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まちこりーたさんが卒業したから、もう書かないほうがいいと思う
色々なのが見たいから続けて欲しい
可哀想だから甘々が見たい
「…はぁ、」
『何よさっきからぁ』
『どしたん話聞こか?』
『キャメさんそれはキモいってww』
『まちこぉ大丈夫?』
流石に回数に違和感があったのか、通話中の女研メンバーからツッコまれる。
ちなみに今の時間は、配信終了後の反省会のようなものだ。そんな中、私を悩ませている原因も口を開く。
『どうしたんだねまちこちゃん。この白井に聞かせてごらんなさい』
お前のせいだよ!!
そう言えたらどれ程楽だったか。
「…いやぁ今日の撮影も相変わらずダルかったなって笑」
『そ〜だよ!ニキニキ達、みんなでまちこをいじめるんだからぁ 』
『はぁ!?イジメじゃないイジメじゃない!!』
『愛ゆえ、だよまちこさん』
『え、俺そんないじってなくない?てかむしろ庇ってた方だと思うけど』
そーいえばさぁ、ニキニキがそれを聞いて話始める。
『ボビー今日、てか最近飛ばし過ぎじゃない?www』
『オレも思った!!!なんか途中で「俺のまちこ」とか言ってなかった!?wwww』
『言ってた言ってた!!』
相手を隙を見つければすぐさま攻撃するのが女研の暗黙の掟。そして矛先はくるくると相手を変える。
「もぉダルいて笑」
そう言って取り敢えず周りに合わせて笑うが、モヤモヤした気持ちが晴れることはなかった。
きっかけは、そう。
私としろせんせーが付き合い始めたことだ。しかし一応YouTubeやtiktokeをやっている立場として、気軽に恋愛報告を出来ないのが現実。
このことはまだメンバーにさえ言っていない。
そこで何故私が悩んでいるのかと言うと…
プライベートでのせんせーが、ほんとに私の恋人なのかというほど冷たいということについてだ。
普段からそうならまだいい。
あまり愛情表現をしないのかな、ぐらいで終わるだろう。
しかし!
配信や動画では「愛してる」「夫婦」等の発言をしてるくせに、 実際はキスどころか電話もしないしデートするにしても月に一回。
「…色気、ないのかな」
確かに私はじゅうはっちに比べて女子力も低いし可愛さもない。それは自覚してる。
ただ、ここまで手を出されないと大切にしたい、と家言う話じゃないと思う。
ぱた、と手の甲に水滴が落ちる。
やがてそれが自身の涙ということに気がついた。
「…っ、うぅ」
一度自覚してしまえば自分の感情に蓋をすることは出来なくて。
『はっち、たすけて』
気がつけば、そんなメッセージを送信していた。
『もしも〜し、ちゃんと聴こえる?』
「うん大丈夫!…ありがとね」
あの後すぐにはっちーから連絡があり、なんとか休みの日に通話することが決定した。
『それでどうしたの?』
柔らかく気遣うような声に、私は一度蓋をした感情が溢れてくるのが分かった。
「あの、ね…」
泣いて声が聞きづらかったり、支離滅裂だったりする私の話をじゅうはっちーはうんうんと聞いてくれた。
『そっかぁまちこ、せんせーと付き合ってたんだね』
全然気づかなかったと笑う彼女に、話してよかったと感じる。
『それでまちこはどうしたいの?せんせーと恋人らしいことがしたい、って思ってる? 』
オブラートが一切無い言葉に戸惑いながらも、私は頷く。
「…うん。せんせぇともっと話したい」
『よし!じゃあ次会うときまでに色々準備しよっ!』
そこから服や仕草、メイクなどをリモートでじゅうはっちーに教えてもらった。
その間、いつも申し訳程度にしていたせんせーへの連絡をじゅうはっちーのアドバイスでやめり、飲み会などを控えるようになった。
少し寂しかったが、配信内ではしろせんせーといつものように掛け合いが出来ていたため、それ程ストレスにはならなかった。
『まちこちゃんさぁ、次いつ会える?』
そう電話が来たのは、じゅうはっちーに泣きついてから一ヶ月が経とうとしている頃だった。
いつものように配信を終えるとしろせんせーからそう、連絡が入っていた。
「じゅうはっち!!せんせーから連絡来た!!!」
『よかったじゃんまちこ〜』
よし、じゃあ今週の土曜だから…
『あと2日後じゃん!』
「そーなんだよぉ!じゅうはっちー助けて!?!ほんとに」
私が軽くパニックになっていると、くすくすと言う笑い声が聴こえた。
『最近頑張ってるから大丈夫!もしどうしても困ったら、せんせーにどうなりたいか直接言ってみるのもありだと思うよ!』
有り難い励ましの言葉に押されて、私はじゅうはっちーに感謝をする。
「ほんっとにありがとね!今度お礼させて」
『あ!じゃあ2人で旅行ってどう?』
「行きたい!!!」
その日は夜遅くまで、女子トークに花を咲かせた。
「…やばいやばいやばい」
私は今、待ち合わせ場所でしろせんせーを待っている。
じゅうはっちーのアドバイス通り、いつもは着ない白いワンピースを着ているが…
「似合って、なくね?」
誰に聞かせるわけでもなく呟いた。
「まちこぉ」
声の主は言わずもがなしろせんせーだ。
「お待たせ」
そう言って微笑むせんせーが久しぶりで、思わず顔が綻ぶ。
「じゃ、行こ」
そう言って、私の手をするりと取った。
手を取った…??
