コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
家の扉を開けると、湿気た匂いとレモンの芳香剤の香りが漂ってきた。初夏を感じた。
僕の家には誰もいない。親も兄弟も。いるのは少し大きめな水槽で飼っている亀だけだ。
家も1人では大きすぎるほどだった。僕の部屋は二階だ。
風呂に入った後、僕は柔軟剤の匂いがする半袖と短パンを着て床に就いた。寝る前に頭によぎるのは明日への不安などではなく、昼間の彼女の顔と名前だった。あの落ちていたバッチの名前の人物は姉妹なのか兄弟なのか、それとも別人なのか。今考えられるのはそれくらいだ。
少女は考えた。何故こんなことになったのだろう
少女は考えた。何故自分なのだろう。
何故、何故、なぜ、何で、なんで、なんで 、
なんで、なんで、なんで、なんで…
神さま、何でもします。何でもしますから。
自分の体でも何でも捧げます。お金もいくらでも払います。毎日神さまを跪拝します。
なので、なので自分をこの表面上の倫理と道徳しかない下劣で不浄な世界から
少女は朝カーテンを開け、窓から空に向かって祈った。昼は屋上で祈った。夜は自室で祈った。無我夢中で。
僕は俗に言うインキャだ。教室の端で本を読むタイプのだ。今は太宰治の「人間失格」を読んでいる。
主人公と自分自身を重ねて読むのが好きだ。
しかし、自分自身と重ねて過ぎるあまり、自分もこの主人公の様にいつか破滅するのではないかと考えてしまう。
そうなる根拠も何もない想像をする自分も宛ら、最低な事態を想像して死んだ方がマシだと考えてしまう自分も嫌になる。
でも、毎回どちらがマシかと問われれば死ぬ方を選ぶ。
誰からも必要とされない。誰にも認知されない今や未来よりも僕はクラスメイトに僕が死んだという記憶が残されててくれていた方が
何よりも僕が生きていたという証になると思うからだ。勿論、死ぬのは怖い。今僕は人間らしく生きれているのだろうか…
キーンコーンカーンコーン
昼休憩のチャイムがなった。あの人に会いに行くんだから嫌な想像はこの辺にしておこう。屋上にいるかな。
指紋がつかないようにジップロックを片手に持ち、足早に屋上へ向かった。