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設定から、もう好きになりました。
天才すぎる… BIG LOVE . 続きが非常に楽しみです😢❤️🔥
設定書くのがどんどん面倒くさくなっていっている今日この頃。
3話くらいで終わる予定。
⚠️史実とは関係ありません、捏造多々
「魔法のサングラス」
🇺🇸右
アメリカ🇺🇸
世界トップの自称ヒーロー。いつも元気で明るく、自信満々。リーダーシップもあり、皆から頼られている一方、闇を抱えている。愛用のサングラスを外すと、内気でおどおどしたへっぴりごしになってしまう。そのことに本人も気づいている。
ロシア🇷🇺
アメリカのライバル。自由を掲げるアメリカと対照的に独裁思想な一面があり、それもあって対抗する形となっている。だが本当はアメリカのことが大好きなツンデレで、気持ちの伝え方を知らないだけ。
イギリス🇬🇧
アメリカの父親。紳士を名乗っているだけあって礼儀正しいが、毒舌。昔と今で性格がマジで変わった国堂々の優勝で、カスっぽいところは残っているもののだいぶ丸くなった。結構な心配症で少し子供っぽい。
カナダ🇨🇦
アメリカの弟。のほほんとしていて温厚なのっぽさん。普段優しいだけあって、アザラシ狩りのために斧を持った時の迫力は満載である。空気が読めないところがあるが、本気で他の皆のことが大好きな心は少年、見た目はでかい。
ウクライナ🇺🇦
ロシアの妹。ロシアの子分的存在でもあるもののよく喧嘩するため、結構な頻度でアメリカの家に逃げ込んでいた。ロシアの気持ちを知っているのでアメリカに伝えたいが、殺されそうなので焦ったい関係をただ見つめている。
中国🇨🇳
ロシアの弟子。ロシアのことを師事しているため、二重の意味でアメリカが嫌い。ロシアがアルコールに浸り出したとき止めるのは大体中国で、それゆえ彼の扱い方もわかっている。
プロローグ
「また失敗したのか、アメリカ様は。」
そんな言葉が廊下の端から聞こえてきた。僕は、大量の資料をぎゅっと抱え込んで聞こえないふりをする。部下たちが、かろうじて聞き取れるような声量でまた囁き合う。
「これなら、まだお父上の下にいた方が良かったのでは?」
「ッ!!」
思わず足でじだん、と大きく音を鳴らしてしまった。部下達は怪訝な顔をしつつ、ばつが悪いような表情でエレベーターの扉に消えていった。いやな記憶だけを僕の頭に残して。少し経って自分のしたことに気づき、向き直って歩き出した。
さっき、彼らが言っていたこと。それは、僕にとってトラウマのようなものだ。
かつて父であるイギリスの厳しい支配の下にあって、あまりにも残虐な行いに嫌気が刺した彼らは蜂起した。たくさん人が死んで、死んで、死んで、ようやく勝利の旗が立ったのだ。そうしてこの世に生まれた僕、アメリカはそんな彼らの思いの結晶だ。あの時の方が、支配者が「僕」でなく「父」だった時の方が。そのほうが良かったなんて言われたら、頭がぐちゃぐちゃになって吐きそうになる。父への劣等感というのもあるのだろうか。あんなクズで人でなしな父に、そんなものを抱く日が来るなんて。
彼らが憐れむように此方を見るたび、申し訳なさで消えたくなる。
ドンッ。
「あ、ごめんなさ…」
「いいよいいよ、…ん?キミ、アメリカ君じゃん。」
「ふ、フランスさん!?」
来たる世界会議の日。僕は、備えには備えをという気持ちで集合時間よりも一時間ほど早く議場に来た。大分早かったし誰かの気配も感じなかったので、少しぼうっとしながら廊下を歩いていた。するとぶつかってしまい、急いで謝ろうとした。しかしそれはかの日、独立に手を貸してくれたフランスさんだったのだ。僕は冷や汗が頬を伝った。
「すす、っ、すみませ…、あの時はありがとうございますっ、!」
頭がこんがらがってしまって、訳もわからずお礼を言ってしまった。僕の良くない癖。下調べはどれくらいだってできるのに、いざとなったら体が硬直してなんにも考えられなくなるのだ。けど、フランスさんは意外にも僕の顔を見つめてふっと笑った。
「ははは。そんな気に負わなくて良いのに、肩がぶつかっただけだよ?君の場合は頭か。
…背、あんまし伸びないんだね。」
空気が凍った。国の背は、その国の先進度や評価などに左右される。僕の身長は、フランスさんの肩より少し下ぐらいしか無く、それは独立時とさして変わりはなかった。酸素が重くて、呼吸するたびに押しつぶされそうになった。
「あれ、どうしたんですこんなところで。邪魔なんですけど。」
地獄の空気に声を挟んだのは、父さんだった。にんまりと微笑を浮かべて、さぞこの状況を笑っているよう。僕は、ぎりっと彼を睨んだ。なるべく表情を変えずに、口ではフランスさんに笑いかけている。
