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恵那が転校して来てから数週間が経つと、転校当初に比べ、恵那を『アイドル』として見なくなっていた。


それというのも斗和と常に行動を共にしているのが原因だったりもする。


家も席も隣同士、常に一緒に居る。


その事から一部では『えなりんが江橋の彼女になった』なんて噂が飛び交う程だった。


恵那からしてみれば、斗和と一緒に居るだけで『普通』の生活を送れる事が、何よりも嬉しかった。


そして斗和もまた、恵那に自然な笑顔が増えていた事を嬉しく思い、付き合っているという噂が事実では無いものの噂になっても困らないという思いから、二人ともそれを否定する事も無く、常に一緒に居続けた。


ただ斗和の方は、噂こそ気にしてはいないものの、恵那が自分の『彼女』なんて噂があらゆる場所に知れ渡ると危険が及ぶのでは無いかと心配する面があった。


そこで、


「今日招集をかけたのは、お前たちに頼みがあるからだ」


ある日曜日の午後、いつもならば金曜日の夜に行われている集会とは別に特別招集がかけられ、プリュ・フォールのメンバーが河原に集められていた。


「俺と恵那が行動を共にしてる事で、最近付き合ってるとかそういう噂をよく耳にすると思うが、別に俺らはそういう仲じゃねぇ。それはみんな知ってるな? けど、学校やクロスの連中なんかは噂を鵜呑みにするかもしれねぇ。そうなると恵那に危険が及ぶ可能性が十分にある。そこでだ、お前らには常に恵那を気にかけて欲しい。何か危険な状況に陥ったり、恵那に関して何か聞いたりしたら、すぐに教えて欲しいんだ。頼めるか?」


リーダーである斗和の話を断るメンバーなど居る訳が無いのだが、これは強制では無いと斗和は付け足した。


メンバーは勿論恵那がアイドルである事も知っているし、斗和にとって大切な存在である事も十分心得ている。


それに、今はアイドルでは無いとしても、人気アイドルだった恵那を守れるとあれば、断る者など居るはず無いのだ。


「勿論です! 恵那さんの事は俺らも気をつけます!」

「そうっすよ! 当たり前の事です!」

「みんなで恵那さんを守りましょう!」


恵那を守るという使命感が生まれたメンバー一同は口々に言いながら一致団結して盛り上がっていく。


その光景に安堵した斗和はすぐ横に控えていた忍に声を掛けた。


「忍」

「何ですか?」

「お前には、俺や恵那となるべく行動を共にして欲しい。アイツもお前には一番心を許してるっぽいからな」

「俺ですか? 勿論、俺で良ければやらせて下さい」

「二人で居るより三人で居る方が変な噂も無くなるだろうし、頼むわ」

「了解しました」


こうしてメンバーには常に恵那を気にかける事、何かあれば率先して守る事を周知するのと同時に忍には自分や恵那と可能な限り行動を共にするよう頼み、ありとあらゆる危険から恵那を守る手筈を整えていた。


それから暫く、噂は思わぬ形に変化を遂げる。


「なぁ、えなりんって今度は針ヶ谷と、付き合ってんだろ?」

「マジかよ? 針ヶ谷って江橋が一番可愛がってる後輩だろ?」

「まあでも、江橋よりはマシかもなぁ」

「だな、ぶっちゃけ針ヶ谷アイツって不良っぽくねぇし、どうしてプリュ・フォールのメンバーなのか分からねぇもんな」

「確かに、言えてる」


なんて噂が恵那たち三年生の間で持ち切りになり、そこから二年、一年生へと広まり、気付けば噂は更に変化を遂げ、忍が斗和から恵那を横取りしたという話になっていた。


勿論、それは根も葉もない噂だし、当の本人たちは全く気にしてはいなかったのだが、斗和相手だと怖くて何も出来なかった隠れ恵那ファンから忍が嫌がらせをされるようになっていたのだけど、忍はそれを斗和や恵那には隠していた。


「何か、ごめんね、最近また変な噂が広まってて……」

「いや、全然! まあデマだけど、それでも恵那さんと付き合ってるなんて噂、寧ろ凄く光栄ですよ!」

「もう、忍くんってば……」


昼休み、いつもの様に屋上でお昼ご飯を食べていた恵那たち。


斗和はというと、担任から呼び出されて渋々ながら職員室へ行っていた。

不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい

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