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暗いけどハッピーエンド。
ヤンデレじゃないせんせーを書こうと思っただけなんです。
自分でも何を書いているのか途中で分からなくなりました。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは。
「…ごめん」
せんせーとは付き合えない。
「っ、どうしても?」
苦しそうな表情で縋るように私を見つめる。
「ごめん…ほんとに」
辛い。胸が痛い。
でも、私は彼と付き合えない。
なんて事があったのが嘘のように、今日せんせーと18は付き合ったと事後報告をしてきた。
あれからまだ1ヶ月も経ってないけど??嘘でしょ???
『まじ!?お前らがくっつくなんて思わなかったわ!』
ニキニキがはしゃげば、一気に弾けるような笑いといじりが起こる。
『やめときなって18、俺にしとけよッ☆』
『ちょーっと待ったァ!!』
『そうはさせねーよ!!』
『いや俺が彼氏やから』
負け組は引っ込んどけwww。
笑いながらそう言ったせんせーに、胸がずきりと…ううん。
こんな在り来りな言葉じゃ表せないくらいに痛む。
『…まちこ?どうかしたの?』
18の優しい声が鼓膜に柔らかく聴こえる。
嗚呼、なんて、
「お似合いだなぁ…」
『え、』
私がそう言えば驚いたような彼女。
「もぉ〜!恥ずかしがんなってぇ!私に言ってくれればいいのに」
水臭いな〜wwと茶化して言えば。
『…っ恥ずかしくってぇ』
顔を赤く染める18の姿が見えるようだ。
なんて可愛らしいんだろう。
それに比べて…
「……はぁ」
溜め息をつけばぽこ、と同時にスマホが震える。
[この後、ちょっと話せる?]
「…ニキニキ?」
『ん?なぁに〜』
間違えた。
せっかく個チャでくれたメッセージを皆の前で言うところだった。
「えーっと…あ、18のこと、狙っちゃ駄目だかんね!?」
『なーに言ってんスかまちこりさーん。奪うまでがお楽しみでしょうwww』
上手く誤魔化してくれたニキニキには感謝しかない。
この日はしろせんせーと18のお祝いを軽くして通話は終了した。
prrrrrrr prrr
「ニキニキ?」
『お疲れー…あのさ、』
大丈夫?
何が、と言葉を繋ぐ前に私の片目からポロ、と雫が流れ落ちた。
ぼたぼたと床を濡らす。
「、っ、」
『我慢すんなって。後で辛くなるよ』
「…なん、で今っ、そんな優しいこと、言うの…っ」
いつも人の不幸を笑いに、動画に昇華してきたくせに。
なんでこんな時、一番欲しい言葉を言ってくれるのが彼なんだろう。
『…ボビーのこと、好きだったんでしょ』
「なんで…分かったの、?」
酷い声だ。
いつもリスナーの皆に褒められているような透き通った声とは正反対。
涙と鼻詰まりでがさがさとした声を、ニキニキは笑わなかった。
『オレがどれだけみんなのこと見てると思ってんだよ』
自信満々に言う彼に、思わず笑ってしまう。
「自分のこと何だと思ってるのw」
『え、惚れた?』
「ごめん」
『即答かよwww』
『まぁ、辛かったら言って。いつでも話聞くから』
本当に今は駄目だ、私にそんなに優しくしないで欲しい。
お願いだから。
「じゃ〜ん!まちこにお土産っ!」
二泊三日のプチ旅行を女研のみんなですることになった日の夜。
18がそっと手のひらに乗せたのは、緑色の石がついたブレスレットだった。
「わぁ!可愛い、どうしたの?これ」
「あぁ、これね! 」
せんせーと買い物した時に見つけたんだぁ。
視界がぐらりと揺れた気がした。
「そ…っか、そっか!えぇ〜めちゃめちゃセンス良いじゃん!流石18!! 」
そう言ってがばりと彼女を正面から抱きしめる。
きっと、眉に力を込めているのは見えないだろう。
華奢な肩、ふわりと香る綺麗な髪、手触りの良い可愛いパジャマ。
何をとっても完璧だ。
「っああー!!!18とまちこりが抱き合ってる!!!」
「これ浮気じゃない?え、もうフラれるじゃんボビーwww」
「行けまちこさん!そのまま奪っちゃえ!」
「もぉ〜違うってぇ」
ぽこぽことせんせーを叩く18。
それを嬉しそうに受け止めるせんせー。
やめて、そんな顔しないで。
そう考えてハッとする。
私、今何を考えてた?
