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高校の屋上で僕は女神を見つけた。あるいは、同級生の女子だったかもしれない。
毛が細く、艶やかな黒髪の長髪に、
透き通るほど白い肌は天使の翼のように見えた。ほど良く肉付いた上腕二頭筋辺りに気がつくとそういえば、今は夏の時期だったと思い出した。7月の上旬だっただろうか覚えていない。
僕がそんな彼女を見ていると、彼女の白い頰にツゥーとダイヤモンドのように輝く涙が流れていた。どうしたものかと考えながらも、その姿がとても美しく思えたので、どうしても声をかけられなかった。
数分その様子を眺めていると、赤くなった目を乱暴に擦り、擦り終わった左目がこちらを凝視していた。
こちらに気づくと、彼女は目を丸くした後に微笑み、ゆっくりと手招きした。
僕は使徒のようにその指示に従った。
「あなたの名前は?」
「向井純連です。あなたは?」
「板野…琴だよ。それにしてもあなたの名前女の子みたいね、純連(スミレ)って」
嫌味など一切ない純粋な質問だった。
「単純な理由ですよ。母の好きな色が紫で鼻の名前にしたいなと思ったからと言っていました。そこにありきたりな漢字を当てはめただけです」
「そうなんだ。ちょっと君面白いね」
くすりと右頬にえくぼをつくり、彼女は笑った。夏なのに、雪に包まれてあるような暖かさが彼女の笑顔にはあった。
話をしていくと、彼女が一つ上の学年の3年生であることがわかった。この高校は冬服の時は女子はリボン、男子はネクタイの色で学年を区別する。逆に夏服の時は男女ともに胸元にバッチをつけるのだ。学年ごとに一年生は赤、二年生は青、三年生は緑といった順だ。今日、先輩はバッチを忘れたらしい。
「何故、先輩はこんなところに?」
「んー、初対面で話すことではないかな」
先輩は苦笑する。泣いていたことが脳裏によぎり、慌てて 「そうですよね」と僕は言った。
数秒間の沈黙が流れ、息が詰まっていると
タイミングが良いのか悪いのかチャイムが鳴った。
「あ、チャイムだ。三年生教室2階だから急がなくちゃ」
「わかりました」
先輩も気まずかったのだろう、そそくさと逃げるようにして屋上の立ち入り禁止のテープを乗り換えて階段を降りて行った。
屋上の入り口の床に緑色のバッチが日差しに照らされ、輝いているのが見えた。
「これって」
バッチには色の他にも名前が書いてある。
名前の欄には「板野玲」と書かれていた。