※カップリング要素(赤水)、関係操作、死ネタ有
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赤side
「ね、なに読んでんの!」
「うわぁっ!?」
スマホで調べものをしていると、
必ず後ろから「どうしたの」と覗く癖のある恋人。
無邪気に俺の方へ走ってくる仕草がかわいくて、彼が機嫌を損ねると知っても尚わざとスマホばかりに視線を向けたこともあった。
「まーたりうちゃん僕に嫌がらせしてるんでしょー!」
「やだなぁ、嫌がらせじゃないよ。」
頬を膨らませこちらを睨むようにしてスマホを取り上げる彼。
ごめんごめん、なんて笑いながら頭を撫でると、
「髪の毛崩れちゃうでしょバカ!」って嬉しそうに笑った。
だけど、そんな思い出はもう遠い日のことになってしまった。
___
これは、君が初めて涙を見せた日のこと。
付き合って初めてのクリスマス。
その日はとても寒くて、
そのぶん外で輝くイルミネーションがとびきり綺麗だった。
写真を撮ったり、買い食いしたり。
言葉では表せないほどに幸せな時間だったのを覚えてる。
時々、
手を握ってみるとお互い顔が熱くなって、「恥ずかしいね」なんて微笑みながら二人でイルミネーションの下を歩いていたんだ。
物事の始まりはたいそう急だった。
プレゼント交換をしよう。そんな俺の提案が、全ての災厄を呼んだ。
「ねぇ、今から勝負しようよ」
「勝負?なんの?」
勝負、なんていうのはただの誤魔化しだった。
本当は、彼とプレゼント交換をしたかっただけ。
だけど、馬鹿正直に「プレゼント交換がしたい」なんて言うのは俺の小さなプライドが許してくれなかった。
どうやら俺は彼の前では少し調子に乗ってしまう性格らしい。
「今から一時間、お互いの喜ぶものを買った方が勝ちっての。どう?」
「…!いいねそれ!!」
目を輝かせプレゼント交換に賛成する姿を見て、
なんだか少し安心する。
無邪気にはしゃぐ顔が好きだ。
きっとプレゼントを渡したら、その場でぴょんと飛び跳ねイルミネーションよりも眩しい笑顔を見せてくれると、そう思っていた。
一時間後、悩みに悩んだ末俺は音楽が好きな彼にオルゴールをプレゼントすることに決めた。
喜んでくれるかな。どんな顔をするのかな。
渡したときの彼の反応を想像しながら待っていたとき
「あっ!りうちゃーん!」
横断歩道の奥から俺を見つけ嬉しそうに手を振り、走ってくる。
あぁやっときた。さぁ今からプレゼント交換だ。
楽しみな気持ちが最高潮に達したそのとき。
「___ッ!?いむ、待ってッッ!!」
「へ?なん___」
ドン、と鈍い音が響き渡った。
事故だ。
クリスマスで気分が上がった酔っぱらいの車だった。
信号を無視して突っ込んできた車に、数人が轢かれた。
その中には、俺の恋人がいた。
“誰か!救急車呼んで!!”
“事故だ!!”
