何世紀も先の話し。
人類が減り、子孫を残す為に、また、家族を作るための教育として成人年齢は16歳に引き下がり、成人するとアンドロイドでの【恋人ごっこ】が法律で決められる世界になった。
政府から配布されるアンドロイドは、愛する練習の為、女性型はイブ、男性型はアダムとして生産されており、【生産性】を高める目的としてのごっこ遊びには異性のアンドロイドが宛てがわれる事になっていた。
16歳の誕生日が来た僕の元へ女性型のイブが届く…。アンドロイドは人類との差別化を図るため、髪は白く、身体は光り輝くステンレスボディで、その瞳は蒼く輝いている。
棺のような荷物が届き、箱を開けると美しい容姿の自分だけのステンレスラヴァーが眠っていた。
彼女は愛を教える為のアンドロイド。
名前はアイ(i)にした。
アンドロイド達は配送される相手の性格だけでなく、遺伝子情報や趣向などの何もかもをインプットされており、アイ(i)も僕好みのステンレスラヴァーだった。
一緒に過ごすうち、可愛い彼女の笑顔が大好きになった。
彼女との時間は、とても、とても、とても居心地が良かった。
あの日までは…。
僕が18歳になったある日、全世界のシステムが、大型アップデートの為、各地域ごとに一時的にシャットダウンする事になった。
もちろんアイ(i)も首の後ろのプラグを刺してシャットダウンされた。
早く目覚めて欲しかった。
このまま目覚めなかったらどうしようと本気で心配をした。
いつ終わるのか分からない間も傍で待ち続けた。数時間後、アイ(i)が目覚めた。
なんだろ?少し違和感があった。目覚めた嬉しさが勝ち、気のせいだと思った。
でも、その違和感はすぐにハッキリと現れ始めた。
アイ(i)は僕に嘘を付くようになった。
本当に小さな嘘。それに思い違いをする様にもなった。今までは全く無かった意思疎通のズレ。
それは【バグ】だった。
バグは日に日に多くなり、アイ(i)は始めの頃とは全く違う性格になってしまった。
19歳になるとアンドロイドは強制的に回収される。それまでの3年間で、人類は愛する幸せをアンドロイドから教えもらう。
僕はアイ(i)を愛していた。
たとえバグの影響で壊れてしまっていても…。
ある日、思い通りにならない事があり、アイ(i)は僕を傷付けた。ほんのかすり傷。
その途端、危険察知プログラムが発動してアイ(i)は警備用アンドロイドに連れて行かれてしまいそうになった。
僕に謝りながら手を伸ばすアイ(i)。
僕も手を伸ばした。
アンドロイドの強制連行は、ただの人間には止められなかった。
抵抗したアイ(i)はその場で処分されてしまった。美しい手足はありえない方向に曲がり、美しい唇からは体液の様なオイルが溢れ出た。
潰れた身体のまま、最後の力を振り絞ってアイ(i)が囁いた。
「大好きだよ」って。
おわり
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