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次の日、風邪で休んでいた悠斗がようやく学校に戻ってきた。少し顔色が悪かったけれど、笑顔を見せてくれて、安心した。
放課後、私は悠斗と話しながら歩いていた。彼の元気そうな姿を見ると、なんだかほっとした気持ちになった。
「せりな、元気だった?」
悠斗の優しい声に、思わず頷く。
「うん、元気だったよ。でも、湊と一緒に帰ってたから、ちょっと…」
悠斗はふっと笑って、「ああ、湊か。」と一言。
「どうかしたの?」
私がちょっと驚きながら尋ねると、悠斗は顔を少し赤くして、照れ笑いを浮かべた。
「いや、なんでもないけど…」
その後、悠斗が私に視線を送ったまま、少し黙り込んだ。どうやら私と湊のことを気にしている様子だった。
「でもさ、せりな、最近湊と結構仲良いよね?」
「え…!?そ、そんなことないよ。」
「本当に?」
悠斗の言葉に、私は少し戸惑った。湊とは確かに最近一緒に帰ることが多くなってきていたけれど、それが何か特別なことなのかはわからなかった。
「だって、前はあんなに冷たかったじゃん。今はお前を気にかけてる感じするし、なんかちょっと…」
「気にかけてる感じ?」
私は思わず顔を赤くして、悠斗を見上げた。
「うん、だって、お前のことを守ってくれるって言ってたじゃん。」
「え!?それは…その、湊が…そんなこと言ったの!?」
悠斗はクスリと笑って、「うん、言ってたよ。だから、もし湊が本気なら、お前も気をつけろよ。」
「気をつけろって…」
「だって、湊って本当に素直じゃないから、余計なこと言うけど、本心は違う場合もあるんだよ。」
悠斗の言葉に、私は少し考え込んだ。確かに湊は、最初は私に冷たくて、距離を置いているような態度だった。でも最近は、私を気にかけているように感じることが増えてきた。
その時、ふと湊の顔が浮かんだ。あの時、私をバックハグして守ってくれた時の表情。あれは本気だったのだろうか?
「…湊が、私に?」
悠斗は少し不思議そうに私を見て、「うん、どうしても気になるなら、湊に聞いてみれば?」
「湊に…?」
「そうだよ。気になるなら、素直に聞いてみたほうがいいよ。お前、今まで何でも気にしすぎてるから。」
「でも…」
私は言葉を詰まらせた。湊に素直に聞ける自信なんて、今はなかった。何て言うべきか、どう返されるかもわからない。
「まあ、無理に聞かなくてもいいけどさ。」悠斗はにっこり笑ってそう言った。
その時、突然、湊が後ろから近づいてきた。
「おい、何の話してんだ?」
その声に、私と悠斗は一斉に振り向いた。湊は普段通りのクールな顔で、私たちの会話を聞いていた様子だった。
「いや、なんでもないよ。」悠斗が軽く肩をすくめて言うと、湊はそのまま私を見つめた。
「せりな、帰るぞ。」
湊の一言に、私は思わず緊張してしまった。
「う、うん。」
何だか湊の目線がいつもよりも深く、じっと私を見つめているような気がして、私は目を逸らすことができなかった。
そのまま二人で歩き出すと、湊は時々横目で私を見るけど、今日は不思議と何も言わず、静かなままだった。