長い夢を見ていた気がする。
まるで暗闇のような、深海のような、そんな物語。
一度浮上した意識は覚醒して、眠気は一切無かった。
うっすらと眩しさに抗いながら瞼を開けると、一番最初に見えたのは白い天井で、次に薬品独特の匂いが鼻をつんと刺す。
病院?なんでこんなところに。
回らない頭を置いといて体を起こすと、太腿にずしりと重みを感じた。
「・・・・・ろぼろ」
顔を見なくても分かる。何せ旧友なのだ。
ロボロは俺の足の上でうつ伏せで眠っていた。
ベットの横に座ってそんな体勢で、よく寝れるな。
なんて呑気に考えていると、もぞりとロボロが身じろいだ。
ぱちり。
顔を上げたロボロは瞬きを一つか二つして、それから視界に俺を映した。
「・・・・・ぞむ?」
「せやけど」
「っよかったー!」
眉を下げて安心したように笑う姿はどこか痛ましいが、それより先に、これは一体どういう状況だろうか。
「・・・覚えてへんの?あんさん、家で熱出して倒れとったんやで」
「・・・倒れ・・・?」
あ。思い出した。というか、
「飲み会は?」
「延期」
「・・・・・ごめんなさい」
俺抜きでやれば良かったんに、とは口に出せなかった。
「あのな。倒れたんはしゃあないけど・・・・・自己管理、しっかりせえよ。無理してるんちゃう」
「・・・・・無理、は、別に・・・・・」
言い淀んでしまってから最近のことを思い出すと、なんだか本当に無理をしていたような気になって。
ぽろり、と涙が溢れた。
「最近疲れとったんやろ。これを機にしっかり休みぃや」
「っふ、・・・ひ、ぁ・・・・・」
一度流れたら止まらない。
なんでかも分からないのにぼろぼろと零れる涙がうざったらしくて目を擦ると、赤くなるからとやんわりと止められた。
「お前な。息抜きの仕方分からんのやったら、せめて、頼ってくれや・・・」
抱き抱えるように背中を撫でられては止まるものも止まらない。久しぶりに感じた人の温もりは優しくて心地よかった。
「・・・っ、仕事、うまくいかんくて・・・いやなことも、いっぱいあって」
「おん」
「ろぼろのくれたハンドクリームも、床にっぶちまけてまう、し」
「おん」
ロボロは顔色ひとつ変えず俺の話に相槌を打ってくれて、まるでなんでも受け止めてくれるような気がしてしまって。
今日あった嫌なこと、最近の仕事のこと、なんだか、疲れてしまったこと。
全てを話した。
「・・・・・ゾムは、人より生きにくいだけやろなあ。ちっさい頃から繊細で、努力家で、それは、俺がよお知っとるから」
優しくて、重い、言葉。
まるでふわふわと天に昇って行ってしまうような、現実逃避したくなるような俺の気持ちを地に留めてくれるのは、いつもロボロの言葉だ。
「ちょっと、楽になった。・・・話聞いてくれて、ありがとうな」
「ん。そりゃ良かったわ」
少し照れくさくなって話を逸らそうとした、その時。
───────がらっ
「「あ」」
「・・・・・・ん?」
勢いよく戸を開けたのは、トントンに大先生、シッマ。
こちらをじろじろと眺められて、それから納得するように頷いた。
「あぁ、お楽しみ中失礼しましたー」
「・・・・・・・・は?」
いやちゃうちゃうちゃう!!
全力で顔を横に振る。ロボロに関しては首から吹っ飛ぶくらいのスピードだ。
「いやーロボロさん、仮にも病人ですよ?ほらーゾムさん泣いちゃってるじゃなーい」
「は!?ちゃうわ!!俺が慰めてやってただけやし!」
「童貞には毒やで〜w」
ネタとは分かっていてもこうも揶揄われるとムカつくな。トントンまでわろとるし。
顔を真っ赤にして怒るロボロを宥めながら、大先生はこちらに視線を合わせてきた。
「冗談ってやつですよぉ。」
で、なんでゾムさんは今回倒れたんですかね。
あ、目が怒っとる。口だけは弧を描いてるけど、目の奥が笑ってないわ。
心なしか後ろの二人も怒ってるような希ガス・・・・・・
「こいつまあた無理しよった!仕事だかなんだか知らんけど、疲れた時は頼りい、ってお前らも言ったってや」
「はー・・・・・ゾムも凝りひんな。いや、もはや悪癖になってるんか・・・」
「あ、じゃあスケジュール管理俺らが徹底するか」
「無茶したゾムが悪いんやで〜?後から悲鳴あげるなよ〜」
にたにた、にたにた。
これだからこいつらに構われたくなかったんだよ!!
力の限り睨んだが余計に煽る材料となっただけなようで、早速グルチャまで作っている。
ずいぶん賑やかになった病室に春の暖かい風が舞い込んできた。
何故だか気分も晴れやかになって、ふわふわと夢見心地になる。
意識が落ちていく最中、ロボロが何かを呟いたような気がした。
「とことん構ったるからな。覚悟しときい?」
◇
オチがない。文才能力もない。
pixivの書き手さん語彙力あり過ぎて泣きそう
これで完結ですね(多分)
ここまで付き合って下さった皆様には感謝の念しかありません。
ランキングにも載せていただいて、フォロワーもこの2週間で約40人増えました。びっくりです。
またなんか書くと思いますが暖かい目で見てやってください。
コメント
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め っ ちゃ 神 です っ っ っ ! ! ! ハ ッ ピ ー エ ン ド なの も 良い ! 私 ハ ッ ピ ー エ ン ド 書く の 苦手 なので,本当 に 尊敬 です ! !