部活が終わって、西山先輩と話す約束をしたものの――
(やばい…今さらめっちゃ緊張してきた……)
手に汗がにじむ。
(でも、ここで聞かなかったら、絶対後悔する。)
私は深呼吸をして、西山先輩のいる部室の前へ向かった。
***
「先輩!」
「あ、来たな。」
西山先輩は、ロッカーにもたれかかりながら、軽く手を振った。
「で、話って?」
「……あの。」
どう言えばいいかわからなくて、私はぎゅっと拳を握る。
(……聞くしかない!)
「先輩、前に“俺の好きな人、知りたい?”って言ってましたよね。」
「ああ、言ったな。」
「それって……」
言葉が詰まる。
(これで、もし“全然違う子の話”とか言われたらどうしよう……)
でも、怖くても聞かなきゃ。
「その、“好きな人”って、誰ですか?」
正面から西山先輩の目を見て、勇気を出して言った。
すると――
「……マジで、まだわかんねぇの?」
西山先輩が少しだけ呆れたように笑う。
「え?」
「お前だよ、璃子。」
「……え?」
頭が真っ白になった。
「ちょ、ちょっと待ってください……!!え、本気ですか!?」
「本気じゃなかったら、こんなこと言わねぇよ。」
(いやいやいやいや、待って待って待って!!!)
「で、璃子はどうなんだ?」
「えっ!?」
「俺が好きって言ったけど、お前はどうなんだよ?」
西山先輩は真っ直ぐ私を見つめる。
からかうような笑顔はもうなくて、本当に真剣な目だった。
(うそ……)
(こんな顔、初めて見る……)
心臓がバクバクして、言葉が出てこない。
でも、私は――
「……私も、好きです。」
震える声で、やっとの思いで言葉を紡いだ。
「……そっか。」
西山先輩はふっと笑って、そのまま私の頭をポンポンと撫でた。
「じゃあ、これからよろしくな。」
「えっ、ちょ、まっ……!!」
「ほら、帰るぞ。」
「えぇぇぇぇ!?!?!」
こんな展開、予想してなかった!!
私の恋は、勘違いじゃなくて、本物だったんだ――。