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羽京の失恋
千空は、ゲンのことが好きだ
見てて分かる。千空の視線はいつもゲンに向いてる
多分本人は無自覚なんだろうけど周りからはもうバレバレだった
ゲンはそれに気づいてない。でも、千空に少し気があるみたい
「羽京、なんか聞こえたか」
「いや…何も聞こえないね、だから安心してて大丈夫だよ」
「そうか」
「……ねえ、千空」
「あ?」
聞いていいのだろうか
これでもし、千空がゲンのことが好きって確定してしまったら?
……嫉妬、するのかな。僕は、
(こんな感情を千空に抱くなんてね…)
一方的な僕の気持ちだから…伝えたらきっと、千空は離れてしまうだろう
「千空って、ゲンのこと好きでしょ」
「……」
耳が赤くなった、当たりだ
……好きなんだ、本当に
「ふふ、バレバレだよ」
「……あ゙ー…そうかよ…」
「告白とかしないの?」
「…したところで、アイツが俺に対してどう思ってんのか分かんねえからな」
「最悪、俺から離れていくかもしれねえ…」
「そうかな?ゲンのことだし、受け入れてくれそうだけどね」
「あの女好きでハーレム作りたい〜とか言ってた変態野郎だぞ?男同士の恋愛なんざ、1ミリも…」
「……」
「…千空?」
「……なんでもねえ」
「…泣いてるの?」
「……泣いてねえ」
…嘘だ。
千空の声色が、声が少し震えてる
僕の耳を誤魔化せるはずが無い
……そっか
千空も、僕と同じなんだ
お互い好きな人がいるけど、離れてしまうのが怖くて、気持ちを伝えられない
今千空を抱きしめたら、どんな反応をするんだろう
「大丈夫、大丈夫だよ」って、伝えたら千空は落ち着くのかな
……僕には、嫌なモヤモヤが残ったまま
「……千空…」
「……」
僕に背を向けたまま、千空は動かない
…少し、少しだけなら
「………おい、羽京」
「……なんのつもりだ」
「別に…慰めてるだけだよ」
「要らねえ、離れろ」
「僕は大人だよ?たまには甘えていいんだよ」
「……僕なら、千空から離れないから」
「……」
僕にしちゃえばいいのに
僕にすれば、千空をずっと愛せるし、1人になんかしない
……でも、それはゲンも同じなのかな
包容力はゲンの方がある
子供たちもゲンのことが大好きだ
……駄目だ、僕は何一つ、ゲンに勝るものが無い
千空は僕のことは好きではない、気になってもいない
「……誰にも言うなよ」
「言わないよ、2人だけの秘密にしよう」
千空がゆっくり振り向いて僕を抱きしめ返す
これは、好きで抱きしめてるんじゃない
甘えだ。
「ゲンは、千空のこと…結構、好きだと思うよ」
「千空といる時のゲン、すごい楽しそうだから」
「だから………大丈夫、だよ」
千空の運命の人は僕じゃない
僕じゃなかったんだ
僕の赤い糸は千空の目の前で切れたまま、一生結ばれることは無い
だけど今……今、ここでだけは
彼を、精一杯抱きしめていいよね