回りの人間の焦る声。
その声を聞いた野次馬の声。
そして、
いつでも元気で明るい、世界一好きな彼の声はその中になかった。
_______
「…あの時りうらがもっと早く気づいてたら、いむは生きてたの?」
暗い病室。
彼と二人きり。
響くのは、俺自身の鼻を啜る声と機械の音だけ。
「りうちゃん」って、あの日俺を呼んだ声は聞こえない。
ただ目を閉じて、ここ数日寝たきりになっている。
「りうらだったらよかったのに。」
全身傷だらけで、痛々しい姿。
どうやらかなり車のスピードがあったようだ。
重症なんだと。
医療に関して知識の全くない俺でも分かるほど、悲惨な姿だった。
「ね、俺の手握ってよ…」
もう三日も触れてないの。
また手を繋ぎたいよ。
「…どうしていむは泣かないの?」
俺は泣いてばかりだった。
今目を覚まさない彼の前で泣いて、いつか告白された日に泣いて。
なのに、いつも君は泣かなかったね。
事故に遭ってボロボロになっても、どれだけ誰かに酷いことを言われても、今思えば彼が俺に涙を見せたことは一度もなかった。
「……?」
ふと、彼に伸ばした手を触られたような気がした。
ベッドの方を見ると、
浅い息で苦しそうに呼吸をしながら俺の手を力なく握っていた。
「いむ…っ!?ぉ、起きたのっ!?」
「……、…」
小さく口を開け、虚ろな目で俺になにかを喋ろうとしている。
頑張ってくれ。頼むから生きてくれ。
ボロボロと涙が溢れてくる。
止まらなかったし、
どうやったってきっと止めることはできなかった。
「……….りう、ちゃ…」
「いむ…っ、ゆっくりでいいよ大丈夫、落ち着いて喋ってね…」
小さな声で必死に喋りかけてくる。
絶対に聞き逃さない。大好きな彼の声を、もう一度聞きたくて。
「…ぼくね…、しんじゃうと…、………おもう…。」
「なんでそんなこと言うんだよ…っ!!絶対に大丈夫、だから…っ!」
「…ね、もうほぼ…痛みがないんだよね。」
「……….たぶん、今日が…最期だとおもう…」
「やだ、嫌だよそんなの…!絶対にいや…!!いむが死んだら俺も死ぬから、ねぇ、だから…っ」
だんだんと涙で目の前が見えなくなっていく。
こんな時にまで泣いていたくない。
せっかく久々にいむが目を開けているのに。
「…んふ…、プライド高いくせに…りうちゃんは泣き虫だね……w」
「なんだよそれ…っ、w」
いつだってそうだ。
彼は俺を笑わせてくれる。
どんなときもその明るい笑顔に励まされてきた。
じゃあ、俺は彼が辛いとき何をしてあげられただろうか?
そう考えたとき、してあげた行動は一つも出てこなかった。
最低だ。何が恋人だ。
ただ一方的に励まされてるくせに、一丁前に態度だけは大きい。
どんどん自分を責めたくなる。
ごめん。俺、なにもできなかったよ。
「……もっとりうちゃんと一緒にいたかったなあ…」
「ぼく、もう…眠いや……」
「っ…..、ぅ…っ」
息を吸うので精一杯だ。
彼はもっと辛いのに。なんで俺ばかりが泣いてるんだろう。
「…ね、りうちゃん」
「……約束、してくれない…?」
「っ、約束…?」
「あのね…、ぼくのこと、忘れないでほしいの…」
約束をしてくれなんて、初めて言われたことだった。
やめてくれよ。これで本当にお別れみたいになっちゃうよ。
しかも、「忘れないで」なんて。
「忘れない、忘れるわけない…っ!世界でたった一人の恋人なんだから…!」
「……….!」
「…よかった、そう言ってくれて。」
少しずつ、目を閉じていく。
恋人とのお別れが、一気に現実なのだと認識する。
「……せかいいち…だいすき…..」
本当に小さな声だった。
機械の音の方が大きくて、耳をすまさないと聞こえないほどに。
でも、絶対に聞き逃さないと決めたから。
彼の最期の言葉を聞けた。本当によかった。
けれど欲を言えば、これから先もたくさんその言葉を伝え合いたかった。
「りうらも大好きだよ、愛してる…っ」
暗い病室。
俺が一人。
さっきの言葉が君に届いたかは分からない。
ただ、
すっかり温もりを感じなくなった彼の目元は涙で潤んでいた。
それは、初めて見た恋人の涙だった。
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ここまでご覧いただきありがとうございました。
操作に慣れておらず一部おかしいと感じる点もあると思いますが、
大目に見ていただけますと幸いです。
誤字脱字があったり、展開に違和感があったりなどは初投稿を言い訳にしておりますので見逃してください…笑
低浮上の可能性が高いですが、これからよろしくお願いします。
(表紙)
コメント
5件
書き方ちょー好きです。これは泣いちゃいますね😭 次回の作品も楽しみにしてます。
これは泣きます😭😭😭 最高ですめっちゃすきです フォローします!!