生きる希望も意味もなく
唯 、何も考えずに座り込む日々
もし白馬の王子様とやらがいるのなら
誰が今の私を助けてくれるだろうか
『 誰か助けてください… 』
そうぼやいては涙を溢す
「 食事だ 」
乱暴に置かれたパン一切れ
虫が乗っている事は日常茶飯事
鉄格子から入る薄汚い空気が私をあおる
食欲もなく嘔吐をする胃はカラカラ
いつ殺されるのだろうか
そんな感情が1日に2、3回ほど頭を過ぎる
恐怖と寒さに毎日震えていた
月光に手を翳す
指の間から差す光に暮れていると
知らぬ男に声をかけられた
驚きの余り声を張り上げる
男は唇に人差し指を置く
姿見は鎧のような物を身につけている
「 君は何か罪を犯したの? 」
唐突にそう問いかけられた
犯していないと言っても信じるはずがない
そう思いながら淡い希望をのせて
『 本当に何もしていないのです… 』
寒さのせいか声が震える
「 俺は本当の事を知ってるよ 」
本当の事…?
男は懐から鍵を出し鉄格子を開けた
「 俺とこっそり逃げようか 」
手を私に差し伸べる
理解に少々時間がかかった
『 逃げるって逃亡ですよ?… 』
小さい声でそう訴えた
そんな事をすれば即打首だ
でも、死刑は既に決まっている
それなら、少しくらい
足掻いてもいいよね
『 私、逃げたいです。
悪いことしてないですから 』
男はニコっとひと笑い
「 そうこなくっちゃ! 」
彼は私の手を優しく包み込んだ
鉄格子を抜けると夜風が私を揺らした
駆けていく後ろ姿に心臓がきゅっとなった
コメント
3件
『 俺とこっそり逃げようか 』 とか刺さる言葉過ぎる この作品だいすき
誰かインスタ繋がりましょうよ