「おやおや、可哀想に。」
葵の声が、不気味なほど優しく響いた。
詩音がギリっと歯を食いしばると、葵はクスクスと笑う。
「ねぇ、詩音ちゃん。君、薬がないと戦えないんでしょ?」
「……テメェ、煽ってんのか?」
詩音は荒い息を吐きながら睨みつける。
葵は肩をすくめ、悠然とした笑みを崩さない。
「いーえ?」
スッ――
彼女の手が宙を滑ると、次の瞬間、詩音の前に小瓶が現れた。
それは彼女が何度も使ったことのある、“いつもの”薬。
「ほら、お望みのものだよ?」
詩音は一瞬動きを止めた。
だが、即座に警戒の色を滲ませる。
「……幻じゃねぇのか?」
「さぁ?」
葵は悪戯っぽく笑う。
「飲んでみたら?」
詩音の喉が、ゴクリと鳴る。
目の前にあるのは、喉から手が出るほど欲しかったもの。
けれど、これは”敵”が差し出したものだ。
……もしこれが幻だったら?
……もしこれが毒だったら?
詩音は自分の手を握りしめた。
指先が震えている。
「クソッ……!!」
だが、その一瞬の迷いが命取りだった。
――ザンッ!!
詩音の背後で、バルドの戦斧が唸る。
「遅ぇよ。」
ガァンッ!!
詩音は吹き飛ばされ、床を転がった。
「ぐっ……!!!」
薬の小瓶は宙を舞い、カラン、と冷たい音を立てて床に転がる。
葵は楽しげに笑いながら、ゆっくりと詩音に近づいた。
「あらら、拾わなくていいの?」
詩音は、よろめきながらも立ち上がる。
その目は血走り、息は荒く、顔は怒りで歪んでいた。
「……テメェ、私を弄んでんのか……?」
葵は、楽しそうにニヤリと笑う。
「まさかぁ。私はただ、面白いものが見たくてね。」
「……ふざけんな!!!」
詩音が吠えた。
そして、転がった小瓶に飛びつこうとする――
しかし、その瞬間、
「燃ゆる法灯、偽神の血にて濡れ、断罪の夜を照らせ。」
主の詠唱が響いた。
絵筆が宙を走り、真紅の炎が薬の小瓶を飲み込む。
ボゥッッ!!
「――!?」
詩音の目の前で、薬が灰と化す。
彼女の顔が、絶望で歪んだ。
「お前ら……ぶっ殺してやる……!!」
だが、葵は相変わらず笑っていた。
詩音の怒りを見て、楽しそうに口元を歪める。
「やっぱり君、最高に面白いよ。」
そう言いながら、彼女は双剣を抜いた――。
コメント
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米炊いてる間に神回が投稿されてた…!!!✨今回もマジ最高です!!!イラスト描くかもです!!!!
今回も神ってましたぁぁぁ!!! オーマイゴッド、、、おクスリ無いねぇ、、どうする誌音たぁぁん!!!!? とりま暴れとこう!!!それがいい!!(??) いやでもクスリ無かったらただのクソ雑魚だしな、、どうする?() 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいぃ!!!!!