湊の背中が遠ざかる。
悠斗の手が、私の腕を軽く掴んでいる。
「せりな。」
悠斗の優しい声が、私を引き止める。
(どうしよう……)
湊を追いかけるべきなのか、それとも悠斗の言葉をちゃんと聞くべきなのか。
どっちを選ぶべきなのか、自分でもわからない。
「……ごめん、ちょっと待ってて。」
私はそっと悠斗の手を外し、湊の方へ走り出した。
「おい、湊!」
湊は立ち止まらない。
「待ってってば!」
私がそう言うと、湊は足を止め、ゆっくりと振り返った。
「……何。」
その表情は、どこか冷たかった。
「なんでそんなに怒ってるの?」
「別に怒ってねぇし。」
「嘘。絶対怒ってる。」
「……。」
湊は黙ったまま、私を見つめる。
「昨日もそうだったけど、湊、なんか変だよ。」
「変なのはお前だろ。」
「え?」
「……俺のこと、気にしすぎ。」
湊の低い声が、胸に突き刺さる。
「だって……最近の湊、何考えてるかわかんないんだもん。」
「それで?」
「……気になるよ。」
私がそう言うと、湊は少しだけ目を見開いた。
でも、すぐにフッと笑って、ポケットに手を突っ込む。
「……そっか。じゃあ、気にすんな。」
「え?」
「お前は、悠斗と仲良くしてりゃいいじゃん。」
(……っ!)
湊の言葉が、なぜかすごく冷たく感じた。
(そんな言い方しなくても……)
「じゃあな。」
湊はそれだけ言うと、また歩き出してしまう。
私は、その背中を見つめることしかできなかった。
——結局、私は、どっちの気持ちに向き合えばいいんだろう。
**—次回!**
「悠斗の言葉が、せりなの心を揺さぶる!? そして、湊は……?」
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