「…、自然を夢見て飼い主の手元から離れ、のたれ死んだ子犬ちゃん…くす。」
その嘲笑は、確かな笑い声に変わっていった。僕は睨むのをやめて、この場を立ち去ろうとする。
「ははははっ!」
すると、父さんに煽られたのかフランスさんが急に笑い出した。何が何だかわからなくて、困惑してしまうばかり。そうするうちに、肩にフランスが腕をかけた。
「せっかくお前のとーちゃんが面白い話してくれてんだし、逃げんなよ。」
この人はどこまで僕を揶揄えば気が済むのだろう。本当に申し訳なく思っている、好敵手を打ち負かすためにどこの誰とも知れない僕を助けてくれたんだから。結果を出せなくて悔しいのは、自分が1番だ。ふと涙腺が緩む。
「さて、私は行きますね!野良犬を介抱する趣味は無いので!」
僕の表情を見て察したのか、父さんは手を振って悠々と去っていった。その堂々とした姿はまさに、フランスさんや部下達が望む、「大国」だった。劣等感が爆発しそうだ。また泣きそうになり、唇を必死に噛む。
「我慢しなくていいのに。」
「ひッ!?」
フランスさんが耳元で囁く。落ち着く低音と大きすぎる嫌悪感のギャップに脳がエラーを起こす。それと同時に彼が僕の耳を噛んだ。気持ち悪い、気持ち悪い。皆、僕が独立したばかりの頃は良く接してくれていたのに、どうしてこうも結果が出なかっただけで、僕をモノみたいに扱うようになるのだろうか。
「う、ぅッ、ぁあっ…」
「本当に泣かないでよ。んじゃ、もう行くから。ちゃんと顔洗ってから来てよ。」
フランスさんは、ぱっと手を離してそそくさと走って行った。顔をべしょべしょにしたチビだけが、その場に残った。
「トイレ、行こ…。」
「あぅあ…、ぇえ、いぐッ、」
顔を洗いにトイレに来たのに、いつの間にか泣いてしまっていた。大人達がむけてくる無言の圧。他の国達からの自分への扱い。相談できる相手なんて、どこにもいない。僕はどうすればいい。どうすれば認めてもらえるのだ、皆と対等に接してもらえるのだ。いけない、考えるたびに涙が溢れてきて、僕と同じように居場所のない涙が、そこかしこに落ちては小さな音をたて消えていく。
「助けて…、助けて。誰か…。」
そんな声にならない叫びを、ただただひび割れた鏡にぶつける。返ってくる言葉など何もないのに。今の僕にできるのは、ぐちょぐちょな目尻を擦って痛めつけることだけだ。
「助けてあげるよ。」
涙が擦るだけでは間に合わなくなるので、振り払うように薙ぐのだ。自分でも何が言いたいのかわからない戯言が、のどまで上がっては消えていく。
「ちょっと?聞こえないふりしないで?」
「…え?」
幻聴だと思っていた雑音が、生を帯びた。その途端、先ほどの言葉が芽を吹くように蘇る。
ー助けてあげるよー
「ーーっ、助けてくれるんですか!?お願いします、お願いします、どうか、僕を見捨てないでっ…」
僕は顔も見ずに声の主に抱きついた。正直自分でも気色が悪いと思うほどの力で。でも、これくらいしておかないと離れていきそうで、怖かった。遠くから憐れまれるなんて、まっぴらごめんだ。
「君は、何が欲しいの?」
声の主はまた語りかけた。聞いたこともない優しい声が、自分の身体を包んでいく。ひりひりと痛む目をうっすら開け、声の主を垣間見た。彼は、シルクハットを目深まで被って顔を隠した、自分よりもだいぶ背の高い青年だった。
見た目を見ても、やはり声しかわからない。僕はそれだけを頼りに、彼に縋り付く。
「僕は、強さが欲しい。みんなの前で堂々と話せるくらいの。悪い奴らにだって物怖じしない、強い心。」
「うん、うん、良いよ。欲しいのはそれだけ?」
今まで欲しいものを決めるのを催促されることなんて無かったから、初めての事態にキョドってしまう。ふと、フランスさんの嫌な笑いが思い出された。焦っていた僕は、そのまま口を開いた。
「明るさが欲しい。皆を笑わせられるような。でも父さんみたいに意地悪な方法じゃなくて、ちゃんと自分の力で。」
「ふふ…、うんうん、良いよ。じゃあ、そんな君にはこれをあげよう!」
彼は、どこからともなく新品同然のサングラスを取り出した。ここから何を言うのだろうか。そもそもトイレで初めて会った奴を信用してべらべら話すのも如何なことかと思われる。彼が告げ口でもしたら耳を噛まれるだけじゃ済まない。それでも、何故か彼は自然と頼ることができた。
「“魔法のサングラス”これは、かけるとどんな奴でも人が変わったかのように元気でうるさく、堂々とできる。そんな貴重な一品を貴方に差し上げることにするよ。」
彼は此方にすっとそのサングラスを寄越した。僕はふっと思わず笑った。
「“魔法のサングラス”…うふ、名前、ださい…、作った人は相当センスが悪かったんですね。」