私が彼を振ったんじゃないか。
なんで私が被害者ぶっているんだ。
全部自業自得で、2人にはちゃんと幸せになって欲しくて、それのどこが嫌なんだ。
「…まちこり?」
ぐるぐると頭に巡っていた思考のせいで、そう小さく呼んだ声は聴こえなかった。
『ちょっとせんせぇ!私のチェストから勝手に持って行かないでって!』
『分かった分かった、後でちゃんと返しとくから』
『おい、痴話喧嘩してんじゃねーよ』
『そうだぞ18!罰としてオレの家に後で来なさい。』
『いやいや食い散らかす気満々ですやん』
今日は女研のみんなでマイクラをしている。
と言っても配信じゃなくて、普通にみんなでやってるだけなんだけどね。
『ーーだよ。ねぇ、まちこりもそう思うよね?』
「…あ、ごめん」
聞いてなかったww。
シン、とした沈黙が辺りに広かったのが自分でも分かった。
だってこのセリフ言うの、さっきから5回目だ。
『まちこ…大丈夫?』
調子悪そうだよ、と18が心配してくれてる。
「やだなぁも〜。歳かなぁww」
『まちこ、まじで 大丈夫か?』
しろせんせーの声がする。
あぁ、その声で私を呼ばないで欲しい。
ほんとに、
「大丈夫だって言ってんじゃん…っ!」
思ったよりも強い口調に自分でも驚く。
『っあ、…今日はここで終わるかぁ』
キャメさんがそう言ってくれたお陰で、気まずいけれどこの状況から抜け出すことが出来た。
一旦頭を冷やさなきゃ…。
prrrrrr prrrrrr
「っ、なんで出ないんだよまじでッ」
オレはイライラと椅子を蹴飛ばす。
「いや落ち着け、風呂かもしんねーじゃん」
自分に言い聞かせてはぁはぁと息を鎮める。
あの時から1ヶ月が経ったが、まちこりの音沙汰がない。
女研配信は来ているがどこか上の空で、最近は返事をしないことのほうが多い気がする。
「はー、会いに行くか…」
もそもそと上着を羽織りながら呟く。
[まちこりが心配なやつ集合。(18リモート参加可)]
それだけ送信すると、オレはまちこりの家に向かった。
「お邪魔しまー…鍵開いてんじゃん!」
りぃちょがドアノブを回して驚く。
いや開いてないって分かってるんだったら開けようとすんなよ。
とまぁツッコむ雰囲気でもないので口には出さない。
「暗くない?」
キャメさんがキョロキョロと見回しながらそう言った。
「それな。家いないんじゃね? 」
りぃちょが返すが、一通り部屋は見ておいたほうがいいだろう。
「…ボビー?」
先程から一言も話さないボビーの存在を思い出す。
彼の瞳は不安げにゆらゆらと揺れている。
「どうした、」
「っ、俺のせいだ…」
乾いてしまうほど暗い目を開いて震えた声で言うボビー。
「違う、私がっ、!」
「2人とも!その話は後でちゃんと聞くから」
今はまちこさんを探さないと。
なんとも頼もしいキャメロン君じゃないか。
分かってる、口には出さない。
一つ一つ部屋を見ていき、彼女の部屋と思わしき場所に辿り着いた。
今までは流石に女性の部屋に入るのは、と遠慮していたそこ。
でも今はそんなこと言っている場合じゃない。
「っ…まちこりッ!!」
あれ、なんでだろ。
「…にきにきの声がする、」
瞼が重くて開かない。
いつからご飯、食べてないんだっけ。
「まちこ!聴こえる…!?」
18の声までする。
ついに幻聴も聴こえてきたのかな、
「まちこ…っ!!」
「、せんせ」
バチリ、と部屋に明かりが灯った。
久しぶりの明かりは眩しくて目が痛いほどだ。
「え…みんな、?」
幻覚じゃない。幻聴じゃない。
今、何故か私の部屋にみんながいる。(18はスマホから声が聴こえるが)
「よか、った…!」
急に目の前が暗くなり、温かな体温に全身が包まれる。
「んっ、なに」
鼻腔に広がる清潔な香りが、せんせーの柔軟剤だと気づいて慌てて押し返す。
「なにしてんの、?18が」
『ごめん、まちこ』
18の静かな声が部屋に響く。
ごめん?…なにを?
