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四月十八日……昼……『ビッグボード国』……。

ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)たちは、ナオトの全身を覆っている鎧を外せるようになるという温泉を探すために八班に分かれて『別府八湯』と酷似《こくじ》している場所へと赴《おもむ》いたが、それはいっこうに見つからない。


「おいおい、嘘《うそ》だろ? どうして見つからないんだよ」


赤い鎧と赤い四枚の翼と先端がドリルになっているシッポと黄緑色の瞳が特徴的なナオトは、八箇所ある温泉に行って実際に浸《つ》かってきたのだが、彼の鎧は全く外れない。


「うーん、おかしいな……。本当にこの国のどこかにあるのかなー?」


ナオトがそう呟《つぶや》きながら歩いていると、ミノリ(吸血鬼)が彼に話しかけてきた。


『ねえ、ナオト。本当にこの国のどこかにあんたの鎧を外せるようになる温泉はあるの?』


「ん? これは確か……ミノリの固有スキル……だよな?」


『ええ、そうよ。それより、本当にこの国のどこかにそれはあるの?』


「うーん、まあ『橙色に染まりし温泉』がこの国のどこかにあるのは間違いないから、もう少し探してみてくれ。俺もそうするつもりだから」


『分かったわ。じゃあ、他の子たちにも伝えておくわね』


「おう、よろしく頼む」


彼がそう言うと、彼女の声は聞こえなくなった。


「うーん、けど、この国にそんな色の温泉なんてあるのかな?」


ナオトが小首を傾《かし》げていると『ビッグボード国』の温泉がたくさん載《の》っているパンフレットのようなものが飛んできた。

彼はそれをジャンプして空中でキャッチすると、それを開いた。


「うーん、やっぱり橙色の温泉なんてないよな……。だとしたら、何か条件が揃《そろ》わないとダメなのかな?」


彼がそれを見ながらそう言うと、声が聞こえた。


『……誰か……助けて……』


「な、なんだ? この声は……。頭の中に直接……」


彼が最後まで言い終わる前に、声の主は何かに怯《おび》えるようにこう言った。


『……お願い……早く……助けて……』


「どうやら周りのやつらには聞こえてないみたいだな。だとしたら、この声は俺に助けを求めているのか?」


その直後、彼に話しかけてきた者がいた。


『ご主人、どうしたの? 大丈夫?』


「その声は……ミサキか?」


『うん、そうだよ。それでどうかしたの?』


彼女は、ナオトたちが住んでいるアパートと合体している巨大な亀型モンスターの本体である。ちなみに『四聖獣』の一体である『玄武《げんぶ》』だったりする。


「ああ、それがな。さっきから俺に助けを求める声が聞こえるんだよ。けど、そいつがどこにいるのか分からなくてな……」


『なるほど。うーん、それは多分……いや、確実に【あの子】だと思うよ』


「あの子? あの子って、誰だ?」


『ご主人。僕たち『四聖獣』の役割が何なのか覚えてる?』


「うーんと、日本に酷似《こくじ》しているこの島国を守るために各地方に散らばっている……だったか?」


『うん、そうだね。さて、今のでもう分かったんじゃないのかな?』


「お、おいおい、さすがに今の情報だけじゃ、さっぱり分からな……」


その時、彼は思い出した。

『ハイノウ国』に行く前、『ヒバリ』(朱雀《すざく》)に上陸許可を求めたことを……。


「なあ、ミサキ。俺の予想が正しければ、この声の主は」


『おそらく……いや、間違いなく【四聖獣】の一体【青龍《せいりゅう》】だろうね』


ん? 青龍? 白虎《びゃっこ》じゃないのか?

何か事情があって西側を守護してるのかな?

