コメント
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この2人の曖昧な関係性を示した丁寧な描写が素晴らしすぎる✨👏✨👏✨👏✨👏✨👏✨ 大人っぽさもあるけれど、子供っぽさもあって、リアルさがすごい…!!
くぅぅぅぅぅぅぅッ! 続きが気になるッ! 前世の記憶を持つ恋夏さん 彼が何故彼女を56したのか 見どころですねぇ!
やっぱりすき!!愛してる!!!🩷 「みんなみんな私の知らないところへ行っちゃえばいい」って文章だけ少し子供っぽさや無邪気さがが残ってて、他の文の描き方と違って素敵!!✨✨殺人者に恋しちゃうなんて不思議だね!!でも少しわからなくもないなあ
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『 おはよ 』
「 …ん 」
ふさ、と頭の頂点から
耳元にかけて髪の毛を解いていく。
手櫛でも殆ど引っかからないくらい
君の髪の毛は綺麗な茶色で。
「 なぁ 」
『 んー? 』
「 逃げようぜ 」
『 笑、無理だよ 』
『 私運動神経悪いし、迷惑かけ_ 』
逃げる。
そんな選択肢
今までの私なら選べなかった。
逃げても
どうせ、アイツに捕まるだけ。
捕まれば環境がもっと酷くなって
きっと、生きては居られないから。
「 俺が守るし 」
「 ふたりで暮らせばいい 」
薄いレースのカーテンから差し込む
淡い日光を見つめる君は
髪がほんのり金に染まって
顔は光に照らされ見えないけれど。
『 …ふふ、やっぱり 』
嶺央は私の憧れだよ。
そう言ったら君はどんな反応するのかな。
「 恋夏 」
ふと名前を呼ばれて
背中まである髪の毛が宙を舞う。
「 荷造りして、今日の夜出よう 」
この牢屋から逃れるために。
『 …うん、そうしよう 』
過保護で期待しかしないお母さんも
お酒に溺れて殆ど家に居ないお父さんも
みんなみんな
私の知らない所へ行っちゃえばいい。
ぱちり、と音がしそうな程長い睫毛が
茶色く深いその瞳が私のほうに向く。
『 嶺央 』
レオ、そう何度心の中で反芻しただろう。
「 なに、恋夏 」
コナツ、そう呼ばれて
何度記憶の中で蘇らせただろう。
『 愛してる 』
愛なんて柄じゃないけど。
どうしようもなく君が好きで
君となら何処までも行けるって。
荷造りの為のリュックサックには
貯金箱と少し洋服を詰めて
いつしか作った糸電話を君に向けて
『 れ、お 』
君は少し驚いたようにこちらを向いて
にや、と少し笑ってから
「 はぁい 」
いつしかの記憶がフラッシュバックする。
『 荷造りは順調ですか 』
「 割と、そっちは? 」
『 終わったよ 』
恋なんて、柄じゃないけど。
「 恋夏 」
恋する夏、なんて
私の人生そのものじゃないか。
あの夏、数年前の暑いあの日に
君と出会って、君に殺された。
『 ん? 』
「 愛してる 」
『 うん、知ってる 』
君となら何処までも行けるから。
私、君に殺されたんだよ。
って一言零したら
君はどんな反応するのかな。
分からないから、教えてよ。
『 嶺央、私ね 』
「 おう 」
『 何年か前の女子高生殺害事件 』
ぴく、と君の肩が震える。
『 その時、君に殺されたの 』
にこ、と
今まででいちばん綺麗な笑顔を落とす。
水に溶けた絵の具のように
広く淡く、広がってゆく。
「 …なにそれ 」
「 そんな事件初めて聞いたわ 」
その中に黒を一滴落としたら
もう白には戻れない。
君との関係には戻れない。
『 私、前世の記憶あるんだ 』
「 ふは、すげぇな 」
『 どうして、君は私を殺したの? 』
世界が止まった。
君は一呼吸置いてから
「 …お前が 」
そう、色とりどりの
アクリル絵の具を落とし始めた。
→→→→→ つづく