すまんな、ライ、これは家の都合でしゃーない話や。代々僕ん家と相手ん家で婚約するんが決まっとるんよ」

「今からでも遅くないよ、駆け落ちしようよ、」

「んーん、無理や」

「ねぇかげつ、俺のこの気持ちはどうしたらいいの、どこに発散させばいいの……」

「……ライ、」

「っ…へ、」

ちゅっ

「……これが最後の口付けや、ちゃんと切り替えられるな?」

「っ……、」

「ごめんなぁ、ライ、僕もライとずっと一緒にいたかったよ…、」

『叢雲様、始まります。そろそろご準備を』

「ん、わかった、」


「……ライ?」

「なぁに、カゲツ」

「俺もライの目、大好きやで」


「……ありがと」

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