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普段から私は、できるだけ他人のいい面を見るように心がけているつもりだ。


しかし、高原については例外だった。そんな心がけも瞬時に忘れそうになった。


少しくらいはいい所があるのかもしれない――。


そう思ったのは、ほんの何秒か前のことだったが、それを撤回したくなるのは非常に早かった。


高原はわざとらしく大きなため息をついた。壁に寄りかかって頬杖をつき、面倒くさそうな顔つきで私をじっと見た。


「何をしてたか、とか、わざわざ言わないと駄目なわけ?」


「えっ、いや、その……」


私は口ごもった。


この人、いったいなんなんだろう。面倒くさいと思ってるのは私の方よ。話しかけるのをやめようか――。


そうは思ったものの、何かとっかかりはないかと、私は再び助けを求めるように、高原の友達である前田の方に目をやった。


前田は私の視線に気がついた。彼は私の視線の意味をすぐに悟ったらしく、隣の高原をちらりと見やった。ところが、前田は助け舟を出すわけでもなく、私に「ごめんね」とでも言いたげな苦笑を見せたきり、かおりとの会話に戻ってしまった。


あなたの友達でしょっ――。


そう言いたいのを飲み込んだら、口元がぴくりと引きつりそうになった。なんとか表情を取り繕い、一瞬忘れそうになった笑顔をなんとか取り戻す。いったいなんの苦行なのだろうと思いながら、私はぐっとお腹に力を入れると、高原との会話に再び挑んだ。


「えぇと、高原さんと前田さんは、お友達なんですよね?普段からよく一緒に飲んだりするんですか?」


高原はテーブルの上に少し体を乗り出すようにして言った。


「そんなこと聞いて、あなたに何かメリットでもある?」


いや、あの、メリットとかそういうのじゃないんだけど……。


腹が立つ。むっとして反発したくなったが、私は無理やり堅固な笑顔を貼り付けた。


「高校時代からのお友達とかですか?」


「何で答えなきゃなんないの」


「……えぇと」


顔のあちこちがぴくぴくと、再びひきつり始めているのが分かった。それなのに私はまだ、この場の雰囲気を壊したくないと思っていた。


もしかして、質問ばかりされているのが気に入らないのだろうか――。


そう考えて、今度は自分のことを話してみることにした。


「私はかおりと、高校からの友達なんです。最初は互いに合わないと思っていたはずなのに、いつの間にか仲良くなって……」


「へぇ、そう」


彼は抑揚のない声で相槌を打ち、そのまま黙り込んだ。


「……」


会話が広がらないどころか、続かない。すべてばっさりと断ち切られてしまう。


その後も私は高原と、半ば意地で会話らしい会話をしようと試みた。けれど万事が万事その調子で、取り付く島がなかった。会話のキャッチボールには、果てしなく遠いものだった。


私、この人とは初対面のはずだよね。この短時間のうちに、彼に嫌われるようなことを何かしてしまっただろうか――。


そう思って記憶を辿ってみたが、まったく覚えがない。


もしかして、生理的に嫌われているのか……?


ショックではあるが、そんな理由が頭に浮かんでしまった。でも、ここまで拒否されていることから考えると、その可能性がゼロとも言い切れない。そうだとすれば、高原と会話するためにこれ以上努力しても無駄だ。


私はそれほどメンタルが強いわけではない。心が完全に折れてしまう前に、彼とコミュニケーションを取ることは断念した方がよさそうだ。


それに、うっかり忘れそうになっていたが、そもそも今日の飲み会は一応合コンだった。特に重要なしがらみがあるわけではない。繋がりかけた糸を斬るのはとても簡単だ。0.1パーセントの奇跡的な偶然を除いて、今後99.9パーセントの確率で会うことがなさそうな相手ならば、特に。


私はとうとう高原に話しかけるのをやめた。


その後は、飲む、食べるに徹した。お行儀は悪いが壁に体を預けて、間違っても彼の顔が視界に入らないようにと、顔と目線を逸らし続けた。


そうやってじりじりと過ぎて行った飲み放題の90分。


やれやれこれでお開きだ――。


さぁ帰ろう、と私はバッグに手を伸ばした。


ところが、かおりは私の肩に手を置いて言うのだ。


「佳奈、この後カラオケに行こうよ」


「えぇぇぇ……」


私はかなり嫌そうな顔をしたと思うが、それは仕方のないことだ。これほどまでに疲れ、不快感いっぱいの気分になった飲み会の席は、初めてだったのだから。かおりの顔を立てる気持ちもあって、この時間内は我慢していたけれど、もうこれ以上、このメンバーでどこかに行くという流れに乗るのはごめんだった。


ほろ酔い加減のかおりに、私は耳打ちした。


「私はもう帰ってもいいでしょ?前田君と二人でどこかに行ったらいいんじゃない?このままうまく行きそうな感じに見えるし、私がいなくたって大丈夫でしょ?」


「ん~、でも」


と、かおりは唇を尖らせた。


「まだ二人きりはちょっと自信がないっていうか……。ねぇ、カラオケ、佳奈、好きでしょ?行こうよ。高原さんも行くみたいだし」


「いやいやいや……。それなら私は、余計に行きたくないんだけど」


うっかり本音を普通に口に出してしまってから、私は慌てて向かい側の高原の様子を伺った。


前田と話していて、彼の耳に今の私の言葉は聞こえていなかったようだ。


「そんなこと言わないで、お願い!」


かおりは拝むように私に向かって両手を合わせる。


「やめてよ」


そう言いながら私は苦笑を浮かべる。


「……じゃあ、次の店で最後だからね。その後は私、絶対に帰るからね」


「分かった!恩に着る!」


ぱあっと満面の笑みを浮かべるかおりに、私は脱力しながら付け加えるように小声で言った。


「それから、今後このメンバーでの飲み会には、絶対に行かないからね」


「えっ、どうして?」


かおりは心底理由が分からないという顔をした。私と高原がどんな会話をしていたのか知らないのだから、そんな反応も仕方がない。


「どうしても」


後日じっくりと説明しよう。どれだけ不愉快な時間だったのかを。


「ふぅん……?」


かおりは首を傾げて私の顔をしげしげと見たが、何を納得したのか一つ頷くと私の肩をぽんっと叩いた。


「ま、とりあえず、行こっか」


そう言うかおりのご機嫌な顔を見ながら、私はふうっと小さなため息をついた。

純愛以上、溺愛以上~無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

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