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――ピーッ、ピーッ、ピーッ。
館内放送が船内に鳴り響く。
スピーカーから流れるのは、不快なほど機械的な女の声だった。
『乗客の皆様へ、ご案内です。船内での殺し合いは推奨しておりません。しかし、止める権利もございません。お好きに。』
主が呆れた顔で天井を見上げる。
「……何、この船……。」
バルドは腕を組み、ボソリと呟いた。
「どうやら、俺たちが乗ったのは地獄行きの船だったらしいな。」
詩音はニヤニヤと笑いながら、館内放送に向かって中指を立てる。
「おーおー、こりゃ親切なアナウンスだこと。じゃあ、遠慮なく続けさせてもらおうかねぇ!」
彼女は血走った目で、バルドと主を交互に見やる。
「こっちはブースター全開! 二人まとめてぶっ倒してやるよォ!!!」
――だが、その瞬間、館内放送が再び響く。
『ああ、それと追記です。詩音様、あなたの残りの薬は、現在”没収”されました。』
「……は?」
詩音の動きがピタリと止まる。
『補充は、ありません。あしからず。』
スピーカーが沈黙すると同時に、詩音の顔から一気に血の気が引いた。
「……ふざけんなよ……。」
彼女はポケットを漁る。もう一度、もう一度――
だが、どこにもない。
「なぁ……ウソだろ……?」
手が震え、冷や汗が背中を伝う。
ブースターの効果が切れた瞬間、彼女の体はただの”雑魚”になる。
バルドは戦斧を肩に担ぎ、フッと笑った。
「さて、どうする? ‘最強’さんよ。」
主もまた、絵筆を構える。
「……今度は、幻じゃないよ。」
詩音の全身が、絶望に包まれる――。