『ずっと嘘、ついてたの』
まちこにも、みんなにも。
「どーいうこと?」
りぃちょも静かに聞き返した。
『私とせんせーが付き合ってるなんて嘘』
しろせんせーが私を抱きしめたまま告げた。
「18のせいじゃない。俺が」
『私がそう言ったの…!まちこに好きになってもらえるかもって!』
彼女の声は震えていた。
『ごめんっ、傷つけて…みんなにも嘘ついて…っ!』
…っ、18は悪くない!悪いのは、
「私…」
「なんで、まちこさんは悪くないでしょ…?」
そう言ってくれるキャメさんは優しい。
「私が、私が期待をもたせちゃったから…せんせーの言葉を、気持ちをちゃんと捨てきれなかったから、」
「…それ、どういう意味?」
ニキニキが冷えた声で言った。
「まちこりはボビーが好きなんじゃないの?」
そんなの、
「好きだよ。18に嫉妬しちゃうくらい、好き。でも私は、 私達は配信者だから」
「でもまちこりだって18とせんせーのこと、祝ってたじゃん!」
配信者同士が付き合って何がダメなの!?
「っ、好きだけじゃダメなの!!」
こちらに手を伸ばしていたりぃちょがビクリと怯える。
いつの間にかせんせーは離れていた。
「好きだけで幸せになれるほど、簡単な話じゃないでしょ!?だって、私達にはリスナーがいてフォロワーがいる!勝手な個人の判断で決められることじゃないんだよ…!!」
「そんな簡単に諦められるの?」
キャメさんの言葉はけして鋭くないのに、私の柔らかい部分に深く刺さった。
「そんなにすぐ無理だって思うくらい、せんせーのことは好きじゃないの?」
「…だから、っ!!?」
ぐ、と顔を両手で包まれ無理矢理しろせんせーと目線が合わせられる。
それもめちゃくちゃ近い距離で。
「無理に決めようとしないで」
そのまま優しく言い聞かせるように言った。
「焦らせてごめん、ゆっくりでいいから」
する、と髪が梳かれる。
「付き合わなくてもいいから」
ぎゅ、と正面から抱きしめられる。
「でもこれだけは伝えさせて」
愛してる。
「まぁた来たのw?」
呆れたように言うまちこ。
彼女は今、入院中だ。
理由は明白だが、暫くの間過度なストレスで食事をしなかったことや、生活に支障が出るレベルでの運動、日光不足などで少しの間、病院にいることになったらしい。
「また来てくれたの、だろ」
そう言って彼女の傍の椅子に腰掛ける。
結局俺は今のところ彼氏ではない。
まぁ、必ず付き合うけどな。
「なーに?」
不思議そうに笑うまちこの頬をなぞれば、くすぐったそうに微笑んだ。
彼女の左手をそっと持ち上げ、ちゅと薬指へキスを落とす。
「っな、」
顔を真赤にしたまちこがこちらを睨む。
それすら可愛いと思う俺は本当に馬鹿だ。
「好き 」
彼女の目を見て、言い聞かせるように伝える。
「全部好きだから」
俺の思いが届くように。
「まちこの…」
「っ、もぉ分かったって!」
突然シャツの襟をぐんと引っ張られる。
まだ続けようとする俺の口が、彼女の小さな唇で塞がれた。
かつん、と歯と歯がぶつかるような…というかぶつかった鈍い痛みが走る。
「っ、痛ぁい!」
自分からしておいて痛みで悶えているお馬鹿な彼女。
俺はまちこの顎を掬ってこちらへ向かせた。
「へったくそ」
文句を言おうとしている彼女の口を、今度は俺が塞いだ。
終わりー
誰か不憫シリーズ書いてみたい人いらっしゃいませんか?
自家発電にも限界があります。
#不憫シリーズ とかつけて、誰か書きませんk((