そして、私の弁論が始まった。
「頑張って下さい…!」
宇賀神先生が言う。
私は頷いて前に出る。
「今回の事件…
本当に南野さんが殺したのでしょうか…?
確かに証拠は上がっているようにも思えますが、彼女には幸田さんを殺す強い動機が見当たりません。
ここで、証人として、飯森栞さんに出廷願います。」
私は震える声を抑えながらそう言った。
「では、証人の飯森栞さんは前に出て下さい。」
裁判長が言った。
「飯森さん、あなたはあの女子会のリーダー的存在だった…
そうですね?」
「えぇ、リーダーというか、取りまとめ役はいつもやっていました。」
「被告の南野さんと幸田さんの仲はどうでしたか?」
「非常に良かったと思いますよ。
2人で映画や買い物にも行っているようでしたし。」
「つまり、被告・南野さんに幸田さんを殺す動機は全く無い、と?」
「無いと思います…」
「では、反対に幸田さんと仲が悪かったのは、誰でしょうか?」
「それは…
端間さんだと思います…
幸田さんが、端間さんの元カレと最近付き合い始めて…
それで、元カレに未練のある端間さんは幸田さんの悪口を言い回っていましたから…」
「以上で質問を終わります。」
私は言った。
まずまずだろうか?
しかし…
検察側の反対尋問で。
「幸田さんと被告の南野さんが仲が良かった、と言われましたが、見えない所で仲違いしていた可能性はゼロですか?」
「いえ、ゼロとは…言えませんけど…」
「以上です。」
検察官はしたり顔で私の方を見るとそう言った。
つまり、自分達の方には証拠がある。
これを破れるか?と言いたいのだろう。
私は項垂れた。
先生が私の頭をポンポンと撫でる。
「お疲れ様でした。
頑張りましたね。」
「嘘です…
成果を出せませんでした…
弁護士失格です…」
「そう自分を卑下しないでください。
そう言う事もありますよ。」
先生は言う。
♦︎♦︎♦︎
そして、私たちは気分を変えて、|島田典子《しまだのりこ》さんという人に聞き込みに向かった。
女子会メンバーの1人で、飯森さんからみんなの事に詳しいから、と紹介されたのだ。
「島田さん、何でもいいので、女子会の事を教えていただけませんか?」
私は言う。
「そうですね。
幸田さんの納豆パスタは絶品だったので、よく覚えてます。
反対に、|端間緑《はたまみどり》さんは、りんごを丸ごと一個持ってきてみんなに配ったので、印象深いですね。
みんなで、皮を剥いて丸かじりしたんです。
それはそれで楽しかったですけど。」
「りんご丸かじり、ですか?
なぜ、剥いて来なかったのでしょうか?」
私は疑問を口にする。
「急いでて時間がなかったと言っていましたよ?」
島田さんは言う。
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