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「 …? 」
少し騒がしい室内で、エリック王子とリメンバーが話していた。
何故かリメンバーは怒っている様にも見える。
「 …嗚呼アリエル、起きたのか 」
「 ( 何かあったんですか、? ) 」
「 …人魚が打ち上げられた。 」
「 !! 」
「 ッ、それはどんな人魚なのかと聞いているんですッ 」
声を荒らげるリメンバーは、人魚に何か思い入れが有るのだろうか。
「 すまない、秘密事項なんだ、 」
頑なに話そうとしないエリック王子にリメンバーは舌打ちをしてお城を出た。
「 …ッ( 探してきますッ! ) 」
お城を出たら目の前は海。
膝元まで海に浸かったリメンバーが居た。
周りには薄い赤色の鱗が漂っている。
微かに仲間の人魚の匂いがする。
「 ッ、ぁ”、ッ…ルミエールさん、ッ 」
ルミエール、と名を呼んで泣いていた。
「 !! 」
…なんで、知っているのだろう。
その名は私とフランダーしか知らない、海の奥底に住んでいる友達の名だった。
「 …ごめ、なさッ僕が、僕が…ッ… カヒュッ 」
息も出来ない程泣いている彼が、何故か放っておけなかった。
どんどん深い所へと足を踏み入れるリメンバーを追い掛ける様に私も足を踏み入れる。
「 ( 肩叩 」
「 ッ、だれ、ですか、ッ 」
「 ( 帰りましょう? ) 」
いつもの様にリメンバーの手に文字を書く。
「 …はい、 」
割とすんなりと承諾するリメンバーは、小さな子供の様だった。
細い身体、骨ばった手、腕に浮かぶ少しの傷跡、綺麗な横顔、細く靡く黄色と青の髪。
何故だろうか。
ずっとずっと昔から、彼の事を知っている気がした。
── お城に戻るとタオルを持った使用人と、数枚の資料を持つエリック王子の姿があった。
「 …リメンバー、すまない、 」
「 ……いいですよ、別に。僕もすみません。」
和解したのだろうか、握手を交わす2人。
「 ( 何で名前を知っていたの、? ) 」
と、リメンバーの手に書く。
「 ……昔、助けて貰ったんだ、 」
聞く所に寄ると、溺れていた所を助けて貰ったらしい。
綺麗なエメラルドの髪を靡かせて、赤の尾びれを持った人魚。
まさに私と真逆だ。
「 アリエルに似てるよ、ルミエールさんは。 」
困った様に眉を下げて笑うリメンバーを横目に、エリック王子の声が響く。
「 もう夜明けだ、寝るといい。 」
「 ( エリック王子は寝ないんですか、? ) 」
「 …嗚呼、寝てる暇などないからな、 」
「 …成程、ならお先に。 」
と、部屋に戻るリメンバー。
釣られて私も部屋に戻る。
海を眺めてふと思う。
“ お父様は、フランダーは、セバスチャンは、 “
” ── アースラは如何してるのかな “
と。自分から陸に来ておいてホームシックなんて格好悪いけど、仕方無いと思う。
「 ッ!? ( ぞく ── ッ 」
突然、背中に不快感が先走る。
もう王子様を落とすなんてどうでも良いから、とにかく、とにかく海に戻りたかった。
…人魚は昔から勘が鋭い。
人間に狙われている時、嵐が来る時…
その勘は百発百中で外れる事はない。
なのに今、背筋がぞくりとする様な、感じたことの無い不穏さに身体が包まれたから ── …
ぽっかりと浮かぶ月に照らされた海から、聞こえない程の声があった。
勿論、アリエルに届く訳なんてなかった。
それでも ─────────
「 …アリエル、ッ…逃げ、ろッ 」
「 ──── ッ 、 ──── ッ!!!!!! 」
「 死なないでッ ──── ッ!!!! 」
─── 届いて欲しかった。
コメント
2件
見るの遅くなった、(泣) ほんとに大好き!!