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Dream of memorY.2
ー『どうしたのその傷!』
とうとう、母にバレてしまった。
『転けただけだよ。』
だけど、
『腕にも傷があるじゃない!』
次々と、傷を見られてしまった。
『いじめられてるの?』
『・・・』
俺は何も言わないようにした。
けど、
『やっぱり、いじめられてるんでしょ?』
隠しきれなかった。
『学校に連絡するからね。』
母は、スマホを取り出した。
学校に電話をしているみたいだ。
どうせ無駄だ。
きっと変わらない。
昔もそうだったから。
『・・・』
母が、電話を終えた。
『狼夢?狼夢がいじめたって本当なの?』
は?
俺がいじめた?
『そんなこと、してない。』
『でも、先生が…』
『してない!』
そうきたか。
結局、酷い目に遭うんだな。
もう、嫌になってきた。
次の日も、
『・・・』
いじめられた。
石を投げつけられ、
大事なものを壊され、
面倒ごとを押し付けられ、
殴られ、
蹴られ、
またその次の日も、
『お前が例の転入生か。』
年上のヤツからもいじめられた。
そんな日々が続いた。
ふと、隣を見れば、
同じように傷ついた女の子がいた。
最初はもう1人同じ人狼で、いじめられている人がいることに、少し安心していたところもあった。
だけど、
今は違う。
誰かが傷ついているのを見るのが嫌だった。
だから、
『何しようとしてんだ。』
俺はその子がいじめられないように、ほぼずっと見張っていた。
代わりに殴られても、不思議とその分の嫌な気持ちはしなかった。
それ以上に、ムカついていた。
許せない。
見ていて、この子が悪いことをしているようには思えなかった。
それどころか、
気を遣っているように見える。
この子は優しすぎるんだ。
『あの、助けてくれて…』
『それじゃ、損するぞ。』
『・・・』
女の子は黙ってしまった。
『優しくすると、利用されるぞ。』
『りよ、う?』
女の子は首を傾げた。
『いいように使われる。』
『ん…』
よくわかってなさそうだな。
まぁいいや。
よく見れば見るほど酷い姿だな。
至る所に傷があり、
手入れされてなさそうな髪、
汚れた制服、
怯えた表情。
身体が震えている。
この子の方が、酷い目に遭っているのかもしれない。
『狼夢さまも、じ…じん、人狼なんですか?』
『そうだよ。あと、さま呼びしないでくれ。』
『あ、ごめんなさいごめんなさいごめ…』
『なんも悪いことしてないのに謝るなって言っただろ。』
『はい…ごめんなさい…』
怖いんだろうな。
ずっと身体を震わせて、怯えている。
『俺はもう、帰るぞ。』
下校の時間。
ほとんどの人が帰っていった。
今なら、もう人は少ないだろう。
俺は帰る。
これなら、1人の方がマシだったな。
見張っていたわけだけど、
あの子を、見ていたくない。
そう思った。
だけど、
次の日。
『はい、みんな。2人組を作って!』
俺なんかとペアになろうとする人なんていない。
嫌がらせか。
まぁ、2人組なら、
あの子もか、
俺と、あの子だけが残った。
『・・・』
仕方ない。
俺は、あの子とペアになるしかないか。
『はい、みんな2人組になったみたいだね。ならそこ2人、前に来て。』
俺たちが呼ばれた。
嫌だけど、行くしかない。
『ほら、行くぞ。』
2人で、前に行く。
『なら、2人はお手本になってもらおう。ほら走れよ。』
先生の声が急に冷たくなる。
俺は、差された方に走る。
『はーいみんなも走っていきましょう。』
先生は、また優しそうな声で皆に言った。
でも、みんなの中に僕とあの子は入っていない。
結局、どの先生も敵だった。
授業が終われば、
『それ、片付けといて。』
先生に言われた。
こんな日々が続く。
1日が早く終わればいいのに。
そんなことばかり考えている。
今日も散々な目に遭った。
帰るか。
家に向けて歩く。
と、
?
後ろを、誰かがついてくる。
『何の用だよ。』
そう言って振り返ると、
そこに、
あの女の子がいた。
『うぅ、ごめんなさい…』
『お前か。』
いじめてくるヤツらかと思った。
『で、なんか用?』
後ろをついてこられるのは嫌だった。
『……ない』
『なんか言ったか?』
よく聞こえない。
『……なぃ』
さっきより小さいような…
仕方ない、近づくしかないな、
俺は近づく。
と、
女の子は身体を震わせて怖がっていた。
それでも近づくと、目をギュッと閉じて頭を抱えた。
『なんだって?』
訊いてみたけど、何も言わない。
よくわからないヤツだな。
もういいや。
俺は、女の子を放って帰る。
もう、後をついてはこなかった。
家に帰ると。
母が、電話をしていた。
『うちの子が申し訳ございませんでした。』
母が謝っていた。
嫌な予感がする。
しばらくして、
母が電話を終えると、
『狼夢、またいじめたんだって?』
やっぱりか。
『今日もしてない。』
『いじめちゃダメよ、絶対に。』
母は、俺のことを信じてくれなかった。
夜、寝る前、
母が、父と話していた。
『狼夢が、またいじめたって学校から電話があって…』
『やっぱりな。だから人狼はよくないって言っただろ。』
俺のことを話していた。
父は元々、俺に良いイメージがないみたいだった。
そういえば、父は優しくしてくれたこと、なかったな。
ここには、長くはいられないかもしれない。
もう、眠ろう。ー