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そして、エレベーターに乗って連れて行かれた場所は最上階。
だけど今回は、前に入った社長室でもなく奥の方まで連れて行かれる。
そのドアを開けると、そこは。
「屋上?」
「そう。ここは普通の社員は入れない屋上」
そこには屋上だけど緑もあってかなりオシャレにデザインされた空間。
「すごい・・。こんなオシャレで素敵な屋上なんてあったんだ」
「知らなかったでしょ?ここは親父が自分の居心地いい空間を密かに個人的に作ってる空間でさ。親父や上にいる特別な人間しか入れない場所」
「そんなところに私が入っていいの?」
「もちろん。オレにとって透子は特別な存在だから」
「樹・・・」
こうやって樹は、もう何も言わなくてもちゃんとこの心を満たしてくれる。
「透子。こっち来て」
そう言って手をそのまま引っ張られてフェンス沿いに移動する。
「うわぁ・・すごい・・・」
そしてそこから見える壮大な景色。
この街が小さくなって太陽の光に照らされてキラキラ輝き、空と一体化してるように見えるその空間に目を奪われる。
「オレここから見える景色がすげぇ好きでさ。社長の代わりにいろいろ仕事こなしてた時とか、正直くじけること何度かあって。そんな時には、いっつもここに来て気分晴らしてた」
その景色に感動してる私の隣に来て、同じようにその景色を見ながら隣でそう教えてくれる樹。
「そっか・・。樹もそんな時やっぱりあったんだね」
「もちろん。オレ元々そんな完璧なヤツじゃないしさ。自分で自分の出来なさや不甲斐なさに落ち込むことなんてしょっちゅうだったよ」
「私の前ではそんな姿、全然見せてくれなかったから、そこまでなってるなんて気付いてあげられなかった。ごめんね」
「透子がなんで謝んの(笑) オレが透子の前では完璧な男でいたかったんだから当然でしょ。出来ない弱いオレとか透子には絶対見せたくなかった」
「樹は樹でいてくれたらそれでいいんだよ?私だって全然完璧な人間じゃないし、自信ない人だし。だから私は樹のその存在自体に助けられてる」
「うん。多分これは男としてのオレのプライドみたいな感じかな。年下の自分ってこと意識させたくなかったのかも」
「えっ・・?」
「透子。実際そこ、気にしてたでしょ?」
「・・・・うん。多分」
まっすぐそこに触れて来られてドキッとした。
「オレはさ、何度も言ってるけど、そんなの気にしてないし、意識する瞬間もこれっぽっちもないけど。でもきっと透子はそうじゃないんだろうなっていうのはわかるから」
うん。樹は今までもずっとそうやって言ってくれていた。
「でも実際はさ、オレが年下で年齢が離れてる分、正直頼りないとことかあるのも事実だろうし」
「いや、樹はそんなこと感じさせないほど頼りがいあったよ?」
「そう。だからそう思わせたかった」
そう言って隣で私を見て微笑む樹。
「年下だから可愛いとか、年下だから頼りないのは仕方ないとか、自分が守らなきゃとか、透子にはそんな風に思わせたくなかった」
確かに最初はそう思っていたかもしれない。
年下だからそうだというイメージの中、樹にもそのままのイメージを重ねていたかもしれない。
「オレは年下だからってそんな言葉やイメージで、オレを見てほしくなかった」
そうだった。
樹は常にそんな雰囲気を絶対出さずに、私に対して常に対等で、それどころか私より先を歩いて私を引っ張ってくれていた。
最初はそれが強引で強気で。
そんな樹に翻弄されてる自分に戸惑っていた。
だけど、仕事でも仕事以外の時でも、樹はそうやって私を本当は引っ張ってくれていて、そんな意識もいつの間にかしないようにしてくれていた。
時に不安になってしまったのは、結局私がちゃんと自信を持てなかったから。
私が樹を信じることが出来なくなってしまったから。
樹はいつだって、どんな時もまっすぐその気持ちをぶつけて伝えてくれていたのに。
私が勝手に心配になって不安になってただけ。
そんな時に、きっと私が年上だから・樹にはふさわしくないのだと、勝手に自分で思いこんでいた。
「そだね。結局それをずっと意識してたのは自信がない私の問題なだけだったんだよね」
そしてそれを気付かせてくれたのは、やっぱり樹だった。
年齢なんて関係なく、今いる樹がすべてなのだと。
私の足りない部分は樹が補ってくれて埋めてくれる。
私一人じゃなく、樹がいることで自分は自分でいれるのだと、ようやく自分に自信を持てて好きな自分でいれるのだと、樹が伝えてくれた。