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今日は昼頃から俺の部屋でのんびりとした時間を過ごしている。
暑い日でも暖かい飲み物が好きな都希くんはマグカップの左手で持ちながら反対の手の親指と人差し指でコップの端っこを押さえながらよくフーフーしている。いつも思うけど、これは外でやらせてはいけない。何故ならフーフーしてる姿が可愛いから。
「なぁ、猫舌なのに何で熱いの飲むんだよ。しかも夏なのに。余計熱いだろ。」
「マグカップは暖かい物飲む用でしょ。マグカップも好きだし、暖かいのが好きなの。」
ここに来てまさか、都希くんのよく分からないこだわりが判明した。にしても髪の毛もラフに下ろして耳に掛け直す仕草といい、何でこんなに俺に刺さるのか…。恋ってやつは本当に恐ろしい。
・・・・
都希くんが急に自分の話しをし始めた。
「僕ね、高校の時から4年付き合った人がいたんだ。男の人で初めて好きになった人だったんだけど、それ以来付き合った事が無くて、付き合うってどんな感じなのかな?千景は誰かと付き合った事ある?」
それって兄貴の事じゃんか…。それ以来って。一気にどん底までテンションが下がった。
「付き合った事はあるけど、あんま長続きしくてエッチは誰ともしなかった。都希が始めてだったんだけど…。」
「意外。モテそうなのに。でもそっか、だからあんなだったのか…。ふふふ、ごめん。そんな顔しないで。」
その時ばかりは都希くんを睨んでいたと思う。
普通に悔しい。
「それはそれは、数多くの経験を積んできた都希さんからしたら今でも俺なんて童貞みたいなもんですよね!下手ですみませんね!!」わかってた事だけど、本人から言われるとさすがにプライドが傷付いた。
「千景はエッチ上手だよ。ちゃんと気持ち良いし。」
ソッポを向いて拗ねていると都希くんがそんな事をぶっ込んで来たから、これからの1日をベッドの上だけで終わらせてやろうかと本気でよぎった。
俺が悶々した気持ちと戦っていると都希くんが提案をして来た。
「じゃあ、今日一日、初めて付き合ったって提で過ごすのはどう?僕たちもたまには刺激が必要だと思って。」今日イチの笑顔が眩しい。目が潰れちまう。
いや、でも都希さん、それって確かどこぞの雑誌で読んだけど、倦怠期カップルが初心を思い出す為にやるやつじゃないんすか?と言いそうになったけど黙っておいた。とにかくとんでもない小悪魔だ。
・・・・
「じゃあ、まずは告白から始めよう。」
「それ付き合う前からのやつじゃん!」
「だってやって欲しいんだもん。呼び方も付き合う前だからちょっと変えなきゃね。何が良い?」ハキハキ話しているし、すごく楽しそうだ。
「……都希くん?」久しぶりにそう言葉にすると恥ずかしい。
「良い感じ。じゃあ、僕は千景くんかな。」
俺が照れてると「さぁ、どうぞ。」と、催促し始めた。
「お、俺が告るのぉ〜?!」
「うん。そうだよ。でも嫌だよね…やっぱ、セフレ相手じゃこんな遊び楽しくないか…。嫌ならやっぱやめようか。」
「いや、する。告ります…。」
チラッと都希くんを見るとニコニコしている。見えない圧とウキウキしている空気感。仕方ない。今日はそういう遊びに付き合うか…。
改めて向かい合うと緊張する。ここは本気でいかねば!あわよくばそのまま…。
「つ、都希くん。昔からずっと好きだったんだ。俺と付き合って下さい。」
ハッキリ言って告白はされた事しか無い。今のが正真正銘の初告白だった。頑張って告白すると都希くんは俯いていた。
「あれ?俺フラれた?」
俯いている都希くんの肩が揺れている。
「おい、笑うな。」
そう言うと、顔を上げた都希くんは笑いを堪えた様な涙目で笑っていた。
「…次、都希くんの番ですよ。」
