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第1話 教師の目は誤魔化せない。
私は中学生時代、今まで誰も経験したことのない、不思議な恋をしました。
その3年間はあまりにも辛くて、楽しくて、儚く過ぎていきました。
今だから言えることを文字に起こして、他の恋愛小説とは違う、不思議で儚い恋愛小説を楽しんでいただければと思います。
では、お楽しみください。
私もいよいよ中学生になり、新しい生活が始まった。
小学校とは違う独特な雰囲気の中学校では、様々なことが新しく、新鮮であった。
慣れない学校生活は私を置いていくほど早く過ぎ、気がつけば授業が始まる日がやってきた。
授業の間の休み時間、トイレに行くために廊下を歩いていると、前から一人の先生が歩いてきた。私の教室に入っていったため、きっと次の授業の数学の先生だろう。そんなことをぼんやり考えながら、私は薄汚れたトイレに入った。
トイレから戻ると、すでに先程の数学の教科担任が私の教室にやってきていた。
とても背が高く、足はすらっと長い。180cmくらいだろうか。
左手の薬指には、日に照らされ、キラキラと輝く指輪。
真っ黒なスーツに固く結んだ赤色のネクタイを身にまとい、気だるそうな猫背をしていた。
上から下まで舐め回すように見た後、私は席についた。
不思議な雰囲気を醸し出していて、なんだか夢を見ているような気分だった。
授業が始まり、その不思議な雰囲気に身を任せているうちに、先生の名前、年齢、趣味などのプロフィール全てが頭に入ってきた。
どうやら妻子持ちで、家族が大好きだそう。
なぜか少し、淋しいような、羨ましいような、そんな感情が芽生えた。
気がつけば、だんだん先生の質問コーナーは盛り上がってきて、家族の写真を見せてくれたり、元カノの人数まで教えてくれたりした。 なんて面白い先生だ。
ふわふわしているうちに、先生の自己紹介で授業は終わり、先生は教室を出ていった。
忘れるために自分を抑えようとしてなのか、私は使わなかった数学の教科書を机の中にそそくさとしまった。
帰りの会で大声の「さようなら」を口にすると、あっという間に一日が終わった。今日は本当に疲れた。
トイレに行き、手を洗った。相変わらず春だというのに、手に触れる透明な水はまだ冷たい。
教室に荷物を取りに行くついでに、先生の受け持つ教室を覗くと、先生が一人で綺麗に黒板を消していた。 もう十分綺麗に消せているのに、先生はひたすら黒板消しを黒板に滑らせている。
スーツの後ろ姿が何かを語っている気がして、私は首を傾げながら学校を後にした。
その日からだった。
いかがでしたか?伏線がたくさん張ってあるので、是非第2話もお楽しみに。