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転校してから2週間が過ぎた。奈子や涼、みんなとは毎日LINEしてるけど、正直、新しい学校ではまだ全然馴染めてない。なんかさ、こっちの子たちってすごくフレンドリーで、ノリも良いんだけど、それが逆にうちにとってはハードルが高くて…。だって、うちは標準語だし、テンション合わせるのがすごく大変なんだもん。
そんな中、唯一まともに話せる相手がいる。それが、佐野くんだ。
転入生お世話係とかいう役割を押し付けられてるみたいで、最初はちょっと迷惑そうだったけど、なんだかんだ面倒を見てくれる。あんまり笑わないけど、冷たいわけじゃなくて、むしろ気遣いが細かい。例えば、「教科書貸してあげる」とか「このクラス、ここが分かりにくい」とか、そういう小さな気配りが妙にうちの胸に刺さる。
今日は授業が終わった後、佐野くんが教室の隅で一人で本を読んでた。周りはみんなわいわい騒いでるのに、彼だけはその中に入らず、静かにしてるのがちょっとカッコよく見えた。都会はカッコいい人たくさんいるなぁ。
「佐野くん、いつも本読んでるね。」
声をかけてみると、彼は本から目を上げて軽く眉を上げた。 あっ、失礼だったかな!?
「ん?まあな。こういうの、好きだから。」
表情は淡々としてるけど、その声がやたら優しくて、なんかドキッとした。なんでだろ?佐野くんの話し方、私なんか落ち着くんだよね。
「小夏は、慣れた?この学校。」
急にそんなこと聞かれて、ちょっと戸惑った。だって、全然慣れてないんだもん…。でも、それをそのまま言うのもなんか情けなくて。
「うーん、まぁまぁ、かな?」
まぁまぁって答えるのが一番!
適当にごまかすと、佐野くんは小さく笑った。普段あんまり笑わないから、その一瞬の笑顔がやけに眩しく感じて、また心臓が跳ねた。
「無理しなくていいよ。関西弁とか、そんなの急に覚えなくても大丈夫だから。」
「えっ…なんで分かったん?」
びっくりして聞き返すとう、佐野くんは肩をすくめた。
「なんか最近、ちょっと頑張ってそうだったから。無理して方言真似てるの、バレバレ。」
「……っ!」
めっちゃ恥ずかしい!自分ではバレてないつもりだったのに、佐野くんには全部お見通しだったみたい。顔が熱くなるのが分かって、慌てて話題を変えようとした。
「べ、別に無理してるわけじゃないし!うちはただ、みんなと話せるようになりたくて…。」
そう言うと、佐野くんは少し真剣な顔になって、静かに言った。
「無理しなくても、小夏のままでいいと思うけどな。大丈夫だよ。」
その言葉に、一瞬息が詰まった。まさか、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。うちのままでいい、なんて。
「…ありがとう。」
精一杯の声でそう言うと、佐野くんは「別に」とそっけなく返して、また本を読み始めた。でも、その横顔がなんだか優しそうで、うちはつい見とれてしまった。
その日の帰り道、奈子にLINEで今日あったことを話した。
**小夏**:「奈子、今日さ、うちのクラスのお世話係の佐野くんに『無理しなくていい』って言われたんやけど、めっちゃドキッとした!」
**奈子**:「えー!何それ、いい感じじゃん!」
**小夏**:「いやいや、絶対ただの社交辞令やって!」
**奈子**:「そんなことないって!小夏が転校してから頑張ってるの、ちゃんと見てる人なんじゃない?」
**小夏**:「そうなのかな…。」
奈子の言葉に少し勇気づけられたけど、それでも自分の気持ちはまだ整理がつかない。ただ、佐野くんの言葉を思い出すたび、胸がキュッとなるのは事実。