「はい。」
そう返事をすると改まった顔でこちらを向いている。
「…千景くん、ずっと君が僕を好きなの知ってたよ。だから僕もちゃんと言うね。千景くんが大好きだよ。僕が死ぬまでずっと一緒にいて下さい。」
こ、これはごっこ遊びだ。泣く訳にはいかない、耐えろ。耐えろ。耐えられない…無理だ。耐えられる訳が無い。
勢いよく立ち上がって「トイレ!!」と、だけ言ってその場から逃げた。嬉しくてトイレに駆け込んでから涙が止まらない。
少しすると「千景くん?僕、フラれたみたいなんですけど、恋人ごっこ終わりにする?」
また勢いよくトイレから出て、都希くんの前に座り直した。「手洗わないの?」「出なかった!」「いや、でも…」「もう、手洗いはいーから!!…やっぱ洗ってくる。」洗ってから再度座り直し、「宜しくお願いします。」と言って手を差し出した。
「こちらこそ。」そう言うと都希くんは俺の胸の中に飛び込んで来た。
これが遊びじゃなかったら…そんな事を思いながらも、幸せ過ぎてすでに供給過多になっているのにこの先メンタルが持つのか不安になった。
・・・・
「付き合ったら何したい?エッチ以外で。」
「とにかく一緒にいたい。もうずっとくっついてたい。…です。」
「じゃあ、今日は贅沢してご飯も配達してもらって、ずっとお家デートしようか。千景の卒アルとか無いの?」
「あるけど、高校の時のしかない…。」それ以前は離婚前の苗字だから見せられない。
「見たい。見ても良い?」
「う、うん。しまってあるから、ちょっと待ってて。」
「はーい。」言われるがままにクローゼットの中にある卒アルを引っ張り出してきた。
『大丈夫…だよな。ちょっと確認しとくか。あー…、ちょっとこれは…。』
俺を待っている間スマホゲームをしている都希くんの元へ戻ると俺が来たのに気付いてニヤつきながら無言で片手を差し出してきた。都希くんのその顔は初めてだ。
「どーぞ。」そう言って渡すと、「本当に持ってきた。」と言って笑っている。
俺が座ると都希くんはその前にちょこんと座った。
「さーて千景くんはどこかな?」なんて言いながら楽しんでいる。あー!!もうどうにでもなれ!!
「あ、いた。若い。…ここにもいた。千景くんの高校楽しそうだね。」いよいよ問題のページに近づく。
「…ん?これ文化祭だ。千景くんのクラスは何やったの?…んー??これって…千景?!」
「だぁぁぁー!!もう見ないでぇー!!!」
「あははっ!あーお腹痛い!こんなに笑ったの初めてかも。くっくっくっ。可愛いのに。」
「??!!可愛い??そ、そう?ってか笑い過ぎ!!」
「くっくっくっ、もしかして、これ見られたくなくて怖い顔してたの?」
文化祭のクラスの出し物は女装男装カフェだった。まさかこの黒歴史を好きな人に見られる日が来るとは…屈辱。
「普通に恥ずい。おい、いつまで笑ってんだよ。」
その後もなんて事無い会話を都希くんと沢山した。
お互い何が好きとか、休みの日は何をしているとか、仕事の話しとか…。
夜ご飯も一緒に決めて、お互いにおすすめの物を交換して食べた。都希くんのおすすめは野菜多めの具沢山なサンドイッチ。いつもは何にも言わないから知らなかったけど、草食動物かと思った。しかも交換したものの、都希くんは少食で、俺がおすすめした丼ものは量が多過ぎて結局俺が殆ど食べた。
「よく食べるねー。」と、感心していた。
・・・・
都希くんと過ごした時間は楽しくて暖かくて、ずっとこのまま時間が続いて欲しかった。俺のこの気持ちはいつ伝えよう…。
布団の中に入ると都希くんがくっついて来た。
「エッチしないのか?」
「今日はしなくていいよ…ずっとこのままで。」
「そうだな。」
寝る時間になったけど、今夜は何もしないでお互いをただ抱きしめ合って眠った。