翌日、約束通り佐野くんとランチに行くことになった。お昼休み、クラスメートたちが楽しそうに話す中、小夏は佐野くんと待ち合わせの場所に向かった。少しドキドキしながらも、彼と二人きりで過ごす時間が楽しみだった。
「お前、ちゃんとお弁当持ってきたんか?」
ランチの場所に着いた佐野くんは、軽く笑いながらそう言った。
「うん、もちろん!今日も母さんが作ってくれたんやけど、どうかな?」
「見せてみろよ。」
小夏は恥ずかしさを隠しながら、お弁当を取り出して差し出すと、佐野くんはしばらくその内容をじっと見てから、頷いた。
「お前ん家、ほんまに料理うまいな。」
その一言が、何だか嬉しくて、小夏は照れながらも少しだけ嬉しそうに笑った。
「ありがとう。佐野くんは、お昼はどうしてるん?」
「特に決まってないな。今日は、適当にコンビニで買うつもりやけど。」
「そんなことしてたら、栄養偏らへん?」
「大丈夫、大丈夫。たまにはいいやろ。」
佐野くんは軽く肩をすくめると、その後、サラダを食べながら話を続けた。
「でも、こうやってお前と話すの、ちょっと新鮮やな。」
その言葉に小夏は少し驚きながらも、心の中で何か温かいものを感じた。
「新鮮って、どういう意味?」
「普段、あんまりこうやって誰かと食事することないからな。」
「へぇ、そうなんや。じゃあ、うちと一緒にいるのって、気楽ってこと?」
「うーん、そうやな。」
佐野くんは少し照れたように目を逸らしてから、ふと真剣な顔になった。
「でも、無理して楽しいフリしなくてもいいからな。お前、そのままでいて欲しいって思う。」
その言葉が、まるで心に直接響くようで、小夏は何も言えなくなった。
「…ありがとう。」
精一杯の声で答えたものの、内心ではどこか恥ずかしさと嬉しさが交錯していた。
ランチ後、二人はまた一緒に教室に戻ることになった。途中、小夏がつい口を滑らせた。
「佐野くん、意外と優しいな。」
「なんで?」
「なんか、ちゃんと気を使ってくれるし…。」
「別に、当たり前やろ。」
「ほんまに?」
「うん、誰にでも気を使ってるわけじゃないけど、気にしてる人にはちょっとだけは。」
その言葉を聞いて、小夏は少し照れくさそうに歩きながら、思わず目を合わせてしまった。
「それって、うちに気を使ってるってこと?」
「あぁ、まぁ。」
「…ありがとう。」
小夏はその答えに、嬉しくて、でも少し照れてしまった。だんだんと、佐野くんの優しさが自分の中で大きくなっていくのを感じていた。
その日の夜、小夏はまた奈子にLINEを送った。
**小夏**:「今日、佐野くんとランチ行ったけど、なんか…ちょっと気になることが増えた。」
**奈子**:「おおっ、何があったん?」
**小夏**:「佐野くん、意外と優しいなって思って…。でも、なんかそれ以上に気になることがある気がして。」
**奈子**:「え、何それ!もしかして、佐野くん、好きなんじゃない?」
**小夏**:「そんなことないって!…多分。」
**奈子**:「でも、なんか絶対そうだよ!だって、ちゃんと気を使ってくれるし、気になるって思ってるってことじゃん!」
**小夏**:「そんなに簡単なことじゃないよ!でも、でも…少しだけ、そうなのかなって思う自分がいる。」
**奈子**:「やっぱり!小夏、恋してんね〜!」
奈子の言葉に、小夏は少しドキドキしていた。自分の気持ちが少しずつ変わってきているのを感じる。けれど、それが何かを確信できるわけではない。でも、佐野くんと過ごす時間が、次第に特別なものになってきているのは確かだった。
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