暖かい風が吹き抜けていく。
その風とともに、争いの心も消えていく。
これは、魔法だろうか
それとも、何か他の力なのだろうか
俺たちは、両方を願う。
自分の力と、人を想う力の二つであることを。
体がふわっと軽くなり
彼の傷も完全に消えていった。
sm「…ふう…」
「すごい、闇の世界がこんなに明るくなるなんてな」
五月の月が浮かんでいる。
暖かく、太陽に近い月
ふと気づけば、鳴り響いていた銃声も消えていた。
「…こりゃあ……お前にいいとこ取られたなw」
sm「ww」
彼が笑った時、コトっと後ろで音がする。
振り返ってみれば、水色の杖だ。
「…あれは…」
彼も自分で立つことができるようになり、その杖の方へ歩いていく。
ゆらゆると揺れる宝石がとても美しい。
「……もう、睨み合いっ子は終わりにしよう。スマイルも、そう思うだろ?」
そう俺が目を向けた先
抱き合う家族たち
お互いを褒め合い、笑い会う姿
仲直りのために、手を取り合う種族
sm「まさか、あの一瞬で変わっちまうとはな」
「ホントだよw」
sm「でも、俺もそう思うよ」
そう言い、彼が杖を空に投げた。
月の光が水色の水晶を貫く。
その反射が地面に突き刺さる。
出来た小さな丸い光
じわじわと広がっていく。
スマイルの足を通り抜け
俺の足も通り抜けていく。
sm「…もう世界は別れる必要はないみたいだな。」
「創世神がそう決めたならねぇ、」
そうだ、
あの杖は、創世神の意志を表している。
つまり
仲良くやれよ、
そういうことだろう。
後ろを振り返る。
そこには今まで見たことのない
別の世界が広がっていた。
闇と光の区別がない
一つの大きな世界を。
kr「おーい!スマイル〜!」
side sm
俺を呼ぶ声が聞こえた。
その方に向かうと、きりやんが鍋をかき混ぜている。
kr「もう飯できるから、皿並べてくれ」
「わかった」
1枚1枚丁寧に並べていく。
あの日以来、世界は一つになり、今のところ世界は平和に動いている。
俺も、きりやんと同棲を始めた。
kr「はい、」
用意したさらに一つづつ盛り付け、俺に渡す。
それをテーブルに持っていき、フォークを並べる。
彼も席につき、手を合わせる。
「「いただきます」」
温かいスープを一口飲めば、心も温まる。
kr「どう?」
「…うまい」
kr「wwそりゃよかったよw」
そう笑う彼の笑顔が、余計に俺を暖める。
苦労はしたけど、なんだかんだ世界を変えたような達成感があって良かったな、
二人で一緒のベッドに入るといつもそう思う。
こうやって飯を食ってる時も。
kr「ご馳走様」
「食うの早いな」
kr「まぁね〜」
そう得意げに言って、席を立つ彼
kr「今日は帰り何時?」
「んー、7時くらいだと思う。」
kr「了解、俺は6時に仕事終わるから、先風呂入ってるね。」
「わかった。行ってらっしゃい」
kr「行ってきマース!」
そう言い、ガタンとドアが締まる。
……さて、俺も早く食べていきますか…
ちょうど食べ終わった皿を洗い、用意しておいたカバンを手に持って、扉を開ける。
眩しい日差しが、俺に突き刺さる。
それに伴い、五月の風が、俺の頬を撫でる。
あの時と、同じように。
これは、己を変えた 二人の青年を書いた史書
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次回からは引き続き短編集をあげていきます。