まあ、それはいいとして。


「そうか……。けど、どうして俺なんかに助けを求めるんだ?」


『それはきっと、ご主人が僕とコハルとヒバリちゃんの契約者だからだよ』


「それじゃあ、俺は今すぐにでも、そいつを助けに行った方がいいってことか?」


『うん、そうした方がいいと思うよ。あの【青龍《せいりゅう》】が助けを求めるくらいだからね』


「そうか……。じゃあ、俺はこれからそいつを助けに行ってくる。だから、その……」


『探索《たんさく》を続行してくれ……でしょ?』


「あ、ああ、その通りだ。頼めるか?」


『うん、分かった。気をつけてね』


「ありがとう。それじゃあ、行ってくるけど、くれぐれもみんなに内緒だぞ?」


『分かってるよ。けど、ちゃんと帰ってきてね』


「ああ、もちろんだ。じゃあ、またな」


彼はそう言うと、路地裏に移動した後《のち》、大空へと飛び立った……。



『ビッグボード国』……上空……。


「さてと……『青龍《せいりゅう》』はいったいどこに居《い》るのかな?」


ナオトが赤い四枚の翼を羽ばたかせながら空を飛んでいると、あの声が彼の頭の中に響いた。


『……助けて……誰か……早く……助けて……』


「そうしたいのは山々だが……居場所が分からないから助けに行きたくても行けねえんだよな……」


彼がポツリとそう呟《つぶや》くと、声の主は居場所を教えた。


『私は……もっと……上にいる……。だから……早く助けて……』


「上……か。よし、分かった。じゃあ、あと少しだけ待っててくれよ!」


彼はそう言うと、雲の上を目指し始めた。

彼は真っ直ぐ上に飛び続けた。

彼女を助けるために……。ひたすら飛び続けた。

そして……ついに……彼はその場所に辿《たど》り着いた。


「おーい! お前に言われた通り、来てやったぞー! 姿を見せてくれー!」


その直後、彼の頭上から現れたのは青龍《せいりゅう》ではなかった。

そいつは真っ白な槍と共に、ナオトに襲いかかった。

ナオトは両腕をクロスさせて、それを受け止めた。


「おい! やめろ! 俺は戦いに来たわけじゃ……」


彼が最後まで言い終わる前に、その者はこう言った。


「黙れ! お前なんかに鱗《うろこ》はやらねえぞ!」


逆立った黒髪と黒い瞳と黒い法被《はっぴ》が特徴的な男は、ナオトに向かってそう言った。

その時、ナオトは気づいた。

その男に見覚えがあることに……。


「おい、お前……もしかして、貫太《かんた》か?」


「お、お前……どうして俺の名前を知ってんだよ! それに俺のことを呼び捨てにしていいのは、この世でただ一人……その名は……」


「『本田《ほんだ》 直人《なおと》』……だろ?」


「ど、どうしてその名前を……。はっ! お前、まさか! ナオト……なのか?」


「ああ、そうだ。俺は元『獄立《ごくりつ》 地獄高校』の出席番号『十五番』……『本田《ほんだ》 直人《なおと》』だ」


その直後、彼は攻撃をやめた。

彼は槍《やり》の柄《え》の部分に飛び乗ると、ナオトの両手を掴《つか》んだ。

そして、腕を上下に振り始めた。


「おいおい、少し見ない間にずいぶんと背が縮んだなー、ナオト。ちゃんとカルシウム摂《と》ってるのかー?」


「う、うるさいな。俺だって、元に戻れるなら戻りたいけど、今はそれができないから我慢してるだけだ」


「そうかー。けどまあ、会えて嬉しいよ。元気だったか?」


「ああ、見ての通りだ。お前は?」


「んー? 俺かー? 俺もこの通り、ピンピンしてるぜー。俺の相棒……『白神槍《はくじんそう》』も絶好調だ!」


「そっか……。まあ、とにかく元気そうで良かったよ。元『獄《ごく》立 地獄高校』出席番号『十二番』……乃木《のぎ》式|爆槍《ばくそう》術の使い手……『乃木《のぎ》 貫太《かんた》』」


「いやー、久しぶりにそう言われるとなんだか照れるなー。あはははははは」


彼は嬉しそうに頭をポリポリと掻《か》いた。


「それで? お前はこんなところで何をしてるんだ? さっき鱗《うろこ》がどうこうって言ってたが……」


「あー、それはな……」


彼が最後まで言い終わる前に、彼らの頭上から『そいつ』は現れた。

赤い瞳と藍色に近い青《あお》色の鱗《うろこ》が特徴的な青い龍……『青龍《せいりゅう》』は蛇《へび》のように、とぐろを巻くとナオトに話しかけた。


「よかった……。来てくれたんだね……」


「えーっと、もしかして、俺をここまで誘導《ゆうどう》したやつか?」


ナオトがそいつに向かってそう言うと、そいつはコクリと頷《うなず》きながら、こう言った。


「うん、そうだよ……。私があなたを……ここまで誘導した……『四聖獣』の一体……『青龍《せいりゅう》』だよ」


「そうか……。お前だったのか……。それで? 俺はどうすればいいんだ?」


彼がそいつにそう訊《たず》ねると、そいつの代わりに乃木《のぎ》がこう言った。


「それはこれから俺が説明してやるよ」


「ああ、分かった。よろしく頼む」


ナオトがそう言うと、彼は彼女がナオトをここまで誘導した理由《わけ》を話した。


「あー、まあ、その……あれだ。要するに、こいつの鱗《うろこ》を高く売るために、ここまで取りに来るやつがいるから、そいつらが来たら全力で守ってほしい……ってことだ」


「ほう、つまり俺は……お前の用心棒になればいいってことだな?」


「……うん」


「そうか……。けど、俺は早くこの鎧を外せるようになるっていう『橙色に染まりし温泉』を探さないといけないからな……」


「あっ、それ、私の汗だよ」


「……え?」


「だから……それは私の……」


「ちょ、ちょっと待て。それじゃあ、俺がお前の鱗《うろこ》を守り抜いたら……」


「うん、その温泉に入ってもいいよ」


「そ、それは本当か?」


「うん」


「嘘《うそ》じゃないよな?」


「うん、嘘《うそ》じゃないよ」


その直後、彼は「よっしゃー!」と叫びながら縦横無尽《じゅうおうむじん》に飛び回った。

しばらく飛び回った後《のち》、彼はそいつの目の前で静止した。

そして、彼女にこう言った。


「それじゃあ、約束だ! お前の用心棒になる代わりに俺が……いや、俺たちがお前の鱗《うろこ》を守り抜いたら、『橙色に染まりし温泉』に入らせてくれ!」


「うん、いいよ。あなたが……いや、あなたたちが完璧《かんぺき》に私の鱗《うろこ》を守り抜いてくれるなら……ね?」


「よし! それじゃあ、やるぞ! 貫太《かんた》! 俺たちでこいつの鱗《うろこ》を取りに来るやつらを返り討《う》ちにしてやろうぜ!」


ナオトがそう言うと、彼はニシリと笑った。


「お前なら、そう言うと思ったぜ! ナオト! 俺たちの力……やつらに見せつけてやろうぜ!」


「ああ、もちろんだ! こいつの鱗《うろこ》は絶対に死守《ししゅ》してみせる! 俺とお前でな!」


「よおし! それじゃあ、作戦を説明するから、こっちに来てくれ!」


「おう! 分かった!!」


ナオトはそう言うと、乃木《のぎ》のところへ飛んでいった。


「……よかった……。これなら……任せても良さそうだね」


彼女はポツリとそう呟《つぶや》くと、例の人たちがここに到着するまで、二人のやり取りを見ることにした。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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