私はいつも絵を描いているの。
いつもいつもキャンバスに向き合って。
筆を動かして。
もちろん、上手くいかない日だってあるわ。
そういう日は外に出るの。
外に出て、風と動物と人間の音を聞いてリラックスするの。
そうしたら自然と筆が動き出す。
昨日だってそうだった。
いつも通り筆を動かしていたら描く手が止まってしまったの。
何故かしらね。
それでもそれはいつも通りの事だったから、また私は外へ出たわ。
そして、外で喧嘩をしている人々を眺めていたの。
急にアイディアが浮かんできてキャンバスに描いたわ。
私の心が筆を動かすと同時に筆が私の心を動かすの。
描いて描いて描きまくって。
最高の作品が出来上がったわ。
題名は…
そうね「愚かで馬鹿な人間の争い」
とでも名付けましょうか!
自分の中では最高傑作ができたと思うわ。
中央でくだらない事で争っている人間と、
その周りで、観望する人間。ひそひそ話している人間。見て見ぬふりをする人間。笑って茶化している人間。
とても愉快なものが出来上がったわ。
その夜は高揚感に包まれながら布団に入った。
その日の夢はとても愉快なものだったわ。
私がくだらない事で争って命を蔑ろにする人間達に制裁の矢を突き刺していくの。
人々は恐怖に慄き、私に命乞いを始めたわ。
金を持っているものは金を渡すから逃がしてくれと。
知識を持っているものは話し合いで解決しようと。
何にも持っていないものは誰かを代償に助けてくれと。
見ていてとても呆れましたわ。
あぁ、こんなものなのか。と
同じ人間なのが恥ずかしい。と
私は朝起きて、その夢をキャンバスに写したわ。
忘れないように。
胸の高鳴りを抑えるために。
そして私は人を殺しに出たわ。
制裁の矢を突き刺すために。
何故かしら?
夢と同じ光景が私の前で広がっている。
私の足元には複数の死体。
私の前で金持ちが「お金をあげるから逃がしてくれ」そう言いながら懇願している。
私の前で知識を持っているものが「話し合いをしよう。これは君にとっては〜〜〜」と長々と話し合いを求めている。
私の前で何も持たない者達が「あの子を差し上げます。代わりに逃がしてください」と醜い争いをしている。
夢の通りになっている。
何故かしら?
私は目の前の全ての人間を殺しましたわ。
そして家に帰ってキャンバスに向き合いました。
とてもいい作品が仕上がりましたわ!
それから、私は夢の通りに人を殺し、作品を描き、沢山の傑作を残して行きましたわ。
そんなある日。
また夢を見ましたわ。
いつもとは違う夢。
私の前に神々しい姿の御方が立っていましたわ。
神様だと実感しました。
そして私は膝まづき、今までの功績を伝えましたわ。
次の瞬間、私は神に殺されましたわ。
何故かしら?
何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?何故かしら?
私は何も間違ったことをしていなかったはずなのに…
その日私は命を失いましたわ。
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