「ん?何よ」
「いや…」
記憶にある限り、せんせーが外で手を繋ぐことなんてなかったはずだ。
ましてや恋人繋ぎなんて。
本当にじゅうはっちー、いや18号様には頭が上がらない。
「あ、雨」
ショッピングも満喫して 、カフェでゆっくりしているとポツポツと窓に水滴がついていることに気がつく。
「あーそういや、夕方から雨とか言ってたな」
食べ終わった食器を端に寄せて、せんせーがそう言った。
「じゃあ、そろそろ出る?」
「まちこちゃんこの後家来る?」
その言葉に、頷く。
ずっと、2人で話す時間が欲しかった。
「お邪魔しまーす!」
「はいよー 」
久しぶりすぎてちょっと緊張するな。
「まちこ、風呂入っちゃいな?濡れたでしょ」
結局ふたりとも傘を持ってなくて、笑いながら走って帰ったんだよね。
「あ、ほんと?じゃあお先にー」
ここで気を使う仲でもないので、素直に浴室へと向かう。
「ドライヤー借りる〜」
いつものようにタンスから短パンとパーカーを勝手に出して着る。
ドライヤーを持ってリビングへ行くと、スマホをソファで見ているせんせーがいた。
「おーじゃあ入ってくるわ」
そう言って私の横を通り過ぎる。
じゅうはっちーがくれた、甘い匂いがするヘアオイルをつける。いつもは可愛過ぎて使えないそれも、今日は勇気を出してつけようと思う。
髪を乾かし終わった頃、せんせーがお風呂から出てきた。
「映画見ね?」
そう言ってDVDをセットする。
「えー何見んのぉ」
「秘密〜」
「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!!怖くないって言ったッッ!!!」
「“俺は”怖くないで?」
「詐欺師だっ!!死ねっ!!」
私が喚くと、ケタケタと嬉しそうに笑うせんせーに本気で殺意が湧く。
「さいってぇ!!…っもう無理ぃ、ひ、」
「え、まちこ?まちこちゃん!?ごめんごめんもう辞めるから!」
そう言って慌ててテレビを消す。
「ごめんな、ちょっとからかい過ぎたわ」
すまなそうに謝るせんせーは、やっぱり抱きしめたりしてくれなくて。
「…つ、ひく、」
泣き顔を見られたくなくて、せんせーの寝室に駆け込む。
せんせーは追い掛けて来なかった。
「…何やってんだろ、私」
暫く経って冷静になった頃、ようやく自分のバカさ加減に気がついた。
せんせーはいつも通りだった。私が勝手に不安になって、キレて、せんせーの部屋に閉じ籠もってしまっただけだ。
そりゃ彼女を不安にさせるような彼氏が悪いけど、何も言わずに急に泣き出したのだから、向こうとしてはさぞ慌てただろう。
部屋の時計を見れば、さっきの出来事から丁度1時間が経とうとしていた。
ガチャ
急に扉が開いて、私は思わず固まる。
「…まちこちゃん、寝た?」
申し訳ないが、ここは一旦寝たフリをさせてもらおう。
目を閉じて黙っていれば、近くまで来たせんせーの気配を感じる。
その時。
ちゅ、という音とともに瞼に柔らかい温度を感じた。
それはすぐに離れるとおでこ、こめかみ、頬、首、鎖骨へと優しくキスの雨を降らせる。
「は、好き。好きだよまちこ」
耳元で囁く声は普段から想像出来ない程甘くて。
「ごめん、泣かせて。でも、好き、ほんまに」
そーいうことを。
「…んで言ってくんないの」
私が呟くと、せんせーはびくりと肩を震わす。
「っ、はぁ!?起きてんなら先言えや!」
「いつも言わないのはせんせーでしょ?」
私が起き上がってベッドの縁に座れば、その下にぺたりとせんせーが座り込む。
「…ごめん、ちゃんと聞かせて欲しい」
