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2.冷めない温度に包まれて
「じゃあ中野さんとデートやったんすか!?」
「デート…っていうかただ夜ごはん食べに行きましょって私が誘っただけで…、笑」
森下さんに連れられて入った居酒屋はどこよりもお洒落な場所だった。
お酒もどれも高そうなもので店内も花のような柔らかい香りに包まれていた。
でもメニューはお酒に加えてどれも定番のおつまみばかり。
このどこか落ち着くお店でお酒を挟んで森下さんと話をしている。
「もしかして…まいなちゃんの片思い…?」
「んー、そうやね。ぜーーったい実らないです」
「そう中野さんに言われたんすか?」
森下くんは真っ赤になった顔でいつにも増してゆっくりとそう尋ねてきた。
「いや、そうじゃないけど…なんかもう分かるって言うか…私だけ一喜一憂してるみたいだし。」
すると突然森下さんが机に置いてあった私の手をまた握りしめた。
「え、ちょ、森下さん?」
「分からないじゃないですか。俺、まいなちゃんのことなんにも知らないけど、いい子なんだなっていっつも思ってた。」
拓夢さんから私の同級生が居る、と聞いた名前の中に確かに森下さんが居た。
この人は同級生。私と同じ年。
でも、こんなにも大きくて、暖かくて、優しくて…私には無いものを沢山持ってる。
「あ、あの、森下選手ですよね…!」
「え、あー。」
「サインお願いしてもいいですか!」
少し困った顔をしながらも色紙にさらっとサインを書く森下さん。
サインをお願いした女性はその間私を少しだけ睨むと微笑して去っていった。
私は釣り合わない。森下さんにも、拓夢さんにも。
ダメだ。どんどんネガティブになっていく。
もっと、もっと笑わないと……。
「…まいなちゃん?え、寝てるの、?」
「……んー。」
心地いい感覚に包まれて私は何も考えずに深い眠りに落ちていった。
その後どうやって帰ったのかなんて覚えてない。