### **「溺愛なんかいりません!」**
**第3話:お小遣い生活と、ドキドキの夜**
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「ほら、半分」
私は母から振り込まれたお小遣いを確認し、琉翔にスマホの画面を見せた。
「マジ」
琉翔は呆れたように笑いながら、私が差し出したお金を受け取る。
「やったね。これで今夜のご飯は豪華にできる」
「割り勘って言ったのお前だからな」
「当然でしょ?」
私は得意げに胸を張った。お小遣いをもらったからって、全部自分で使うのは気が引ける。何より、二人で食べるご飯がちょっと楽しくなりそうな気がして。
「で、何作る?」
「んー……オムライス?」
「お前、ケチャップで変な絵描くだろ」
「え、描いちゃダメ?」
「……好きにしろよ」
琉翔は苦笑しながら、スーパーへ向かう準備を始めた。
—
**◆ 夜ご飯作り、開始!**
「え、ちょっと、琉翔!包丁の使い方雑すぎない!?」
「こんくらい平気だろ」
「いやいやいや、手切るって!!」
琉翔の隣に立ち、思わず手を伸ばす。彼の指を包丁から守るように自分の手で覆った。
……その瞬間、
「……っ」
琉翔がピタッと動きを止めた。
「……え?」
私は不思議に思って彼の顔を見上げると、思いのほか近くにあった琉翔の顔。
「な、何?」
「……いや、お前、急に触るから」
「だ、だって危なかったし!!」
顔が熱い。なんでこんなことでドキドキしてんの、私!?
「……」
琉翔は何も言わずに、じっと私を見ている。
心臓がドクドクとうるさい。
「……と、とりあえず、ご飯作る!!!」
私は慌てて手を離し、フライパンを持ち上げた。
琉翔の視線を意識しすぎて、なぜかオムライスの卵をぐちゃぐちゃにしてしまった。
「お前、そっちの方が危なっかしいけどな」
「うるさい!!」
こうして、なんとか夜ご飯は完成した。
「ほら、琉翔の分」
私はオムライスにケチャップで「バカ」と描いて渡した。 てきとーに。
「お前さぁ……」
琉翔は苦笑しながらスプーンを手に取る。
なんか、こういうの、悪くないかも――。
—
**◆ そして、夜……**
「さて……次のお小遣いタイムだ」
私は布団に座りながら、スマホをいじる。母からは「次はもっと甘えんぼ優月ちゃんが見たいな~」なんてメッセージが来ていた。
おえっ。とりまやべ、
「……琉翔、次どうする?」
「……まだやる気かよ」
琉翔は布団に横になったまま、私をじとっと見つめた。
「だって、お小遣い増えるし」
「まぁ、俺ももらえるなら文句はないけど……」
琉翔は腕を組んで、考えるように視線を天井に向けた。
「……じゃあ、次は“甘えんぼ”らしく、俺の膝枕な」
「は!?」
思わず、変な声が出た。
「写真撮るだけなら、それくらいでいいだろ」
「……」
それくらいって、簡単に言うけど……。
でも、お小遣いのためには仕方ない。
「……わかった」
私はゆっくりと琉翔の隣に座り、ぎこちなく頭を彼の膝の上に乗せる。
「……」
「……」
沈黙が痛い。
琉翔の膝、意外とあったかいし、ちょっと柔らかい。
「ほら、スマホ貸せ」
琉翔が私のスマホを手に取り、カメラを向ける。
パシャッ。
「……これでいいだろ」
「……うん」
私はそっとスマホを受け取り、母に送信した。
**『きゃああああああ!!!次はおでこコツンしてーーー!!』**
ピロンと届いたメッセージを見て、私は絶句した。
「……次、どうする?」
「……寝る!!!!!」
私はスマホを枕の下に押し込み、布団をかぶった。
琉翔の低い笑い声が、耳元で聞こえた気がした。
もう…そういうの、ズルい
(第3話・完)
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