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それでもいいから…

40 - 第40話 それでもいいから…

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2024年10月25日

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篠崎さんのことが好きでもいい。



他に好きな相手ができたのでもいい。



後輩として。



部下として。



それでもいいから…。



そばにいて、いいですか?





林に送ってもらい、展示場でキャデラックに乗り換えると、紫雨はふうと息を吐き、シートに凭れかかりながら、車を発進させた。



林は白根と付き合っていなかった。



その事実が、どうしてこんなに自分の胸を熱くすのか、よくわからなかった。


(……絆された?まさか。俺が?あんな仏頂面の可愛くないクソガキに?)


それどころか、白根に告白されたのに、流されそうになったのに、勃たなかったとまで言っていた。


自分に対してはあんなに興奮し、欲望の限りをぶつけてきたのに。


(そうだよ。おい思い出せ、アイツ鬼畜だったじゃないか。好き勝手犯しやがって、アイツが一番恐ろしいんだって。思い出せよ)



自分に忠告し、自分を説得する。それでも胸を襲う息苦しさが収まらない。



一人暮らしを始めていた。


あんなに―――あんなに紫雨のマンションの近くに部屋を借りて……。


(もしかして、俺を守ろうと……?)


自分に都合のいい状況に、さらに都合のいい解釈が追い打ちをかける。


(……期待すんなって。自分の20代半ばを思い出してみろよ。移り気で遊び盛りで――――)


「あ」


紫雨は口を開けた。


(……いや、んなこともねーな…)


自分の20代なんて、全てあの男で覆いつくされていた。


寝ても冷めても昼間も夜も、就業中も休みの日も、誰といても誰と話しても、誰とキスしても誰を抱いても抱かれても――――。


篠崎岬のことしか、考えていなかった。



もし林が、あの時のような熱量で、自分を想ってくれていたなら――――。


和室で求められるままに合わせた、あの熱い唇を思い出す。



「……………」


ふと思いついて、画像フォルダを漁る。

先ほど林に見せた、背筋を丸めてドリップコーヒーを淹れる篠崎の後ろ姿を見る。


この画像フォルダでさえ、撮るだけ撮って、開いたことなど稀だった。


こんなに抵抗なく開けるようになるとは―――。



「新谷に送っとこ」


紫雨はフフフと笑うと、それを新谷に送った。


「ーーーー」



そして真顔に戻ると、フロントガラスの向こうに聳え立つ、自分のマンションを見上げた。



あの男が待つ、巨大な檻を――――。



今すぐ、篠崎を忘れられなくても。


今すぐ、岩瀬から逃げられなかったとしても、


それでもいいから、と



先輩としてではなく、


上司としてでもなく、



俺のことを好きでいてくれるんだろうか。



それでもいいから…

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