その言葉に私は口を開いた。
「いつも配信では愛してる、とか言ってくれるのに、お家デートの時とか何も言ってくんないし」
「キスもしたいし抱きしめて欲しいのに、映画とかゲームばっかだし、」
「もっとせんせぇと話したいのに、私ばっかり好きで」
言っている途中で恥ずかしくなりせんせーを見れば、あろうことか口元を抑えて笑っている。
おいニヤニヤしてんじゃねぇよ、全然隠れてねーわ。
「なになになにまちこちゃ〜ん、そんなに俺のこと好きだったの?」
そんなの、
「好きに、決まってるでしょばか」
「は?無理無理なにそれ可愛いんですけど」
やがて私の方に向き直ると、今度はせんせーが話しだす。
「まず、不安にさせてごめん」
「俺はほんとにまちこが好き。それはほんと。でも、」
「配信で俺らしろまちとか言われててさ、リスナーにもメンバーにも」
「そうなると俺もまちこに対して絡む回数は増えるわけやん」
「でも、好きだから怖くなった。配信みたいに冷たくされたら、キモいって一蹴されたらって」
「俺が臆病なせいでまちこを泣かせた」
これはどう考えても、私が悪いじゃん。
確かに付き合ってからは照れ隠しでいつもより言い過ぎてしまうことがあった。
それを自分の立場に置き換えたら…?
「…っごめん!私、自分勝手で全然せんせーの気持ち、考えたことなかった!」
そう言って初めて、私の方から抱きしめる。
久しぶりのせんせーの体温や匂いが柔らかく感じられて、安心感と幸福感に包まれる。
おずおずと回されたせんせーの手がやがてぎゅ、ときつく力が込められた 。
「…髪、甘い匂いする」
する、と頭を寄せられそう囁かれる。
「あ、あぁこれじゅうはっちーに貰ったの。いい匂いでしょ〜」
「今度俺があげるから。それつけてくんない?」
それって、
「もしかしてじゅうはっちーに嫉妬してる? 」
仕返しとばかりに返すと、僅かな沈黙の後に「悪いかよ」とバツが悪そうな声を出す。
「んははは、可愛いとこあんじゃん」
そう言えば「うるさいよ」と拗ねたように言う。
「…ちょ、悪いんだけどもう少し離れてくれない?」
「えなんで?俺と抱き合いたいって言ってたじゃん」
いやそれは語弊があり過ぎるだろ。
そうじゃなくて、
「耳元で喋るの、やめてほしいんだけど…」
おっと?言ってから気づいた。自分から弱点さらしてどーすんねん。
「へぇ」
案の定先程から一転、心底楽しそうに口角を吊り上げるせんせーが見えた。
「ふーん。ほぉ、まちこさんは耳が弱い、と」
「いや、やっぱ嘘、 」
ふ、と息がかかり擽ったくて身を捩る。
「…好きだよまちこ、可愛い」
配信でも言わないような、恋人だけに見せるような顔。
「ちょ、やめ」
「今日の服、俺の色だったやんな?は、可愛いまじで、大好き」
耳に唇が当たる距離でそう囁くしろせんせーに、今度はこちらの心臓が保たない。
「ほんとは毎っ回思ってたんやけど、俺の服着るまちこ、まじ可愛いの」
「っん、それ、や」
「あーくそ、理性飛びそう」
ちゅ、ちゅ、と耳朶にキスをしながら合間に喋るせいで擽ったくて仕方がない。
せめてもの仕返しに、とこう言ってやった。
「…好き、大好き、愛してる」
「いや、くそガキのセリフやんけお前それ」
一度離れた後、ゆっくりと私の身体をシーツへと沈ませる。
「キスもしたいし抱きしめて欲しい、やっけ?それは気づかんくてすまんかったなほんまに」
仕返しはどうやら失敗したようだ。
「ちゃんと愛してるから、覚悟しいや」
どうやら思ってた以上に愛されてたようです。