館内放送が止まった瞬間、船内の雰囲気が一変した。
武装した男たちが次々と現れ、残った乗客たちを囲い込むように配置される。
中央ホールの大型スクリーンには、トアの姿が映し出された。
彼は椅子に足を組んで座り、口元に笑みを浮かべながら、船内の混乱を楽しんでいた。
「ねぇ、詩音?」
スクリーン越しに、彼は気怠そうに問いかける。
「君さぁ、やっぱり戦い方が雑だよねぇ。いい感じに暴れてたけど、やっぱり薬がないとダメなんだ?」
詩音は舌打ちしながら、銃を握りしめた。
「……うるせぇよ。」
トアはクスクスと笑う。
「落ち着きな。君の父さんは、もうちょっとスマートだったよ? 殺しを楽しんでた。あ、そっか――君は、道具だったもんね。」
詩音の表情が一瞬強張る。
だが、すぐに狂気じみた笑みを浮かべた。
「……へぇ、知ってるんだ? だったらさ、アンタが私の邪魔をする理由も、聞かせてくれるよねぇ?」
トアは肩をすくめる。
「邪魔? ボクはただ、この船をもらうだけだよ。」
その瞬間、館内の電気が一斉に落ちた。
真っ暗な船内に響くのは、銃を構える音と、遠くで誰かが倒れる鈍い音。
トアの声が闇の中で響く。
「さぁ――この船は誰のものになるかな?」
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