「はは、その名前付けたのってさ、」
彼が乾いた笑みで彼自身を指した。僕は居た堪れない感情に陥り、とりあえず差し出されたままのサングラスを受け取る。流れるように、それを自分に装着した。それはまるで自分のために作られたかのように、ピッタリ収まった。
「…………っ、
ありがとう、シルクハット君!じゃあ、俺は会議があるから行くよ。君への感謝は永遠に忘れないから!」
自分だとは思えないような言葉遣いが、現在進行形で自身から飛び出していく。でもそれに相当するくらいの熱い気持ちも内にあったため、違和感はなかった。
ーーバタン。俺は、トイレのドアを閉めて、会議場へ駆けて行った。
「頑張ってくださいね、アメリカ。」
「はっ、はっ、…遅れた、すまない!」
議場のドアをバンと開いて、急いで自分の席に座った。いつもよりも居心地が良く、楽しい気分になれていた。それこそ周りの国たちは急にサングラスをかけ始めた俺を変なものを見る目で凝視しているが。そりゃ、驚くか。でも俺はこれで変われた。いやまだわからないけど、少なくとも今気持ちが高揚しているのはこのサングラスのおかげだ。自分が落ち着いたら、司会がざわついていることに気づいた。目を凝らすと、司会のイギリスの部下に言い寄っているのはフランスで、その顔から良からぬことを企んでいるのは目に見て分かった。そして少ししてそのざわめきが収まり、司会は一つためいきをついてから声を張り上げた。
「では、討論を始めたいところなんですが、アメリカ!独立してからもうすぐ一年が経とうとしています。今後の世界平和にむけて、スピーチをどうぞ!」
『おおおおーーーっ!!!!!』
元より誑かされていたであろう複数の国達が、司会の訳がわからない進行に歓声を上げた。フランスは、サングラスをかけて羽目を外したような俺が気に食わないのだろうか。それとも以前から計画していたことなのだろうか。少なくとも、司会の上司であるイギリスが驚いた顔をしているから、フランスの企みであることは確かだ。
「アメリカ、お願いしますよ!この1年で学んだことを世界に発信して、一歩平和に近づいていこうじゃありませんか!はは!」
乾ききった空気は、多分俺が動かない限り元に戻らないと思った。だから、恥をかいてでも…いや、大丈夫だろう。今の俺にはこのサングラスがあるんだ。
「良いぞ。では、恐縮だがさせてもらう。」
俺がそう答えると、フランスは嘲笑うかのような表情で此方を見てふんぞり返る。俺の態度を、きっと強がりか何かだと勘違いしているのだ。その姿勢に応えて、俺は立ち上がって話し始めた。
「…俺がこの1年で学習したのは、“大人達”は自分勝手で孤独だということだ。」
ざわ…会場が少し澱んだ。
「彼らは、自分たちが必死に戦って手に入れたものさえ、相手を貶してまで酷く言う。
俺も、その相手に含まれる。」
会場がさらに響めく。内容か、俺か…どちらにせよ。
「でも、ずっと安泰のためにがむしゃらに殴り合ってきた人たちだから、彼らを酷く言うのは違う。
きっと、やっとの思いで手に入れた安泰が予想と違いすぎて、八つ当たりをしているんだと思う。
それでも、先人達の気づいたものや自分まで否定するのはあまりにも悲しい。
何を持って平和なのか、何のための平和なのか。今一度、考え直してみるべきだと感じる。」
言い終わったのか自分でもわからないくらい高揚感が続いている。けど、もう思いつくような言葉がなかったら、一息ついてお辞儀をした。
『おおおおおおーーーーーっ!!!!』
歓声が上がった。先程のフランス達よりも大きいのは手に取るように分かった。してやったりという気持ちと、うまく行ったことの安心感で心が埋め尽くされ、歓声に応える余裕はなかった。でも、司会の近くでフランスがさぞかし悔しそうな顔をしていたから、それに対するファンサという名のファッキューはかましてやった。
そのスピーチの流れに乗るように、フランスの支配下にあった複数の国達が“フランス離れ”を起こした。俺は、ざまあみろという感じにその一連の出来ごとを眺めている。その時すでに、俺は大国へとのし上がって夢にもなれていた。揶揄われていたころとは別物の、「明るくて、頼れる」ヒーローに。
ーーーメリカ!アメリカ、起きて〜!もうすぐ世界会議始まるよ!」
聞きなれた声が俺の肩を叩く。ああ、俺は寝ていたのか。随分と長い夢を見ていたな。
「うん、ありがとう、カナダ。」
目を擦り、枕元に手を伸ばしながら体を起こした。
「アメリカがぜんっぜん起きないから僕まで家に繋ぎ止められてるんですけどー!?はよ起きろや!」
「はは、ごめんって。今度一緒にアザラシ狩り行こうぜー……あれ?」
「ん?どうしたの、アメリカ。」